表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/43

Lv6 掲示板の反応②




 ヨウカが外出を決意したその頃。

 追加でオークションに出品した“竜の減薬”は、竜刀以上にゲーム界を震撼させていた。


―――――――――

【竜の減薬】


階級  一級作品

特性  使用者のレベルが一下がり、ステータスからレベルアップ時に得たポイント分を自由に選んで消す。ペナルティで下がったポイントがある場合、下がったポイントから消える。

―――――――――


 この竜の減薬を簡単に説明すれば、自分のステータスをやり直すことが出来るアイテムだ。

 ベテランプレイヤーでも最初は誰しもが初心者、レベルアップで必要のないステータスにポイントを割り振ってしまうことはよくあるミスだ。そんな間違えて振ってしまったステータスをやり直せる唯一のアイテム、それが竜の減薬だ。


 そしてこのアイテムは、ペナルティで下がったステータスポイントを消すことが出来る。


 このゲームでは他のプレイヤーをPK(プレイヤーキル)させてしまったり、モンスターなどに敗北してDP(デスペナルティ)を受けてしまうとステータスが下がってしまう。ステータスを回復する手段はいくつかあるが、どの手段も容易ではない。


 だからこそアイテムを使用してすぐ回復することが出来る“竜の減薬”は破格なのだ。人を選ぶ竜刀とは違い、この竜薬は全プレイヤーが待ち望んでいたアイテムだった。

 




 再び場所は攻略ギルド“神々しき獣”の集会場。


「………」


 広間の中央で、ラグロはギルド予算を見つめながら頭を抱えていた。


「ラグロ!」


 すると、お金稼ぎに出ていたベオがギルドの扉が勢いよく開け登場する。


「おつかれ、ベオ」


 ベオがお金稼ぎを中断して戻って来ることを予想していたのだろう、ラグロは特に驚かず手を振って迎える。


「竜の減薬の話は聞いてるな!?」


「もちろん」


「どうにかして手に入れたいんだ、何とかならないか!?」


「そう来ると思ったよ…」


 ラグロは疲れた笑みを浮かべながら、ウィンドウを開きベオに見せた。


「これが情報ギルドがまとめた“竜のオークション騒動”の最新記事だよ」


 今回の騒動は“竜のオークション騒動”と呼ばれ、ゲーム内で今もっとも注目の的になっている話題だ。


 既にあらゆる掲示板で竜刀のスレッドが立っている。

 出品者は何者なのか、この武器がどの攻略組ギルドの手に渡るのか、竜刀のステータスに関する考察など。どのスレも大盛り上がりとなっていた。


 無論、竜薬も出品とほぼ同時にスレが立てられた。


「竜刀を諦めた中堅クラスのギルドが竜薬を取り合って、相場がどんどん上がってる。もう竜刀の片手間で落札できる価格じゃない」


「ぐ…!」


「うちも竜刀を諦めれば落札は可能だけど、俺たちは攻略組だ。竜刀を諦めるなんて選択肢はあり得ないよ」


「………そりゃそうだよなぁ」


 ベオは落胆し、どかっと椅子に座り込む。

 どうしても竜の減薬が欲しかったようだ。


「気持ちは分かるけど落ち着きな」


 そんなベオに優しく声をかけるラグロ。


「この竜薬の数からみて、量産はそこまで難しくないかもしれない。いずれ手に入るチャンスは必ずくる」


「ああ…そうだな」


「徹夜だったんだろ?今は休んでいいぞ」


「………いや、まだいける!」


 ベオは吹っ切れたように立ち上がった。


「それにしても…まさかこのゲームでこんな金に困る時がくるとはな」


「ほんとにね、まったくFOOは何が起きるか予測がつかないよ」


 ベオとラグロは苦笑する。

 高い自由度故に何が起きても不思議ではない、それがこのファンタジー・オーダー・オンラインの魅力だ。こういった異常事態を楽しめなければ攻略組はやっていけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 期待!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ