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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
戦乙女復活編 <Valkyrie Reborn>
123/138

11.リンドグレーン史上、最強の騎士団

 ラストフォート砦、中央広場。


「ルクス……」


 砦を襲った黒いドラゴンへと向かったルクスは、お互い牽制し合いながら東の方角――オリエンス領へ向かって飛んでいった。


「シェリル女王」


 警備隊長のイーデンが声を掛ける。あの二頭のドラゴン同士の戦いの行方も気になるが、目下は迫り来るオリエンス軍だ。今回は戦力を砦正面へ集中させている。いつ侵攻が始まってもおかしくてはない。


「お戻りください。ドラゴンの攻撃で被害を受けた箇所は急ぎ復旧中です。オリエンス軍を迎え撃つ準備を進めなくては」

「……わかりました」


 ルクスの飛んで行った方角を心配そうにみていたシェリルだが、そう答えてからは気持ちを切り替えたようだ。司令室へもどる道中でもてきばきと指示を飛ばし、迎撃の体制を整えていく。


「では、私も砦正面へと向かいます」


「前線での指揮はあなたに任せます。頼みましたよ」


「承知しました」


 イーデンは一礼すると、走っていった。




****




「全員、配置につきました。オリエンス軍の動きを警戒中です」


「アレの準備の方は?」


「完了しました」


 将校からの報告を受け、イーデンはうなづく。こちらも準備は整った。あとは敵軍などのような攻撃を仕掛けてくるか……



 ドォォォン!!



 地面が揺れる。戦闘が始まったのだ。背中に冷水を流されたような、この緊迫感ももはや懐かしさすら感じる。


「魔法攻撃です!」


 監視棟からの報告が入る。今回はウィルがいないことを知っていて、大規模魔法による城壁の破壊を狙っているのだろう。


「第二波攻撃!来ます!!」


 爆発音と共に、揺れる城壁からひび割れた石の破片がパラパラと落ちてくる。

 火炎の魔法だろうか。壁のない上空からは熱を感じる。ウィルフォード皇子の障壁によって前回はあまり目立たなかったが、大規模魔法による連続攻撃は城砦攻略の新たな方略の一つとなるだろう。弓矢の届かない遠距離からの攻撃は、砦側からすれば反撃が難しい。


 一方的に攻撃を受け続けるしかないだろう。……この砦以外では。


「砦の扉を開ける準備をしろ!竜鱗騎士団出陣!」


 イーデンは叫びながら、女王シェリルと、その夫の使い魔のことを思い出していた。




 ある日、ウィルからの手紙を受け取ったシェリルは、ルクスのいる中央広場へ足を運んでいた。ウィルの手紙には個人的なシェリルへのメッセージの他、いくつかの依頼が記されていた。


ーーー

 シェリルへ


 お元気ですか。ラストフォート砦がまだ落ち着かないうちから、帝国へと戻ってしまいごめんなさい。

 帰路では危険な目にもあいましたが、なんとか仲間の強力で帝都へ戻ることができました。この手紙は宮殿の自室で書いています。


 もうご存知かとは思いますが、今エスタリア帝国はヴェンパー第三皇子の謀反によって、大陸南部地方で内戦が起こっています。ヴェンパーはオリエンス王国と手を組み、帝国、そしてリンドグレーン王国の侵略を計画しているようなのです。


 困ったことに、ヴェンパーも試練の森へと入り、使い魔……それも僕と同じ、ドラゴンを手に入れたという情報が入ってきました。ドラゴンの強さは僕とシェリル、そしてオリエンス軍が一番よく知っていると思います。ヴェンパーはラストフォート砦を落とすために、使い魔を向かわせるかもしれません。それを好機とみたオリエンス軍が、呼応してラストフォートに再攻撃を仕掛けてくる可能性も高いでしょう。


 ……おそらく、ヴェンパーの使い魔に対抗できるのはルクスしかいません。ルクスにあなたとラストフォートを守るよう、この手紙を見せて伝えてください。

 またルクスがヴェンパーの使い魔の相手をする間、ラストフォート砦をオリエンス軍が攻めてきた場合、砦のみんなに戦ってもらう必要があります。


 ヴェンパーは大陸にさらなる混乱をもたらそうとしています。僕はそれを阻止するため、南部へと向かうつもりです。夫婦となったのに、貴女の危機に向かうことのできない僕をお許しください。

 こちらが解決したら、必ず貴女の元へと向かいます。


 そのときは、また一緒にルクスの背に乗ってリンドグレーンの村々をみてまわりましょう。


 あなたの夫、ウィルより


ーーー


「……」


 シェリルが広げたウィルの手紙を、ルクスはしばらくの間じっと覗き込んでいた。どこで学んだのかはわからないが、ルクスは文字を読むこともできるのだ。


「確かに、我が主人の書いたもののようだ。わずかに主人の魔力を感じる」


 シェリルにはドラゴンの表情はわからないが、その穏やかな声色は主人とのつながりを感じて喜んでいるようにも聞こえた。


「ルクス。リンドグレーン王国の女王として、私からも協力をお願いします。

 リンドグレーンを襲うドラゴンから、私たちをお守りください」


 シェリルはルクスの目を見て、真摯にそう言った。ルクスがこの手紙を本人からのものだと判断したということは、自分が何も言わずとも、ルクスの指示に従ってラストフォートを襲撃するドラゴンを撃退してくれるだろう。だがシェリルからも改めて言葉にしておきたかったのだ。


「主人の手紙には」


 ルクスを見つめるシェリルに、ルクスは視線を向ける。


「シェリルとラストフォートを守れ、と書いてある。だが私はドラゴンの相手をしなければならない。だから」



 シェリルには、表情のわからないルクスが少しニヤリと笑ったように思えた。


「ひと肌ぬごうじゃないか。文字通りな」






 ドォォォォン!!


 再び魔法攻撃が砦の正面に放たれた。巨大な火球は火柱をあげ、あたりには黒い煙が爆風と共に吹き上がる。砦を焼き爆発で城壁を削り取る攻城魔法は、もう何度もラストフォート砦へ襲いかかり、その威力で砦を揺さぶった。


 ……だが今回の爆発は様子が少し違うようだと、砦にいた兵士たちは感じた。聞き慣れてきた爆発音のあとの、砦をゆらす衝撃がない。


 魔法の一斉砲撃が止むと、立ち込める黒煙が平原をなでる風に吹かれて薄まっていく。次第に視界がはっきりとするにつれ、魔法の着弾地点にラストフォート砦の兵士たちが隊をなしているのが見えてきた。

 直前に開いたラストフォート砦の扉から現れたのだ。


 遠巻きに様子を見ていたオリエンス軍は、見たことの無いその風貌にどよめく。皆、白金に輝く盾と鎧を装備している。


「隊長!イーデン隊長!!防ぎ切ったようです!」

「気を抜くな!被害を報告しろ!」

「怪我人なし!全員無事です!!」


 オリエンス軍の放った魔法を正面から受け止め、生き残ったことに思わず安堵の叫び声をあげる兵士を、イーデンは叱責する。だがその実、イーデンもその兵士の気持ちはよく分かった。損害はなし。オリエンス軍の魔法攻撃を無傷で耐えきったのだ。目論見は成功だ。おそらくこの装備――ルクスの鱗から作られた竜鱗の装備は、今回の戦いの趨勢を決める鍵となる。


「隊列を整えなおせ!次の攻撃に備えろ!」


 再び、兵士たちは白く輝く盾を構える。シェリル女王がウィルフォード陛下からの手紙を受け取り、ルクスと会話した。その後、ルクスは自分の鱗を抜き取り、兵士たちへと配り始めたのだ。

 ルクスは「竜の鱗は生半可な攻撃では傷つかない。兵士たちの装備を整えれば、戦力になるだろう」と言っていた。


「次の攻撃、来ます!」


 再び、オリエンス軍から火球の魔法が撃ち込まれる。狙いは砦の前に並んでいる兵士ではなく、元からラストフォート砦だ。しかし間に入った兵士たちが次々と魔法を防いでいく。

 ただでさえ強固な竜の鱗からできた装備は、ルクスの能力を引きついで、魔法を無効化する力を獲得していた。


 1度目は信じられなかったオリエンス軍も、2回も魔法を防がれて動揺しているようだった。好機とみたイーデンが指示を飛ばす。


「竜牙槍を!」

「はっ!!」


 合図とともに、ラストフォート砦で最も武術に優れた兵士が長い槍を手にする。槍の切っ先は他の装備と同じく、白金に輝き、光を放っている。ルクスが1本だけ、自ら折って兵士に与えたドラゴンの牙から作られた長槍だ。


「おおおおおっ!」


 兵士は槍に魔力を込めて突きを繰り出す。槍の先からは高速に回転する空気の渦が放たれた。横向きになった竜巻のような渦はそのままオリエンス軍へと到達し、周囲の兵士を渦の中に巻き込んで撹拌した。


 オリエンス軍は竜牙槍から放たれた竜巻によって左右に分断され、動揺している。好機とみたイーデンが、敵に聞こえるほどの大声で突撃の合図を出す。


「オリエンス軍がひるんだぞ!竜鱗騎士団、突撃!!!」


「おぅっ!!!」


 これが、リンドグレーン王国軍史上最強として歴史に名を残す、竜鱗騎士団の初戦となった。


いつも読んでいただき、ありがとうございます


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