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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
帝国防衛編 <Last Battle>
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3.数百年前の記憶

「帰れ!しっしっ!!」


 百年以上ぶりに現れた皇族――俺の主人の子孫だったが、すでに使い魔を持っていると言う。あまりの落胆に我を忘れて追い払っちまった。


 あいつがいなくなった後の書庫、つまりこの部屋はまた静寂に包まれている。もう慣れっこだ。


「はぁ」


 そういえば今来た奴は今までの奴らより、殊勝な態度だったなと思い返す。もう千年以上も前、俺が使い魔だったときも、主人であるアイツは腰の低いやつだった。


 久しぶりに、主人のことを思い出した。




****




 使い魔になったのは、アイツがまだ大陸中を旅して魔物を討伐しまくっている時だった。

 隣にいつも白銀の甲冑を着た女がウロチョロしている以外は、一緒に旅する仲間はいないようだった。甲冑の女――ヴァルキリーくらいしか、アイツと一緒に魔物を討伐できる実力のあるやつがいなかったからだ。



 俺が使い魔になったことで、アイツの戦力は倍増したと言ってもいいだろう。大陸の魔物は狩り尽くされて、ほとんどの場所は人間が安全に暮らせる場所になった。


 むしろ、人間同士の争い事の方が問題になったくらいだ。魔物がいなくなれば安全な土地ができる。土地があれば領土を主張する奴が出てくる。アイツは困っていたな。いくら平穏を乱すといっても、人間を魔物のように両断するわけにはいかないからだ。




「xxxx王女と結婚することになったんだ」


 その頃のアイツは今の帝都に住み着いて、王様なんぞに祭り上げられていた。人間同士の争いを収めるために、当時力を持っていた国の王女と婚姻が決まったんだと。


 ヴァルキリーのやつはといえば、近くに城を立てて一人で暮らしていたな。奴は戦いしかできないからな。政治的な話でアイツの迷惑にならないよう、距離を取ってたんだろう。



「魔界の扉を封印する。手伝ってくれないか?」


 ある日、アイツはそう言い出して一人で旅立った。正確には、使い魔の俺と一緒だが。大陸中の魔物を討ち取ったアイツだったけど、一つだけやり残したことがあったんだ。それが魔界の扉だ。

 何を思ったか、ヴァルキリーには声をかけていないみたいだった。ヴァルキリーなら、この話を聞いたら嬉々としてついてきたと思うんだがな。


「ヴァルキリーにもう怪我をさせたくないんだ」


 アイツはそう言っていた。


 まぁ、俺様がいれば十分だ。それは今までの旅でわかっていることだ。


「魔界の扉が封印できれば、大陸は真に平和になる。それを手土産にして、ヴァルキリーに結婚を申し込むつもりなんだ」


 どうして平和とやらが手土産になるかは俺様にはわからなかった。まぁ、アイツとヴァルキリーの間でしかわからない、何かがあったんだろう。


 あの二人がお互いを悪く思っていないことは感じていた。かと言って何とも思わなかった。妖精である俺様は人間がだれと結婚しようと興味はなかったからだ。


 そんな話をしながら魔界の扉にたどり着いた俺たちは、人間の姿をした魔物と戦闘になった。





「想定外だ!こんな強力な魔物が残っていたとは……いや、魔人か!!」


 人間の姿をした魔物、魔人は、俺様の魔法が全く効かなかった。


 炎も、氷も、風も効かない。魔法が主力の俺様は、サポートに徹するしかなかったんだ。


 死闘ってやつだった。おまけに、魔人の魔法攻撃はこっちの防御魔法の効果が薄かった。アイツは見る間にボロボロになっていった。傷つけても瞬時に回復する魔人と、ダメージの蓄積する人間。勝負にはならないよな。


 それでも、大陸中の魔物を「封印」してきたアイツだ。一瞬、ほんの一瞬の隙をついて、魔人と魔界の扉を同時に封印魔法で閉じ込めることに成功した。




 だが、その代償にアイツは致命傷を負ってしまった。




「なぁ、妖精」


 意識が混濁するなか、アイツは俺のことを呼ぶ。


 致命傷を負ったはずのアイツは、気迫だけで帝都まで戻ってきた。「俺が戻らないと国が混乱するから」ってアイツは言っていたけど、ヴァルキリーに一言言いたいことがあったんじゃないかと、俺は思う。


 でももうそれも叶わない。アイツはもうすぐ死ぬ。そうすれば、運命を共にする使い魔の俺も、消え去るだろう。

 今まで思う存分暴れたし、アイツの目的は果たした。悪くはないんじゃないかなと思っていた。


「お願いしたいことがあるんだ。魔界の扉と、魔人のことだ」


 どこにその力が残っていたのか、アイツは俺に封印の魔法をかけ始めた。この時初めて今までの魔物に同情したね。この魔法はかかったら最後、あがいたところで逃げられるようなシロモノじゃないと、身を持って理解した。


 透明な正方形の封印魔法に閉じ込められた俺は、力の限り暴れてみた。なぜか魔法は発動して、アイツの寝室を破壊し尽くした。でも俺様が封印から出ることはどうしてもできなかった。


「俺とお前の繋がりを”封印”したんだ。前から自由になりたいって言ってただろ?願いが叶ったじゃないか」


 アイツは笑ってた。お前、死にそうなんじゃねぇのかよ。


「いつか、あの魔人の封印は力を失うだろう。そうしたら魔人が暴れ回るかもしれない。頼むよ。それまでに準備をしておいてほしいんだ。魔人を倒す方法を探してくれ」


 無茶言うな!と俺は言った。そもそも、お前は使い魔と主人の繋がりを封印しちまったじゃねーか。だったら、もう俺たちは無関係じゃないか。


「そういうなよ。それと、王女とヴァルキリーに言っておいてくれるか?「すまない」と」



 ……俺様の言うことを聞かないで、アイツは息を引き取った。

 使い魔のつながりが封印されている俺様は、それでも消え去ることはなかった。




 何年経っただろう。アイツが結婚していた王女は子供を宿していて、二代目の王になった。その息子も、さらにその息子も、みんな王になった。

 俺様はその間、ずっと魔法の研究を続けた。アイツの命を奪った魔人と、全ての元凶である魔界の扉を攻略する方法を。

 百年。二百年。世代交代が進んだ。そのうち、アイツの子孫の中にすら俺様の存在を知るものはいなくなった。


 だからと言って別に気にはしていない。俺様がするべきは、魔人と扉との戦いに決着をつけることだ。



 ……。



 さらに長い年月が過ぎ、研究は終わった。おそらく魔人を倒すことができるはずだ。


 俺様が外に出ようとした時、俺様は真っ暗な書庫の奥に忘れ去られていた。


 さらに百年、二百年。




 ある時、俺様が置かれた部屋の扉を開ける音がした。足音が響き、近づいてくる。


 そうして、俺様の目の前に何百年ぶりかの人間が現れた。そいつはウィルフォードと名乗った。


 話を聞くと、ついに魔界の扉の封印が解けたらしい。ということは、あの魔人も出てきているはずだ。俺様は魔人を倒せる方法があると持ちかけた。だが、それには俺様が再び使い魔とならなければならない。使い魔になれなければ、魔人を倒すための魔力が足りないからだ。


「すみません。僕にはすでに使い魔が」


「なんだぁ?それじゃ時間の無駄じゃねーか!この小僧が!帰れ!使い魔のいない皇族を連れてこいよ!しっしっ!!」


 俺様は落胆のあまりアイツの子孫を追い返した。


いつも読んでいただき、ありがとうございます


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