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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
戦乙女復活編 <Valkyrie Reborn>
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3.大陸を守るために

 太陽は空高く登り切り、地上のすべてに光を注いでいる。昼食を終えたウィルはとある会議室に呼ばれていた。ウィルを呼びつけたのは、第一皇子デューンだ。


 豪奢な椅子に腰かけたデューンが「まっていたよ」とウィルに座るよう促す。ウィルが座った椅子もデューンのそれと負けず劣らず豪奢なつくりだ。ウィルの後ろにはアルフレッド、リズ、サイラス、ユーベルも緊張した面持ちで控えている。

 通常であれば皇子同士の会話に護衛騎士や平民が同席することなどないのだが、デューンが「いつものメンバーも呼んでくれ」とウィルに言ってきたためだ。


「そう警戒しなくてもいいよ。どうせ君たちにも聞いてもらう必要のある話だ。

 さ、君たちも座ってくれたまえ」


 そういってデューンはアルフレッド達に着席を促した。皇子からの命令とはいえ、公式の場で皇族の横に並んでテーブルに着くなどアルフレッドやリズですら、前例のないことで動きがぎこちない。

 全員が着席するのもそうそうに、デューンが口を開いた。


「さて、ウィル。これからの話をしたいと思うんだが……正直、今の状況は深刻だ」


 ふぅ、とため息をつくデューン。心なしか、疲れが見える。


「兄上、ヴェンパーによる反乱はそれほど広範囲なのですか?」


 万能とも思っていた兄の疲れた様子に、ウィルは心配そうに尋ねる。


「ヴェンパーの件は、まぁ大丈夫だ。困っている点はもう一つ。南部にある”魔界の扉”がひらかれてしまったらしくてね」


「魔界の扉?」


 ウィルをはじめ、初めて聞く単語に皆怪訝な顔をしている。ただひとり、アルフレッドだけは誰にもわからないほど、ピクリと眉を動かした。デューンは説明を続ける。


「君たちもエスタリア帝国建国の歴史は知っているだろう?初代皇帝と、皇帝の横で獅子奮迅の働きをしたヴァルキリーの話だ」


「それはもう、歌劇にもなっているくらいですから、よく聞いてはいますが……。

 どこからかやってきた皇帝とヴァルキリーが、旅をしながら各地の強力なモンスターを討ち、大陸西部に平和をもたらしたと」


「大陸中を回って、最後に落ち着いたのがこの帝都ランスということになっていますな」


 リズが初代皇帝の冒険譚を語ると、アルフレッドも帝都の成り立ちを補足する。


「あぁ。そうして作られた国がこの、エスタリア帝国なわけだ。ただ市井に広がる建国記には語られていない面がある。

 初代皇帝の旅は、単に強いモンスターを討ち滅ぼして回っただけじゃない。モンスターが生まれる大本、つまりは魔界の扉を閉じるための旅だったんだ」


 皆、デューンの話を神妙に効いている。だれかがごくりと生唾を飲み込んだ音がした。


「初代皇帝が現れる前、大陸西部は長い間モンスターの支配する地獄のような場所だった。畑を作れば荒らされ、家畜を飼えば食われる。気を抜けば人間も簡単に殺されてしまった。

 特に、圧倒的にモンスターの数が多いことが問題だった。倒しても、倒しても、一向にモンスターは減らない。減るどころか年々強いモンスターが現れるようになっていった」


「そんな中で現れたのが初代皇帝とヴァルキリーだ。二人は、次々と各地の強大なモンスターを討ち取っていった。大陸中のモンスターを狩って、狩って、最後に大陸南部のとある場所にたどり着いた」


「いや、最後まで大陸南部からはモンスターがいなくならなかった、というのが正解だろう。モンスターは、ある場所から次々と湧き出していたんだ」


 ウィルがなるほど、とつぶやく。


「つまり、それが……」


 「そう。それが『魔界の扉』だ。魔界なんてものが本当にあるのかはわからないし、今となってはその場所に扉があるのかもよくわからないけどね。とにかく、初代皇帝の尽力で、モンスターは現れなくなった」



 デューンの言葉に、珍しくユーベルが言葉を発する。魔界という、別世界をイメージする言葉に、自分の存在を重ねたからだろうか。


「デューン皇子殿下。それでは、初代皇帝陛下はどうやってその扉を閉じたのでしょうか?」


 デューンが答える。


「そう、それが今、重要な点だ。初代皇帝は扉を封印したと伝えられている。つまり……」


「封印ということは、封印が無くなればまたモンスターが沸いてくるってことっスか?」


 サイラスの口調は変わらない。友人に話しかけるようにデューンに声をかけた。デューンが答える間に、リズからサイラスに肘鉄が撃ち込まれた。


「おそらくね。そして問題は、南部で独立国家を宣言したヴェンパーがその封印を……もう解いてしまった可能性があるということだ」


「ヴェンパー兄上が!?なぜそんなことを……!今すぐその扉をなんとかしないと!」


 ウィルが声を上げる。


「ウィル。落ち着くんだ。それにまだ話には続きがある」


 デューンが一段低い声で、ウィルをたしなめる。これ以上何があるのだろうか。


「ヴェンパーは試練の森で使い魔を手に入れたらしい。その使い魔を使って、リンドグレーンを攻めようとしているようなんだ。」


「でも、リンドグレーンにはルクスが……」


 そうだ。ラストフォート砦にはルクスがいる。リンドグレーンの首都へもそれほど時間をかけずに移動することができるはずだ。


「たしかに、リンドグレーンはウィルの使い魔によって守られている。だが、ヴェンパーはそのことは承知の上だ。使い魔同士で戦っている間に、ラストフォートをオリエンス王国に攻め込ませるつもりだろう」

「そんな!?デューン兄上、僕はシェリルのところへ向わないと……」


 ウィルの脳裏にラストフォート戦の記憶がよみがえる。あれほどの大規模な攻勢を再び受ければ、砦が落ちる可能性が高い。しかし砦へ向おうとするウィルをデューンは押しとどめた。


「だめだ。ウィルには行ってもらうところがある」

「ですが!」


「リンドグレーンにはヴェンパーの使い魔とオリエンス軍を引き付けておいてもらう。気持ちはわかるがウィル。君が行くべき場所はそこではなく、南部の魔界の扉だ」

「デューン兄上がいらっしゃるではないですか。それにオクタス兄上も……」


 ウィルの反論にも、デューンの表情は揺らがない。


「さっきも言っただろう?魔界の扉はすでに封印を解かれてしまっている可能性が高い。扉の周囲はモンスターであふれているだろう。

 ウィルには護衛たちと周囲のモンスターの掃討をしてもらう。そしておそらく現れるヴェンパーは、オクタスが相手をする」


「では、兄上は……?」


「一番重要なところは、自分でやりたいからね。僕が魔界の扉を封じる。少なくとも僕の魔法で氷漬けにすれば、しばらくは持つだろう」


 モンスターは魔界の扉から現れるという。どれほどの勢いで出てくるのかかわからないが、デューンが最も危険な役目を果たそうとしているということだ。


「まぁ、僕も使い魔を連れていくし、ウィルが露払いしてくれれば大丈夫さ。

 オクタスにはもう話をしてあるし、明日には出発する。君たちもよく休んで、準備をしておいてくれ」



 そういって、デューンは先に部屋を後にした。


いつも読んでいただき、ありがとうございます


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