不死の聖女は骨に戦く~少年冒険者が出会ったのは、リッチでポンコツな聖女様~(短編版)
「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁっ!誰かー!誰か助けてくださぁーいっ!」
「え、何これ?」
思わずユアンは状況も忘れて呆けた声をあげた。
ユアンは教会育ちの12歳、新米少年冒険者である。孤児だったユアンは一人の神官に拾われて教会に育てられ、その恩を返そうと神様の作ったとされる世界を脅かす魔物や魔王を何とかすべく、魔物の生存圏での仕事を主に請け負う教会と民間による互助組合員、冒険者を志願した。
そうして、勇気ある少年だと冒険者になることを周囲の皆に許され、初めて受けた依頼は近場の村の墓場にアンデッドが現れて人々が怯えているというもの。
教会から貰った銀の剣と多少は使える神聖魔法。それらを駆使すれば平穏を取り戻せると、夜にその場を訪れたユアンが見たものはというと……
度重なる魔物の襲撃で小さな村の割に肥大化した墓場の地面を割ってむくりと起き上がる動く骸骨の魔物スケルトンの群れ……に、わっしょいわっしょい胴上げされて小動物のような悲鳴をあげる、白と桃色をした司祭服の小柄な女の子の姿であった。
年格好はユアンと同じくらい。月明かりに照らされる修道服のヴェールから溢れる淡い金髪は眼を見張る綺麗さで、くりっとした赤い瞳がどこかウサギを思わせる垂れ目の顔立ちも滅茶苦茶に可愛い。
「た、助けてぇぇぇっ!
骨、骨やだぁぁっ!こないでぇっ!」
「うん、今助け……」
義勇心と小さな下心に駆られて銀の剣を構え……眼を凝らしたユアンは明らかな異常に気が付いて慌てて墓場に踏み込まんと駆け出しかけた足を止めた。
少女の胸だ。
ぶるんぶるんと幼い顔立ちに似合わず跳ね回るそれは確かにちょっぴり女の子を意識し始めた年頃のユアンには刺激が強すぎたが、問題はそこではない。
少女の白と桃の修道服の胸元は破れ、そして夥しい量の血で濡れた黒ずみが残っていた。ちょっと病的に白くなった胸元の肌にはちらちら見える胸の谷間をなぞるように明らかに致命傷な血の止まった傷痕も見える。
そう、屍に胴上げされている修道服の女の子は、ユアンには死者の一員に見えたのだ。
それも、ケタケタカタカタと歯を打ち鳴らして少女を万歳万歳と胴上げする墓に葬られていたスケルトン達のような明確な知性に欠けた死霊ではなく……助けを求める声をあげて生者を呼び寄せるだけの知性と自我を持つ上位アンデッド。
【死者の王】、リッチー。死者を操る魔術師が禁忌の果てに辿り着く不滅の死者という結末とされる怪物。死と永遠をばら蒔くという最強のアンデッド。
純血のヴァンパイアと並びたった二種類の、冒険者になる時に「戦おうが自殺しようが人を殺すアンデッドに変えられてしまうから、遭遇したら何もかも忘れて逃げろ」と教えられる超上位の魔物だ。
当然、ユアンに勝ち目など万に一つも無い。使える魔法は教会仕込みの神聖魔法、手にした武器も耐久や火力では鋼に劣るがアンデッド達が苦手とし霊も斬れる銀の剣。
だが、そんなもの何一つ役に立たないだけの力の差が、リッチーと駆け出し冒険者の間にはあるのだ。
思わずユアンは一歩、無意識に足を後ろに踏み出す。
相手はぱっと見とても可愛らしい美少女だ。ユアンも、普通なら一も二も無く飛び込んでいたろう。
けれど、相手がリッチーと疑わしい相手では……
淡い少年心に少し後ろ髪引かれながら、ユアンはそーっと墓場を離れてリッチー出現の大事件をギルドと教会に報告すべく帰路に就こうとして……
「いや助けてくださいよ!?」
バレていた。いや、一度助けると叫んで駆け出そうとした時点で当然ユアンの存在は相手に補足されていた。
既に逃げ場など最初から無かったのだ。
ユアンが周囲を見回せば、墓場を出たスケルトン達が入り口を固めていた。絶対にユアンを逃がすまいとする防壁となって、墓場に少年冒険者を閉じ込める。
「僕を、駆け出し冒険者の僕なんかをどうする気だ」
「いやあの、さっきから助けてって……」
宙を何度も舞い涙目になって憐れを誘う修道服の金髪美少女。けれども、明らかに死者の王が言う言葉ではない。
「何を言っているのか理解できない。僕なんか殺して、誰も悲しまないし誰へ使える兵にもならない」
「いやもう早くお願いします、骨ホント駄目なのーっ!
助けてー!」
何時しか胴上げが終わり、まるで神輿かのように並んだスケルトン達に少女は担がれた。
それはさも、死の王が己の配下を足に玉座に君臨したまま行進する、死霊の葬列という有名な絵画の再現にも見えたが……
「ぴゃぁっ!骨やだ!触れないで!ヒール!ヒールキュアヒールヒール!
なんで、なんで神聖魔法効かないのーっ!」
折れた杖でぽかぽかと自分を担ぎ上げるスケルトン達を殴り、本来アンデッドならば浄化する魔法の名前を付けた変な魔法でオーラを纏わせている少女は、何処かユアンが絵本知識で知るリッチーとは違った。
「ヒール」
ぼぅ、とユアンの手が光ると、ぱっとスケルトンの一体が物言わぬ骨となって地面に崩れ落ちる。
本来の神聖魔法は、ちゃんと効果を発揮した。
が、本来仲間が成仏させられれば一斉に襲ってくるとされるアンデッド達は少女を担ぎ上げて変に騒ぐのを止めることはない。それこそ、ユアンを攻撃する気配もなく……
「ていっ!」
ユアンの振るった銀の剣の一撃がスケルトンの腰骨を横に両断し、最後に残った村人の骨から出来た化け物は静かに墓地の土に崩れ落ちた。
あれから数分。結局最後まで自分を敵視して来ないから簡単に倒せる少女の周囲のスケルトンを全滅させ、改めてユアンは少女を見る。
「……で、君は?」
「あなたは?」
質問に質問が返ってくる。けれど、相手は上位の魔物だ。ワケわからない状況に救われていても、少女の機嫌を損ねればユアンなんて即死だろう。
意を決してユアンは先に名乗ることにする。
「僕はユアン。教会に育てられて、神様に恩返しするために冒険者を志願した普通の人間だよ」
その言葉に少女の赤い眼がぱっ!と輝いた。
「教会の!恩返し!」
「う、うん……」
体を乗り出してくる不死者少女の妙な食い付きに揺れる胸をガン見してしまい、気恥ずかしさからユアンは頬を掻いて目線を逸らす。
「あ、私はマリエ、教会の聖女候補」
と、修道服から生前は教会出身だったろう事が読み取れる死者の王は、配下を倒された敵意を一切見せずにさらっと告げた。
「せ、聖女候補?」
滅茶苦茶偉い地位そうで、ユアンは首を傾げる。
「ユアン君って、勇者は知ってる?」
「神様のエンブレムを持って魔王と戦うヒーローの事?」
ユアンも憧れた存在だ。当然知っている。
「えっと、四人居るんだよね?」
ユアンはそう聞いている。四人の勇者を見かけたら支援してやれとは教会に関わる人間なら誰しも伝えられたろう。
「そう、四人を教会が選んだんだけど……その選び方は、勇者を選ぶ剣闘大会での上位者だったんだよね」
ぽつりと告げられる真実。
「で、教会の権威をーって事で、教会育ちの女の子の中で強い力を持ってる子を、聖女って勝手に呼んでそれぞれの勇者に付けて送り出したんだ。その中の一人が私」
マリエは幼い女の子らしいふわっとした曖昧な表情で自分の過去を語り続ける。
「勇者様と一緒に旅する人だったの?」
今は死んでるけど、と警戒を忘れてユアンは話にのめり込む。
「そーなんだけど、私って元々、才能はあったんだけどどーしても骨が駄目でね?
生き物の骨を見るだけで、目の前で骨にされてしゃぶりつくされたお父さんお母さんを思い出して、半狂乱になっちゃうの。だから、一番順位が下だった勇者様に付けられたんだけど……」
少女マリエの言葉の歯切れが悪くなる。
「でも、全員勇者様で大会で上位に残る凄い人なんだよね?」
「それが……」
言いにくそうにマリエは言葉を切って地面を向くと
「ぴやぁぁぁっ!骨!骨残ってる!浄化されてないよーっ!」
びくりと震えて空を見上げた。
「だ、大丈夫?」
「……あ、ごめんごめん。話途中だった。でもこんなんだからさ、一番期待されてなかった人に付けられた。
でも、その勇者、八百長と不正で勝ち上がった人だったんだ。
私にはオレは勇者様だから奉仕しろー、えっちな事もさせろーって言うし、あんまり強くないし、勇気もやる気も薄いし……」
どんどんと不死者だからかちょっと顔色の悪いマリエの表情が沈んで行く。
「挙げ句の果てに、魔王軍のアンデッドが来た時、私を時間稼ぎの生け贄にして、一人で逃げちゃった」
悲しげに告げるマリエの胸元の致命傷をユアンは痛々しそうに眺めた。
「じゃあ、その時」
「うんまぁ、勇者が目障りだから殺しに来たそのアンデッドに見逃して貰える筈もなく、私もその駄目勇者もブスッと胸を一刺しされて殺されちゃったんだけどさ?
私、実は本当に神様の加護を受けた聖女か何かだったみたいで……勇者共々アンデッド化の魔法受けたんだけど、生前の記憶だとか大体の肉体とか、それこそ人間らしい感情すら残ったままアンデッドとして復活しちゃったっぽい」
あはは、と乾いた笑いを浮かべるマリエ。
「人を殺して死者の軍勢を拡げろとか命令されても、心が人間のままだからやりたくないって逃げ出して、でもどうして良いか分からなくて。
とりあえず故郷に帰ってきたら、墓場に葬られてるみんなが突然アンデッドになって蘇ってきちゃって。骨とか見るだけで駄目でもうどうしようかと!」
涙を目尻に浮かべ、死者の王となった聖女はユアンの眼を見つめた。
「アンデッドならーって自分に神聖魔法掛けても、周囲のアンデッドに掛けても一切効かないし!
何か我等が姫!って胴上げされるし!」
「アンデッドがアンデッドに神聖魔法使っても効かないと思う。そもそも使えないのが普通だし」
姫、についてはついていけないのでスルーし、ユアンは一般論を語る。
「別に死霊術とか使ってないのに勝手にアンデッドは湧いてくるし……どうしよう、ユアン君?」
意見を求めるよう小首を傾げるマリエに頼られて、少し気恥ずかしくてユアンは辺りを見回す。
まだ残るスケルトン達は墓場の入り口を固めていた。
「僕に何か出来るなら……」
はっと気が付いて、ユアンは自分の手の剣を見下ろした。
「アンデッドになったマリエさん自身じゃなくて、他人から掛けられるターンアンデッドなら、効くかも」
でも、とユアンは言い澱む。
「どうしたの?」
「マリエさん」
「ん、マリエで良いよ?私13歳だし、ユアン君とほぼ変わらないからさ」
スケルトンに囲まれていないからか、少女の顔には余裕が浮かんでいて、優しくユアンにそう告げる。
「でもそれって、本当に死ぬことになるから」
「あー、気にしてる?」
苦笑いするリッチーに、少年冒険者は小さく産まれた心を圧し殺すように頷いた。
「うん。僕は神様や司祭様への恩を返したくて、神様の教えにあるように誰かを助けたくて……冒険者になろうと思った。だから、アンデッドを浄化するのはやりたい事なんだけど。
話してるとマリエさんは、普通に生きてるのとそう変わらなくて。他のアンデッドみたいに、狂ったり自我を無くして人を襲うような感じじゃないから……
優しい人を殺すのと、同じように思っちゃうんだ」
本当はそれだけではない。見付けた当初こそ死者の王だとおののいたが、そもそもマリエは美少女である。
事情を知って、今でも不死者な以外はほぼ生前と聞いてしまえば……少年の幼い恋心が、もう相手は死んでいるけど生きて欲しいと、矛盾したような事を勝手に思う。
小さく手が震えた。
そんなユアンの手の甲を、優しくひんやりした白魚の指が包み込む。
「大丈夫だよ、ユアン君。
私だって困ってるもん。骨やなのにリッチーだし」
スケルトンを見てびくりとしながら、少女は聖女の威厳を見せるように、慈愛すら感じさせる声でユアンを諭す。
ユアン自身は、近くなった享年13歳とは思えぬ胸にちょっとドギマギしてしまっていたが。
「確かに何だか私のせいで蘇ってくるアンデッドも普通の化け物と違うけど、やっぱり生死のルールには背いちゃってるんだし」
「……はい」
絞り出すように、ユアンは言う。
本当は、なら生きてみてもと言ってみたい。けれど、本人が覚悟決めているならば、と出かかる言葉を喉奥へ押し込む。
「嫌な事させてごめんね?」
「大丈夫、です」
少し呼吸を整え、意を決して……少年は少女の胸の傷痕に己の銀の剣の切っ先を向け、沈みこませた。
ぷつっと肉を裂く感覚。初めての人を貫く感覚にユアンの背筋に悪寒が走る。
既に死者である体から血が流れないから耐えられたが、もしも返り血を浴びればユアンの心はそこで狂ってしまったろう。それほどに、それは嫌な感覚だった。
ガタガタと剣を握る手が震える。
「……ユアン君。君は私が付けられた勇者様なんか目じゃないくらい、ちゃんと勇気も優しさもある。だから、大丈夫だよ」
自分を滅ぼそうとする相手を、人の心を保つ不死者は優しく胸元に掻き抱く。
「出来たら私も、あんなんじゃなくて君みたいな小さな勇者と一緒に頑張りたかったなぁ、って思うくらい。
だから……」
もう、これ以上は耐えきれないから
「ターンアンデッドっ!」
ユアンは少女の名残惜しそうな言葉を遮るように、死者の肉体と魂を浄化する神聖魔法を、銀の剣を触媒に増幅して発動させた。
「……うん、ありがとうね、ユアン君」
そうして、出会ったばかりのアンデッドな聖女様は、修道服ごと金色の光になって消えていった。
後には少女の痕跡一つ無い。黄金の光が去った後、その場には王が消滅してただの骨に戻った村人の亡骸が散乱する小さな村の大きな墓地と、少しやるせない気持ちのユアンだけが残った。
「失礼します、ユアンです」
それから4日後。ユアンは冒険者組合の扉を叩いていた。
帰ってきてすぐに依頼達成の一報だけは入れた。以降は組合から貰った寮の一室で、芽生えた瞬間に終わらせた初恋の気持ちの整理を付けながら、ゆっくりと詳細な依頼内容報告書を仕上げて、数日たって漸くユアンはしっかりと冒険者組合に顔を出すことにしたのだ。
悲しさややるせなさはある。リッチーというとてつもない高位アンデッドを浄化したという手柄だ名誉だは報告の仕方によっては得られたかもしれないが……そういったものを得るようマリエという少女の意思を無視した書き方はしないように意識して、少しまだ沈んだままの気持ちを切り替えるべく、ユアンは扉の前で待って……
入って良いよという声が返ってこない事に違和感を覚える。
何か扉の向こうで蠢く気配はする。なのに、基本的に名を告げれば何か反応が返ってくる筈の組合の扉の先からは何一つ声が返ってこない。
何かあったのかもしれない。そう思ったユアンは焦って返事が返ってこない扉を開き……
「うわぷっ!?」
パァン!と破裂するくす玉の紙吹雪を頭から浴びてすっとんきょうな悲鳴をあげた。
「あー、報告書!まっじめー」
明るくけらけらと笑いながら、ユアンの手の完成した報告書をさっと取って中身をぱらぱらと捲るのは、くす玉を破裂させた下手人だろう白と桃の修道服の幼い少女。
「あー、結構辛かったんだ、ごめんね?」
「え、あれ?」
眼を擦るユアン。
が、目の前の少女の姿は消えることはない。
「マリエさん?」
「だから、マリエで良いよ?」
「いや何で居るんですか!?」
思わずユアンは大声をあげた。
そう、マリエである。ユアン自身が浄化して目の前で黄金の光になって成仏した筈のリッチーの少女が、何事も無かったかのように、当然の面で冒険者組合のホールでユアンの報告書を読んでいた。
「あ、そこ?
うん、私も後で気が付いていやー酷いことさせちゃったなーって思ったんだけどさ?」
「あ、はい」
「そもそも神様の加護があったっぽいから魂が腐らなくて生前の心を持った不死者って私になってた訳じゃん?」
こくりと頷くユアン。
何となく話が掴めてしまった。
「その私がさ。神様の力である神聖魔法で魂を浄化されて成仏することって無いんじゃないかなーって最後に気が付いたんだけど……」
「浄化、出来なかった?」
「うん。体は確かに一回浄化されて無くなったんだけど、意識全く消えないの。
ユアン君が何か思い詰めて帰っちゃう後ろ姿とか、バッチリ魂だけで見えてた」
「色々と台無しではそれ!?」
あはは、とユアンに笑う不死の聖女。
「それで、気が付いたら肉体も魂が残ってるから生えてくるし……
あ、浄化して貰ったから今はもう胸に傷痕無いよ、見る?」
「刺激が強いんで止めてください」
「んでさ、普通には頑張っても死ねないって分かったし、ユアン君みたいに頑張る人も居るのに駄目勇者に無駄死にさせられた事で何時までも腐ってても仕方ないなって。
ま、リッチーの私、死体だけど永遠に腐らないんだけどね?」
「上手いこと言おうとしないでくれませんかねマリエさん!?」
あはは、と墓場で出会った時は見せてくれなかった、愉快そうな表情を浮かべる屍の聖女。
「だから、ユアン君との顛末を冒険者組合に報告して、教会にも顔出してね」
はい、と取られた報告書の代わりに渡されるのはパーティ申請書と書かれた一枚の紙。
「あの、これは?」
「え、読んで字の如く。私、教会の偉い人とか通して聖女様のリッチーだからで色々とすっ飛ばして冒険者資格持たせて貰ったから。こうやって申請すれば普段から共同体として一緒に行動できるんだよね?」
いやあのと事態に付いていけないユアンは組合を見回すが、居るのは諦めの表情や嫉妬心のみ。
「マスター、良いんですかこれ」
「リッチーが味方とか、戦力面では間違いなく心強い。任せたぞ少年」
組合員の長は諦めたようにユアンに丸投げして、銀のカバーのついた何かを大卓に運んでいる。
「大任を任せないでくれませんか?」
「大丈夫、ユアン君は私を浄化する大役とか果たそうとしたわけだし」
「いや失敗した証拠が目の前に居るんですが!」
「いや、恋も知らないまま無駄死にさせられて終わりなんて心残りだったしちょうど良いよ?
それにさ、最後に言ったじゃん」
ふわり、と少女の上機嫌な紅潮したウサギ顔がユアンの耳元に寄せられた。
「君と頑張ってみたかったって。
だからさ、これからパーティとして宜しくね、ユアン君!」
(拝啓、神様の御元へ旅立った父さん、母さん、司祭様。初めての仲間が出来ました。
彼女は可愛くて、気高くて……)
「さて、新人が増えた宴だな!」
「ぴゃぁっ!骨付き肉!骨付きやだ!ユアン君ガード!」
マリエがユアンの背中に隠れ、周囲から笑い声が沸きあがる。
ユアンは骨付き肉から骨を取って見えないようにしつつ、背のひんやりした感触を思う。
(ちょっと頼りなくてアンデッドの王なのに骨が苦手な、初恋の聖女様です)
この先の彼等も人生は当然続いていくでしょう。が、連載予定は未定です。既存の連載に区切りが付いたら始めたり、沢山応援いただいたら調子に乗ってそそくさと始めたりするかもしれません。あくまでも未定です。