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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
戦乙女復活編 <Valkyrie Reborn>
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7.ラストフォート砦を襲う災厄

 オクタスとヴェンパー。帝国の皇位継承者同士が激突しているころ、ラストフォート砦はあの時以来の緊張に包まれていた。そう、オリエンス軍の猛攻をウィルとルクスが退けた、あの戦い以来だ。


「シェリル女王」


 砦の警備隊長、イーデンが片膝をつく。頭を垂れたその先には、シェリル女王が真剣な面持ちで座っている。このように緊迫感のある報告もあの時以来だ。


「報告を聞きましょう」


 シェリル女王は静かな声でイーデンに命じた。


「はっ」


 イーデンは顔をあげ、ラストフォート砦に迫りくるオリエンス軍について説明を始める。


「オリエンス軍はおよそ1万。ウィルフォード陛下がいらっしゃった前回の大規模戦闘とほぼ同程度と思われます。陣形は方陣。前回とは異なり、砦正面からの攻撃に特化するつもりのようです」


 前回の戦いでは、オリエンス軍は三部隊に分かれ、正面に加え南北からも攻撃を加えてきた。多方向から攻めることで、ウィルの障壁を砦の全方向に広げさせ、魔力を急激に消耗させようとする作戦だったが、今回は別の作戦をとろうとしているのだろう。


「作戦部からの分析は?」

「まだ敵軍の意図をつかみかねているようです。先の戦いでオリエンス軍の隊長格はほぼ戦死しており、やむなく戦力を中央に集中させているのではないかと……」


 イーデンの回答は歯切れが悪い。情報が少ないのだ。シェリルはウィルから受け取った手紙を思い出していた。


 ウィルの手紙には、帝国の第三皇子による反乱、その皇子とオリエンス王国が共謀して、リンドグレーンへの再侵略を計画しているという内容が書いてあった。そして、シェリルの身を案じるとともに、ルクスとともに何とかリンドグレーンを守り通してほしいとも。ウィルは反乱軍の征伐に、大陸南部へと向かわねばならないらしい。


 ウィルがもたらした、帝国第三皇子とオリエンス軍との共謀は、ラストフォート砦の主要な者にはシェリルから説明済だ。


「オリエンス軍に帝国の皇子が絡んでいるとなれば、これだけではないはず。

 イーデン、敵の動きをよく観察し、動きがあった場合は……」


 シェリルがそう言いかけたとき、轟音とともに砦に衝撃が走った。何か強力な攻撃を受けたかのような衝撃だ。


「何事ですか!?」


 事態を飲み込めずにいるシェリルをはじめ、指令室の面々のもとへ、伝令が飛び込んできた。


「報告いたします、砦の西方上空から、大規模な魔法攻撃を受けました!監視塔の一つが倒壊!」

「西方?」

「帝国で反乱を起こした皇子の攻撃か!?」


 動揺する指令室。間をあけずに、再び砦内に先ほどと同じ規模の衝撃が発生する。続々と指令室に被害報告が上がってくる。


「イーデン閣下!上空から……上空にいるドラゴンから攻撃を受けています!攻撃は中央庭園に着弾!!」

「中央庭園ですって?」


 庭園にはルクスが待機していたはずだ。もしかすると敵は強力な力を持つルクスに狙いを定めてきたのかもしれない。


「ルクス!」


 思わずシェリルは庭園へと走りだす。ウィルから預かった使い魔というだけでなく、今では彼はこの砦の兵士たちと一緒に戦う仲間だ。


 シェリルが走る間にも、三度、四度と砦の中で爆発が起こっていた。





「ルクス!?どこにいるのルクス!」


 轟音と振動の中、中央庭園へ出たシェリルが見たのは、すでにバラバラに崩壊した監視塔と、がれきに埋もれた庭園だった。


「シェリル女王、危険です!」


 兵士たちの制止も聞かず、庭園を走るシェリル。


「ルクス!返事をして!!」


 その間にも、空から落ちてきた巨大な火球がシェリルの後方で爆発する。火球が放たれる方を確認していた兵士が、急に大声をあげる。


「シェリル女王!火球が!!お逃げください!」


 兵士の声にシェリルが上空を見上げた時には、すでに火球は眼前に迫っていた。


「っ!?」


 思わず目をつむるシェリル。


 ドォーーン、と大きな爆発音。だが、シェリルには爆風は到達しなかった。


「大丈夫か?」


 聞きなれた声に、目を開けるシェリル。火球がさく裂したと思われる場所には、大きなルクスの翼が広げられている。ルクスが火球からシェリルを護ってくれたのだ。


「ルクス!大丈夫ですか?けがは?」

「私は問題ない。それより、厄介な敵が来たようだ」


 白金に輝く翼でシェリルを護りながら、ルクスは上空を見上げる。空の上には、ルクスとは対照的にすべての光を吸い込んでしまうかのような、黒いドラゴンが飛んでいるのが見える。


「あれは私が引き受けよう。だがしばらくは砦に戻れないだろう」


 ルクスはドラゴンの相手をしてくれるようだ。実際、彼しかあの上空の黒いドラゴンに攻撃できるものはいない。ルクスもそうやって、今までオリエンス軍を一方的に攻撃してきたのだ。



「こちらは任せてください。でもルクス」


 シェリルは優しくルクスに手を触れる。


「あなたも絶対負けないでくださいね」

「問題ない」


 そういってルクスは翼を広げる。白金色に光を放つ翼が空気を打ち付けると、ルクスが浮き上がる。すぐにルクスは高度を上げ、飛んで行ってしまった。



「今日はルクスも、ウィルもいません。でも、なんとしてもこの砦を守らなければ」


シェリルは、再び指令室へと走っていった。


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