Lv40 ファッションコンテスト➂
あれから数時間かけて俺とハンナリさんのコーデ追求は続いた。そしてようやく渾身のファッションが完成した。
メインとなるのはお姫様が着るような上品な着物。俺の赤い髪に合わせた淡いブルー色で、勿忘草の花柄が特徴的な作品だ。
そんな見事な着物を大胆に着崩している。
帯は緩くして鎖骨や太もも部分を露出させて、ひらひらした部分は襷で縛って動きやすくしている。百人一首のカルタ選手みたいな着こなしと表現すると分かりやすいかな。
タイトルは『竜宮城のおてんば姫 ~田舎で遊ぶ無邪気な少女風~』らしい。
上品でありながらやんちゃに。
繊細でありながら大胆に。
未熟でありながら魅力的に。
俺の要望に応えながらも、見事に竜人アバターの特徴を活かしきっている。
…それは別にいいんだけど。
「ほらヨウカさん、笑顔がぎこちないよ」
俺たちは写真参加のみでコンテストに出場する。
大勢の前で立たされるのは御免だからね。
「…」
だがその写真撮影も俺にとっては難しい課題だ。そもそも女の子らしいポーズと表情を作るのが恥ずかしい。
「ヨウくんかわいいよ~」
「…ふ」
そして俺を男だと知ってるアヤとワカナに見られるのが辛い。
ここまできたら最後まで頑張るしかないけど。
※
ファッションコンテストが開催されると、参加者は一斉に撮影したモデル写真を投稿する。それから一部のワールドでは実物の服が展示されたり試着することも可能。
会場はそこそこ盛り上がったらしい。
このファッションコンテストは星の数ほどあるイベントの一つに過ぎないからな。俺が竜刀を出品した時の騒ぎに比べれば閑散としている。
そして俺たちの結果は見事に銀賞を獲得した。
写真参加のみならこれが最高の結果だ。金賞や大賞を目標にするなら、公式のコンテストでモデル参加をする必要があるからね。
でもコンテストのチャット欄は銀賞の話題で持ち切りだった。
『銀賞のクオリティやばない?』
『アバターがもう優勝だろ』
『服のセンスも大賞超えてて草』
俺たちは想像以上のものを完成させてしまったようだ。
大賞を受賞したのは大御所ギルド“天の衣”だったけど、俺たちの写真と比較すると無難でチープな作品に見えてしまう。それは審査員だけでなく参加者にとっても一目瞭然の事実である。
作品に付けられる“いいね”ボタンの差も歴然だ。
“天の衣”のリーダーは『試合に勝って勝負に負けた気分』とコメントを残したそうだ。
※
コンテストが終了してしばらくが経った。
「見て見てヨウくん!」
竜の里の草原で寝転がっているとアヤが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「コンテストの賞品の“白銀スライムの体液”をスラゴンに装備させたら、吸着力が上がって刀から離れにくくなったよ」
アヤはテイムしているスライム、スラゴンを誇らしげに掲げる。
「ああ…よかったな」
あれだけ男としてのプライドを犠牲にしたのに、見返りはスラゴンの粘着力アップだけか…でもアヤの竜刀コンボが完成に近づいたなら良かった。
「お、揃ってるわね」
するとタイミングよくワカナもログインしてきた。
「今日は冒険しよう、冒険!」
俺は勢いよく体を起こす。
ここ最近はスローライフを満喫していたから、久しぶりにモンスターと戦いたい。やっぱり男は黙って冒険だろう!
「ちょっと、忘れたの?」
何故かワカナは呆れている。
「今日は攻略組が自由界の大ボスに挑む日で、その実況配信を見るんでしょう」
「あ」
そういえばそんな約束をしていたな。
俺たちがコンテストで遊んでいる間にも、FOO最大の目玉であるダンジョン“自由界”の攻略は進んでいる。竜刀の活躍で越えられなかった難所を突破して、いよいよ50階層の大ボスに挑む時がきた。
掲示板はファッションなんかより攻略組の話題で大盛り上がりだ。
「大ボスに挑むのは昼の13時だったな」
せっかくリアルタイムで視聴できるんだ。
攻略組のお手並みを拝見しようじゃないか。




