Lv42 七聖戦士団
南にある獣人の拠点【ザウス】の中央都市。
そこに攻略組“七聖戦士団”のギルドがある。
石造りの円形に作られた拠点は、お城というよりもローマ時代のコロシアムのような外装だ。武器を試せる中央広場、作戦会議ができる集会場、気軽にコミュニケーションがとれる酒場。
時代風景に沿った内装にも拘りを感じる。
「いや~いかにも戦う専門のギルドって感じですね」
配信者ネムは散歩気分で入口の大きな門を潜る。
「あ、ネムちゃんだ」
「きたわね」
すると玄関で二人の女性が迎えてくれた。
「お、さっそく七聖戦士団の両翼が迎えてくれましたよ~」
ネムはドローンカメラを操作して二人にレンズを向ける。
「こっちの明るくて晴れやかなポニーテイルの子がシロコさん。様々な武器を使いこなして機敏に動く、近中遠距離に対応できるオールラウンダーだ」
「は~い、シロコだよ」
「こちらのムスッとしているツインテールの子がクロエさん。両手持ちの大斧を豪快に振り回す、攻略組前衛の小さな台風だ」
「…どうも」
ネムの紹介にシロコとクロエはそれぞれ反応する。
「二人は双子の獣人姉妹で有名の白黒コンビです」
そのままネムは二人の紹介を続けた。
「七聖戦士団は白と赤のコントラストを活かす装備に統一されていますが、二人はお揃いの肩だし西洋鎧ですね。そっくりなアバターだけど首に巻いたスカーフの色と髪型で見分けよう」
「ちょっと、私たちの紹介はもういいから!」
クロエは横から配信を遮る。
「本題はうちのギルドの施設案内と活動方針でしょう」
「おお、さすが話が早いね」
「面倒くさいけど…ニマニマ動画以上に宣伝効果のある方法はないからね」
そう言って退屈そうにツインテールを指でいじる。
「攻略組はいつだって人手不足だからね~」
隣のシロコがそう付け加えた。
「そこでうちのギルドの出番ということねっ」
宣伝ならおまかせとネムは胸を張る。
この配信の視聴者層は一千万人を超えるFOOプレイヤー全員だ。動画のアーカイブは残り続けるので、攻略に興味のあるプレイヤーは必ずチェックするだろう。
ギルド“ニマニマ動画”にはそれほどの知名度と人気がある。
※
三人は軽く施設を案内した後、集会場に移動して掲示板の前に集まる。そこにはギルドを代表する七人のアバター名が刻まれていた。
「七聖戦士団は七人の隊長を中心に自由界へ挑むんですよね」
ネムは解説を交えながら続ける。
「他のメンバーは隊員になって、隊長のことをサポートしないといけない。自由界の攻略貢献値を得るためにボスのトドメとかも譲らないといけない」
「そうよ」
合間にクロエは相槌を打つ。
「随分と偏った規約だよね。隊員だって貢献値は欲しいでしょう」
「足の引っ張り合いが愚かなことは“愚者の集い”が証明したでしょ。トップとなる主役を決めて、その他は全力で支援する…それが一番になるための必勝法よ」
「なるほど~」
「ただ隊員に野心がないわけじゃないし、隊長に利用されるだけじゃない」
「というと?」
「うちの兵力を利用すれば高難度のダンジョンに挑めるから、希少なアイテムやスキルを手に入れるチャンスは多い。入団できればすぐ攻略の前線に立てるから」
「得たアイテムを隊長に捧げる規約はないから安心だね」
「さらに功績を残して実力が認められたら、隊長に対して指名制で挑戦状を叩ける。隊長の座をかけた一対一の決闘ってやつよ」
クロエは隊長の名前が書かれた下のリストを指でなぞる。
「これが“隊長候補”の名前で、こいつは一月前に隊長の座を降ろされた奴よ」
「協力関係とはいえシビアな世界ですね」
「ゲームなんて実力で上へ行ける世界でしょ」
「…そういえばクロエさんも一度、隊長の座から降ろされましたよね」
ネムの何気ない一言にクロエは眉をひそめる。
「あの時は大変だったよ~」
当時の出来事をシロコが語り始める。
「お姉ちゃんって極度の負けず嫌いなんだ。降格してから涙目になりながら三日も寝ないでゲームに没頭して、最短で隊長の座を取り戻したんだ」
「シロコうるさい!」
クロエは腕を振って会話を止める。
「それに比べてシロコさんは隊長の座には興味ないの?」
するとネムはあっさり話題を変える。
「二本目の竜刀のオークションは七聖戦士団が落札してたよね。それで所有者に相応しいのは誰か紛糾を重ねた結果、シロコさんに決まったって噂だよ」
「うん、持ってるよ~」
いつの間にかシロコの手には竜刀・風刃が握られていた。
「それだけの実力者なのに、総隊長ヴァルの隊員だなんて勿体ない」
「私は楽しく遊べれば満足なので~」
双子姉妹は同じギルドに所属していても、活動方針は正反対だった。攻略組といっても一人一人の目的や方針は十人十色なのだ。
「二人とも、ありがとうございました」
ここでネムはインタビューを終えることにした。
「シビアだけど攻略に真剣な七聖戦士団、加入条件はギルドページに記載されています。腕に自信のある人は是非とも門を叩いてみよ~」
そして最後にそう締めくくる。
「またね~」
「ほら、さっさと行きなさい」
シロコとクロエは手を振ってネムを見送った。
「それじゃあ次のギルドに転移しま~す」
攻略組の時間は限られているので、少し急ぎ足で次に向かうのだった。




