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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
帝国防衛編 <Last Battle>
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6.反撃の狼煙を上げろ

「みんな、集まったね。こんな状況なのにすまない」


 痛々しい包帯を巻いたデューンに向かって、オクタス、ウィルが座っている。デューンも回復魔法の重ねがけによって、ベッドから出ることができたようだ。

 アルフレッド、リズに加え、サイラス、ユーベルもウィルの配下と言うことで部屋に通されている。


「兄上、状況は?」


 オクタスが問いかける。


「やはり今帝都に襲いかかってきた魔物の群れは、全体で見ると斥候のようなものと考えて良さそうだ。質・量の面で本隊とも言える大群が移動していることがわかっている」


 誰ともなく、ごくりと唾を飲む音が聞こえる。帝都の防衛を突破するような魔物の群れが、単なる斥候とは。”本隊”とやらはどれほどの規模なのだろう。


「得られた情報をもとに分析すると、魔物の群れは大きく3つの集団に分かれているようだ。そして、そのどれもがこの帝都を目指していると思われる」


 デューンの分析はこうだ。


 魔界の扉から湧き出した魔物は、大別すると南西、中央、北方へと進んでいるのだと言う。そして、どうもそれぞれの大群が別々のルートを通り、帝都を目指しているのでは無いかというのだ。


 遠い昔、扉を封印された恨みを忘れていないのか、あるいは再び封印されることを恐れているのか。初代皇帝の血筋、皇族へ復習すべく目指しているのでは無いかと思われた。


「幸い、まだ魔物が帝都まで到達するのには時間がある。何より、まず諸悪の根源である魔界の扉を封じることが肝要だ」


「おうおう、俺様に任せておけよ!」


 急にウィルの胸元からデューンに話しかける声が聞こえる。どうも、ウィルが首から下げている箱の中の生物からのようだ。

 妖精をずっと持ち歩くわけにもいかないと考えたウィルは、妖精を封印している透明な箱に紐をかけ、首から下げることにしたのだ。


「あ、兄上。この妖精は……」


「そんなことどうでもいいじゃねーか。俺様……と、こいつに魔界の扉を封じる役をやらせろ!上手いことやってやるぜ?」


 急に会話に入ってきて、とんでもなく偉そうな態度だ。だが、この妖精?とやらの意見とは関係なく、デューンは魔界の扉の対処をウィルに任せようと考えていた。


「そうだね。魔界の扉はウィルに頼む。正直、僕の氷結魔法では効果がないことはわかったし、オクタスの強化魔法は尚更だろう。

 フェブリアや陛下の魔法も望み薄だ。可能性があるとすれば、ウィルくらいしかいないんだ」


「しかし、どうやって?」


 オクタスが疑問を投げかける。


「扉の周囲を障壁で囲んでしまえばどうだろう?すくなくとも、当座は魔物が出てくるのを防げると思うんだが。ウィルはどう思う?」


「それは……そうかもしれません」


 デューンの答えにオクタスは納得したようだった。


「なるほど。では俺たちはウィルの援護か?」


「いや、僕とオクタスは別にやることがある。大陸を今まさに蹂躙しようとしている、魔物どもの相手だ」


 デューンはオクタスに指示をだす。


「おそらく最初に帝都に到達する、南西ルートの魔物は僕が対処しよう。次に到達する中央ルートの魔物はオクタスが受け持ってくれ」


「デューン殿下。最後の北方から来る魔物は誰が対処するのですかな?」


 アルフレッドの質問に、デューンの顔が曇る。


「正直、手が足りないね。皇帝陛下は帝都を守るので手一杯だろうし。運がよければ、僕かオクタスが自分の担当する軍勢を蹴散らして、北方へ向かえるかもしれない」


「では、間に合わなかったら?」


 リズが不安そうに尋ねる。



「間に合うように、僕とオクタスが最善をつくすしか無いね」


「……」


 デューンの言い方は、もう望みが薄いように聞こえる。絶望感がただよう中、ウィルがぽつりと言った。


「兄上、少し僕に考えがあります」




****




 デューンとオクタスを除くウィル一行は、五人だけで別室に移動していた。北方から迫り来る魔物の軍勢の対処に、「僕に考えがあります」と言ったウィルは、五人で相談させて欲しいことがあると、この部屋にやってきた。


「ウィル、”考え”というのを聞かせてくれる?ルクスを北方に向かわせるのかしら?」


 リズの問いかけに、ウィルは顔を横に振る。


「そうじゃない。直接魔界の扉に向かうには、ルクスに乗っていく必要があるからね。だから……」


 ウィルは、言いづらそうに、唇を結んでいる。


「ユーベル」


 少しの逡巡のあと、ウィルはユーベルを見据えて言った。


「君の力を貸して欲しい。みんなを守るために、君の……。異界の力を」


「……」


 ユーベルは黙っている。ユーベルは異界の存在だ。聖教都市での一件で見せたあの力であれば、魔物の軍勢だろうとなんだろうと、全て撃退できるだろう。

 ウィルは深く頭を下げた。


「君を――君の力を利用することになってしまってすまない。

 こんなことをお願いしてしまったら、あの主教たちと何も変わらないことは理解している。でも、今は君に頼るしか……」


「殿下、お顔をあげてください。殿下のお願いであれば喜んで北方の討伐に向かいます」


 ユーベルは優しく答える。


「殿下は主教たちとは違います。殿下が今までずっと、私のことをただの神官ユーベルとして一緒に旅してくださったことを知っています。だから、私が殿下にできることなら全てして差し上げます」


 ユーベルのフードに隠れていない口元は、微笑んでいるように見えた。


「今初めて、自分が自分でよかったと思っています。私、嬉しいんです。殿下に頼っていただけるのが。誇らしいんです。殿下のお役に立てることが」


「ユーベル。ありがとう……」


「じゃ、俺もユーベルさんと一緒に行くっスよ。ユーベルさんには護衛が必要っスからね!」


 サイラスがおちゃらける。


「サイラス、頼むよ。流石にユーベル一人で向かったら、のちのち噂になるだろうからね」


「よろしくお願いしますね、サイラス様」


「任せてくださいっス!!」


 ウィルは北方の対処を任せてくれとデューンに伝え、こうしてサイラスとユーベルは早速出発した。残されたウィル、リズ、アルフレッドの三人は、戻ってきたルクスの背にのって大陸南部、魔界の扉へと進路を定めた。






 帝都上空。


 ルクスは家一軒ほどもある大きさの木箱をぶら下げて飛んでいる。その木箱には小さな窓があり、扉もある。もはや家と言ってもいいかもしれない。そして中には、人間――ウィル、アルフレッド、リズが入っていた。


「じゃぁ、そろそろ始めるか、小僧」


 口火を切ったのは透明な箱――初代皇帝の封印の魔法に閉じ込められた妖精だ。今はひもで固定され、ウィルが首から下げている。


「……ウィル。デューン殿下がかなわなかった相手よ。信用できるのかしら?……それ」


「きっ貴様!妖精と呼べ!」


 妖精はプライドが高いらしく、誰に対しても尊大な態度をとっている。


「安心せい、リズ。こやつは正真正銘、本物の初代皇帝の使い魔じゃ!」


「ヴァルキリーの小手風情が、偉そうな口をたたくんじゃねぇ!」


「……こやつは本当に全方位に喧嘩をふっかけるのぉ」


 ヴァルキリーがはぁ、とため息をつく。正確には、リズの左手に装備されている、ヴァルキリーの意思が宿った小手だ。ウィルはまぁまぁと全員をなだめる。このままでは全員を巻き込んで何度目かの口論が始まってしまう。


「で、師匠。僕からも疑問があるのですが」


 ウィルは下手に疑問を呈するが、妖精の言うことがいまいち信じられないという点はリズと似ている。


「魔法の効かない相手に効く魔法とは、とんちのようなお話です。魔人には弱点のような魔法があるということなのでしょうか?」


「弱点、というわけではないが、効果はあるはずだ。そもそも俺様の見立てでは、魔人は魔法が効かないのではない。

 魔法によって引き起こされている、この世界の事物が魔人に効果がないのだと考えている」


「……」


 サイラスがいたら絶対「俺意味わかんないんスけど、皆理解できているんスか?」などと口走ったに違いない。だから、今回ウィルはサイラスを連れてくるべきだったと少し後悔した。ウィルにもさっぱりわからないからだ。


「妖精よ。もう少しかみ砕いて説明せんか。わしにはわからんぞ?」


 妖精はやれやれと言った態度で説明を加える。


「魔人は魔界の門からやってきた、異世界の住人だ。この世界とは別の理で存在している。だから、この世界の理――世の中のルールが通用しない」


「世界の理が通用しないとは、どういうことでしょうか?」


 ウィルが質問すると、妖精はすぐさま答えた。


「わかりやすいのは、熱すれば燃え上がる、冷やせば凍り付く、そういった事象だ。魔法で生み出した火球や氷塊を魔人にぶつけたところで、燃えもしなければ凍り付きもしない。つまり、ダメージは与えられない」


「なるほど、それであれば物理攻撃もあまり効果がない点も納得ができますな。斬れば傷つく、というルールが通用しないということですかな」


 つまりは、この世でおよそ考えられる攻撃という攻撃は、魔人には意味がないことになる。攻撃する、傷つく、ダメージを負うという論理が通用しないのだから。


「だから俺様は考えたんだ。魔力でこの世の事象を生み出さなければいい。つまり、魔力そのものをぶつけるんだ」


”魔力そのもの”を”ぶつける”とはどういうことだろう?


「初代皇帝と戦った時、魔人は魔法を使っていた。つまり、魔力に関してはこちらの世界と同じ”力”のはずだ。魔人の世界にも魔力があるのなら、効果があるはずだ。みてろよ?」


 そういって妖精はむにゃむにゃと呪文を唱えた。妖精の目の前、透明な箱の外に、小さな黒い球体が出現する。はっ、と妖精が気合を入れると、小さな球体は正面に飛んでいき、ウィル達を運んでいる木箱の壁に到達した。


 パァン!と大きな破裂音とともに、木箱の壁は円形にえぐり取られ、穴が開いた。穴の大きさはちょうど球体と同じくらいだ。穴からは冷たい上空の空気が吹き込んでくる。


「俺様は魔力がもう少ない。だからこれをお前さんにやってもらう。わかったか?小僧」


 突拍子もない理論で、リズもアルフレッドも、ウィルも理解が追いつかないが、数百年の時を過ごした妖精がそう結論付けたのだ。信じるしか無かろう。


「今の魔法(?)を僕が発動させるのですか?」


「いや、この技は制御が難しいんだ。純粋な魔力を放出する必要があるからな。魔力も含めてメインは小僧だが、俺様が術のコントロールを補助してやる」


 そういって妖精はウィルにニヤリと笑う。


「まずは魔力そのものを自由に扱えるようにならなきゃな。魔人のところに着くまでに、マスターしてもらうぞ?」


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