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Lv37 新しい常連客




 ハンナリさんに呼び出されて、俺たちは和道の装に向かった。


 普通の客ならワールド広場に設置されている転移台に転移して表口から入店するんだけど、特別な客は裏口から直接転移することができる。この手段なら目立たないし時間短縮にもなるから便利だ。


「ハンナリさん、来ましたよ~」


 奥部屋に転移した俺たちはまず、ハンナリさんの定位置である店内のカウンターへ向かった。


「いらっしゃ~い」


 そこではハンナリさんは誰かと会話をしていた。


「…?」


 お客さんであろう水色髪のポニーテイルを揺らす女の子は俺を見てきょとんとしている。見た目からしてアヤと同年代かな?


「この子は最近お世話してる初心者で、有名ギルド“神々しき獣”に所属してるシズクちゃんだよ」


 ハンナリがそう紹介すると女の子は深々と頭を下げる。


「は、初めまして…シズクと言いますっ」


「ん…どうも」


 おっと、ついそっけない返事をしてしまった。相手が初心者とはいえ初対面の人が相手だとまだ緊張するな。


「なんで客がいるのよ」


 すると俺よりももっと失礼な態度のワカナが顔を覗かせる。


「しかもあの“神々しき獣”所属って…大丈夫なの?」


「この子なら大丈夫、ここであったことを無暗に言いふらしたりしないよ」


 何かと用意周到なハンナリさんがそう言い切るなら信頼しても良さそうだな。


「赤い名前…」


 するとシズクはワカナがレッドネームであることに気付いた。


「ここで起きたことを他人に喋ったら火あぶりの刑よ」


「ひぇ」


 ワカナがすごい形相でシズクを恐喝している。


「おどすな」

「おどすな」


 俺とハンナリさんで同時につっこんだ。ワカナは普段は優しくて気が回るのに、なんでたまに悪役キャラを演じるんだ。


「えへへ、最初に比べて賑やかになったな~」


 アヤは騒がしい店内の様子を見回して嬉しそうだった。





 しばらくしてシズクは店を後にした。

 あの子も和道の装の常連客になりそうだから、今後も会うことになりそうだな。


「そうだ、ヨウカさん」


 店内が俺たちだけになるとハンナリさんは話を始める。


「貰ったばかりの竜刀、いきなり取引に使ってごめんね」


「いえいえ、役に立ったようで何よりですよ」


 ハンナリさんに預けた竜刀・千本桜は取引によって二つの素材に変わった。その一つはワカナ専用の竜刀を作るのに使用して、残りはアヤの装備を作る素材になった。


「今日貰った新しい装備、着替えてみたよ!」


 アヤはいつの間にか新しい着物を装備している。


―――――――――

【和装・胡蝶蘭】

階級    一級作品

種類    着物

防御力   80

魔法耐性  300

耐久力   100

重量    20

属性耐性  地水火風雷氷


【スキル】

・華の舞

[速度が上がり、全てのモーションの硬直時間を短くする]

・蝶の舞

[回避モーションが特殊動作になる]

―――――――――


 白色と水色の鮮やかな花の着物だ。子供っぽいアヤでも上質な着物に袖を通せば、女性として魅力的に見えてしまうから不思議だよ。


「アヤの個性である速度を最大限に生かせるスキルを選んだけど、慣れるのに時間がかかると思うから気を付けてね」


「ありがとう、お姉ちゃん!」


 二人はいつも仲良し姉妹だから見ていてほっこりする。


「ワカナも魔法使い専用の竜刀があって良かったな」


「…まだ体力1で戦場に立つのが怖いけどね」


 ワカナは嫌そうに小さな竜刀を摘まんでいる。

 耐久力が心もとなくても、魔法力は前とは比べ物にならないほど上がっているはずだ。使っている内に手に馴染むだろう。


「これで三人の武具は揃ったな」


 俺が装備する竜刀・陽華と和装・七花繚乱。

 ワカナが装備する竜刀・暴魔と和装・紅葉。

 アヤが装備する竜刀・蜻蛉と和装・胡蝶蘭。


 装備の性能はほとんど完璧に揃ったけど、問題はそれらを使いこなせていないことだ。今のままでは平原を徘徊する強敵には勝てない。


 まぁそれは追々練習することにして…


「それよりハンナリさん」


「ん?」


「いいんですか?竜刀を保持してること、攻略組の人間に教えて」


 今回の取引で一番心配なのはハンナリさんだ。

 世間を賑わせている竜刀の制作者は今でも謎のままなのに、それをオークション以外の手段で所持していることが広まれば大事になってしまう。


「それなりに信頼できる人と取引したから大丈夫だよ」


 ハンナリさんはあっけらかんとしていた。


「もし攻略組が押し寄せるような事態になったら、ギルド設定の来客制限をつけるから」


「来客制限?」


「例えばレベル30以上のプレイヤーは入店できないとか、ブロック設定したプレイヤーは入れないとか」


「へぇ~」


 つまり迷惑行為の対策は万全にできるってことだ。

 流石は世界最大の大人気ゲームだな。


「それよりヨウカさん。呼び出したのは世間話をするためだけじゃないんだな~」


 ハンナリさんは手を合わせて話の流れを変える。


「実はヨウカさんに頼みたいことがあってね」


「俺に?」


 改まってなんだろう…

 初心者の俺にできることなんて限られてるけど。


「今日から開催されるファッションコンテストに協力してほしいんだ」

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