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■記録①■




 記録_




 ついに竜人のアバターが現れた。

 それは私のゲームが始まったことを意味する。 


 選ばれたプレイヤーはどんな奴だろう?


 男か女か。

 学生か社会人か。

 ゲーマーか素人か…

 



 願うことならゲームに無知な者であってほしい。


 このファンタジー・オーダー・オンラインは、攻略に執着しているだけでは大きな壁にぶつかる。最強に至るためのピースは回り道に落ちている…そんな“遊び心”を重要視したのがこのゲームの特徴だ。


 それを含めて私は二つの過ちを犯した。


 その結果こんな他人に全てを委ねるようなゲームをする羽目になってしまった。だからこそ竜人に選ばれたプレイヤーには、同じ過ちを犯してほしくない。




 私の体はもう自由に動かなくなってしまった。


 竜人に介入するどころか成長を見守ることすらできない…やれることといったら、こうして誰の目にも触れられないメッセージを残すくらいだ。


 …無力な自分が憎い。







 追記_




 偶然にも竜人のプレイを目撃できた。


 それはまさに偶然、奇跡の産物だ。

 これで私の退屈な日常も少しは盛り上がる。




 パーティーメンバーは三人。


 一人はマフラーをした小柄な少女。

 武器はやはり竜刀を使用している。クセの強い蜻蛉を選択しているが、体力の減らないクリアスライムに刺すことでコンボを維持している。面白いアイデアだが安定性に欠ける…もしあのスキルを習得すれば格段に強くなるが、それに気付けるかどうか。


 二人目は紅い着物の魔法使い。

 魔法威力向上に金満シリーズの装飾を選んだのは英断だ。戦況の判断力も優れていることから、かなり場数を踏んだプレイヤーなのだろう。しかし…まだあの竜刀を装備していない。竜刀の中には魔法の触媒となる物もあるのだが、癖の強い刀なので早急に装備して使い慣れておくべきだ。


 そして三人目…竜人のプレイヤー。

 武器は陽華を選択していたが悪くない。陽華のスキルは大ボスを倒すために大いに役に立つだろう。防具は見たことのないものだが、攻守を担える非常に使い勝手の良いものと見受ける。ただ技術や戦況の判断が未熟なところを見るに、恐らくゲーム初心者だろう。




 総評としては素晴らしいスタートと言える。


 だが点数を付けるなら…10点。

 もちろん100点満点中だ。




 たった数日にしてはよく成長しているが、FOOの世界はそんなに浅くない。ましてやレアアバターの竜人なら尚のことだ。


 戦闘の要であるスキル共鳴を使用していない。

 竜人のスキルも未解放。

 装備もまだまだ穴だらけ。


 くそ…指示厨になって、あの三人を強くしたい。


 それとあの竜人はメールボックスは確認したのか?

 一通目のメールには私からの大事なメッセージが届いているはず。早めに気付いて意識してくれなければ困るのだが…




 ………




 私は何も成長していないな。


 焦って強さに執着するとどうなるか、嫌というほど味わったというのに。今はただ思い思いにゲームを楽しめばいい…それで自ずと最強に至る道は開ける。




 それと竜人のアバターはやはり女だった。

 だが喋り方からして、恐らく男だろう。


 竜人の男アバターはデータが欠損してしまい、今は竜の平原を徘徊している。だから男であろうとも必然的に女アバターが選ばれてしまう。


 FOOで唯一無二のネカマか…


 果たしてどんな成長を遂げるのか。

 このゲームを最後まで攻略してくれるのか。




 今の私はただ静かに、ゲームのクリアを祈るのみだ。

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