Lv41 配信①
ここはエルフを中心に発展した西のワールド拠点“エスト”の中心街。裏道の隅っこで控えめに構える、こじんまりとした小さなギルド。
「あーあー」
暗い部屋の一室で、煌めく紫色のツインテールに寝巻のような衣服を着た少女は喉の調子をチェックする。そしてマイクとカメラの位置を調整して、配信開始のスイッチを押した。
「おっは~みんな起きてる?」
寝起きのようなローテンションの声で挨拶をする。
「動画配信ギルド“ニマニマ動画”のアイドル、暗眠橋ネムで~す」
ネムは画面に向けて眠そうに笑顔を振りまく。
どうやら眠気キャラが彼女の個性のようだ。そしてこれは独り言ではなく、ゲーム世界全体に発信されている生配信だ。
「本日の配信はFOO最大のコンテンツである“自由界”についてです」
配信をしながらネムは自由界の見取り図を3D画像で表示した。
「自由界50階層“混迷のハマ”…そこが現在攻略中の階層ですね」
そして見取り図の中心を指差す。
「入り組んだ迷路のような作りはまさにダンジョンそのもの。待ち受けるのはトラップ?ミミック?脱出不可能のモンスターハウス?さらに40階層とは比べ物にならない強さのモンスターに悪戦苦闘の日々」
過度な演技でダンジョンの過酷さを表現する。
「しかし、ここにきてバラバラだった攻略組がついに結束!力を合わせて各階層のボスを討伐して、ついに59階層の大ボスが待ち受ける転移台を発見!長いこと攻略を実況してきたネムは感涙ものですよ…」
涙のエフェクトでわざとらしく悲しむネム。
ベテラン配信者は視聴者を盛り上げる表現が上手だ。
「攻略の鍵となるのは五つの強ギルド、世間は五大攻略ギルドと呼んでいますね」
ここでネムは別のウィンドウを表示する。
“神々しき獣”
“六星王”
“七聖戦士団”
“オズの支援隊”
“愚者の集い”
これが五大攻略組ギルドの名前だ。
「ゲームを始めたばかりの新人さんはどんなギルドなのかを知らないでしょう。なので本日は大ボスとの決戦の前に、五つのギルドに凸してインタビューしてみようと思います」
そう言ってネムは立ち上がり、配信画面を外出用の自撮りカメラに移した。高性能のカメラドローンは意のままにアングルを調整できる。
「攻略に特化したギルドはそれぞれ一癖も二癖もある色物集団です。特に最近発足された“愚者の集い”には初めて訪問するので注目ですよ~」
さらに懐から転移石を取り出す。
「アポはもう取ってあるので、早速行ってみましょ~」
既に視聴者数は10万人に達しているというのに、ネムは緊張することなくマイペースのまま攻略組へ訪問するのだった。




