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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
戦乙女復活編 <Valkyrie Reborn>
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6.ヴェンパー vs オクタス

 リズがヴァルキリーの古城へと入り、ウィル一行が魔界の扉を目指しているころ。



「あー。兄貴がくるとはな」


 意地の悪い笑みを浮かべて、ヴェンパーはそう言った。目の前には兄、すなわちオクタスが立っている。帝国南部を移動中のヴェンパーは、オクタス率いる帝国軍と衝突していた。


「ウィルフォードの奴がくると思ったんだけどな。アイツを嬲るのを楽しみにしてたんだが」


 ふん、とヴェンパーが鼻を鳴らす。オクタスは表情を変えずにヴェンパーをじっと見据えている。

 オクタスは後ろには百人ほどの兵士を連れている。護衛騎士ではなく、オクタスの配下の最精鋭の兵士、近衛兵たちだ。個々の実力は護衛騎士に及ばずとも、オクタスの指揮を迅速に、忠実に実行する統率の取れた動きは脅威となるだろう。そして、オクタスの能力を使えば近衛兵は最強の軍となる。



「ヴェンパー。これ以上恥を晒すのはやめろ」



 表情は変えないまま、オクタスはそう声を張った。そんな一言で考え直すようなら、最初から独立国家を宣言するなどという愚行は犯さないだろう。それでも、オクタスは兄として言っておかねばと考えていた。これでも一応、兄と弟なのだ。最後のチャンスだ。これが終わってしまえば、あとはもう敵国同士、殺し合いをするしかない。


「今更そんなこと言うなよ。俺はなぁ、兄貴には少し親近感があったんだぜ?最初から次期皇帝づらをしているデューンとは違ってな!」


「……」


「兄貴こそ、こっち側に来たらどうだ?兄貴の能力で南部の兵士を強化してくれるってんなら、それこそ大陸西部を支配することだってできるだろ?」


 オクタスだけが使える魔法。それは兵士の強化魔法だ。ただし通常の戦いで兵士に使われる一般強化魔法とは強さも、効果範囲も段違いだった。本気で魔法を発動すれば、ごく一般の兵士の能力を全員護衛騎士レベルにまで引き上げることが出来る。

 護衛騎士は一騎当千とも言われるほどの実力だ。数千、数万に及ぶ兵士全員を一時的に強化するオクタスは、こと国同士の戦争に関しては他の皇子を遥かに凌ぐ実力を発揮する。まさに皇帝に相応しい能力とも言える。


 だがオクタス自身には次期皇帝への野心は無い。これまでもデューンの指示を受けて各地を飛び回り、強化した兵士とともに各地の反乱の鎮圧や治安を悪化させる盗賊団の討伐などを積極的に進めた。オクタス自身、皇帝の椅子に興味はなかったし、兵の運用こそが何より好きだったのだ。


「俺はエスタリア帝国の第二皇子だ。その立場が変わることは無い」


 そういってオクタスは小さなワンドを掲げる。配下の兵士の戦力を向上させる、「強化」の魔法だ。


「はぁ。正気かよ?やるってんなら容赦はしねぇが」


 ヴェンパーは護衛もおらず、一人だ。それでも絶対の自信があるのか、余裕の笑みが浮かんでいる。


「兄貴は俺の魔法とは相性が悪い。わかってんだろ?」


 そういいながらヴェンパーも魔法を放つ。「腐食」の固有魔法だ。ヴェンパーの周囲から紫色の霧が立ち込める。


「いくら兵隊どもを『強化』したところで!俺様の毒に耐性がつくわけじゃねーもんなぁ!!」


 ヴェンパーの姿を覆い隠すほど濃くなった霧が、意思を持っているかのようにオクタス軍へと襲い掛かる。


 その様子を鋭い眼光で見ていたオクタスが、声を張り上げた。


「『障壁』を展開しろ!」

「はっ!」


 オクタスの指示を受けて、すぐさま近くの兵士がスクロールを発動する。そこに込められていたのは、ウィルの障壁魔法だった。

 触れるだけでも致命傷となるヴェンパーの毒の霧は、スクロールから呼び出されたウィルの障壁でせき止められる。何事もなかったかのように澄んだ空気のままのオクタス軍と、害意に満ちた霧につつまれるヴェンパー。障壁ではっきりと分けられた空間が、両者がもう相容れないことを物語る。


「ウィルの野郎。こんな時まで邪魔しやがって!やっぱりあいつは気に入らねぇ!」


 ヴェンパーはスクロールに障壁の魔法を込めた人物に悪態をつき、いらだつ。オクタスはヴェンパーを警戒しつつ、障壁に沿って兵士を展開する。


「ヴェンパー。おとなしく投降しろ。帝国の皇子らしく、正当な裁きを受けるんだ」


 オクタスの呼びかけに、ヴェンパーはさらに激高する。


「これで勝ったつもりか?俺の魔法を一回防いだくらいで、調子に乗るんじゃねぇ!こんな障壁なんざ、どうってことはねーんだよ!」


 ヴェンパーがさらに魔法を重ねる。先ほどよりもさらに濃い霧が、障壁へと到達する。


「オクタス殿下!障壁が……!」


 ヴェンパーの霧は障壁魔法を侵食し、食い破る。


「ハーハハハ!死ね死ね!」


 笑い声をあげるヴェンパー。だがオクタスは動揺を見せない。


「障壁!第二陣張りなおせ!」


 オクタスの指示により、次のスクロールが発動する。腐食の魔法で棄損された障壁の内側から、新たな障壁が生み出される。


「無駄だ!俺の腐食魔法はそんなもんじゃ止められねぇ!」


 ヴェンパーの言う通り、張りなおされた障壁も再び毒の霧によって侵されていく。だがオクタスも予想していたのだろう。次々と兵士に指示を飛ばす。


「障壁!第三陣!」

「各自、個別に障壁を張り、散開!合図を待て!」

「はっ!」


 三たび発動するスクロール。さらに兵士たちは一人一人、スクロールを発動し障壁を張る。そしてじりじりとヴェンパーの周囲を囲むように散らばりはじめた。


「ハハハ!ずいぶん準備してきたみたいじゃねぇか!」


 ヴェンパーはさらに力を籠めて腐食の霧を生み出す。


「ヴェンパーよ。我々が腐り落ちるのが先か、お前を倒すのが先か、勝負だ」



 オクタスが攻撃へと転じる指示を出す。


「今だ!反逆者を打ち取れ!!」



 兵士たちは一斉ににヴェンパーへと切りかかった。



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