4.いつもの五人で作戦会議
デューンがいなくなった後、残った5人はしばし無言だった。ウィルの兄の暴走、モンスターを生み出す危険な”魔界の扉”の存在、今まさに攻め込まれようとしているリンドグレーン。考えないといけないことが多すぎる。
「ウィル。少し話があるのですが」
急にリズが口を開く。その口から出てきた言葉に、ウィルは息をのむ。
「私はしばらく別行動とさせてください」
「えっ!?どうして……」
「姉さん?」
「リズ様……」
同じく驚きを隠せないサイラスとユーベル。リズは二人へ一瞬視線を動かした後、ウィルのほうを向いた。
「今の私は足手まといになってしまいます。だから……少しまっていてください。必ず追いつきます」
リズはまっすぐな目でウィルを見つめている。単に自信を無くしてしまったわけではないようだが、どういうことなのだろうか。
「……」
ウィルは無言だ。
「時間がありません。私も、しなければいけないことがありますので」
そういって、リズは立ち上がった。
「アルフレッド様。ユーベル。サイラス。ウィルをよろしくお願いします」
そういって、リズは三人に深々と頭を下げると、皆の返事も待たずに部屋を出て行ってしまった。
「ど、どういうことなんスかね……?」
あっけにとられていたサイラスが、何とか言葉を口に出した。
「……」
ウィルはまだ黙ったままだ。
「リズ殿も考えがあるのでしょう。『必ず追いつく』と言っていましたし、今のところは我々だけでなんとかするしかありませんな」
アルフレッドはリズの真剣な目を思い出して言った。ユーベルは黙ったままのウィルに声をかける。
「殿下。リズ様はきっとお戻りになります」
「……うん。いや、リズがいなくなって好都合かもしれない」
リズが居なくてよかった、などという発言に、アルフレッドもサイラスもユーベルもウィルを驚きの目で見る。だがウィルは落ち着いた表情をしている。
「殿下、そんなこと言っていいんスか?」
「リズのことは信じてる。きっと準備が必要なんだ。だから今はこれでいいんだ。
デューン兄上の言う通り、モンスターがどんどん湧き出しているなら、僕もみんなを守り切れないかもしれない。アルフレッドは護衛騎士だからついてきてもらうけど、ユーベル、サイラス。二人は帝都に残ってもいいんだよ」
「何をいってるんスか。俺も行きますって!」
「私も、殿下にお供いたします」
「ふふ、ありがとう」
危険な場所へもついてきてくれる仲間。これほど心強いことはない。だからこそ、リズも早く来てほしいと思う。やっぱり自分にはリズが必要なんだと、ウィルは改めて自分の心を確認することができた気がした。
「……」
ユーべルとサイラスに礼を言うウィルの横で、アルフレッドは厳しい表情をしている。
「アルフレッド。どうかした?」
ウィルが尋ねる。
「魔界の扉の件は承知しましたが……。殿下。リンドグレーンの方はよろしいのですか?」
「そうか……。ヴェンパー皇子の使い魔とオリエンス軍とで挟み撃ちになってしまうんスよね……!」
ヴェンパー皇子が手に入れた使い魔の情報は皆無だが、デューン皇子やルクスを見れば、とんでもない戦力であることは明らかだ。事実、ルクスがラストフォート砦でにらみを利かせているおかげで、オリエンス軍はまともに攻め入ることができていない。
そこにヴェンパー皇子の使い魔が現れ、実力が互角となれば、ルクスも使い魔同士の戦いに専念せざるを得ないだろう。リンドグレーン王国は再びオリエンス軍からの猛攻にさらされることになる。
だが、ウィルの意思に揺らぎはなかった。
「シェリルと、ルクスに向けて手紙を書いておくよ。二人を信じてる。僕が行くまで、必ず生きているようにって。僕らが素早く魔界の扉を封じて、すぐに向かえばいいんだから」
「殿下……」
「そうっスね!砦のみんなもそんなヤワじゃないっスから」
ユーベル、サイラスは同意する。
「そうですな。シェリル女王陛下と、殿下の使い魔を信頼しましょう」
四人は顔を見合わせる。皆、これから危険な場所にともに向かう覚悟を決めた目をしていた。
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