Lv27 竜の平原(森)➂
俺たちは冒険を中断して休息をとりながら、俺のメイン武器である竜刀・陽華のステータスを三人で確認することになった。
―――――――――
【竜刀・陽華】
階級 一級作品
種類 太刀
攻撃力 480
切れ味 ×××
耐久力 200
重量 100
【スキル】
・陽炎の刃
[この刀による攻撃はガードできず、防御力を無視する]
・華竜の舞
[全てのモーションが特殊動作になる]
―――――――――
といっても大体の使い方や特徴については理解しているつもりだ。ただ最後のスキルだけが謎のままだから、二人の意見をもらいたい。
「あー…まさかとは思ってたけど、やっぱりついてるのね」
竜刀・陽華のステータスを見たワカナが納得したように頷く。
「ついてる?」
「ヨウカはこのゲームを始めた時からこの竜刀を愛用してるのよね」
「そうだけど…」
「なら気付かないか…ヨウカ、試しにアヤの竜刀を振ってみて」
ワカナがそう言うと、アヤは竜刀・蜻蛉を抜いて俺に渡してくれた。
「はい、ヨウくん」
「ああ…」
ワカナは何を考えているんだ?
取りあえず軽く刀を振ってみた。
蜻蛉は陽華よりも重量が軽いから、軽々と振り回わせ…
「…あれ?」
今まで通りの動きができないぞ。
武器種だって同じなのにおかしいな。
「このFOOには最強と呼ばれているスキルが三つあるの。そのうちの一つがその“特殊動作スキル”よ」
「特殊動作…」
「読んで字のごとく動作に影響のあるスキルで、戦闘で他人には真似できないテクニカルな動きができるようになるの」
「それはどうやって使うんだ?」
「もう使ってたのよ。これは自動で発動するパッシブスキルの一種で、ヨウカは無意識に“華竜の舞”の特殊動作スキルを活用していたの。氷山の時から、初心者の癖に妙な動きをするなとは思ってたのよ」
そういうことか…つまり俺が今まで上手く戦えてたのは、このスキルのおかげだったのか。ゲームの世界だからこれが当たり前だと思い込んでいた。
「でも、これがどうして最強なんだ?」
確かに動きは独特になるけど、ボスに大ダメージを与えられるようなスキルではないぞ。
「最初は希少なだけで大して評価されなかったんだけど、前に話した“最強のプレイヤー”が特殊動作スキルの評価を一転させたの」
最強のプレイヤー…
名前は確かミカグヤだっけ。
「このゲームはステータスを上げれば人並み外れた身体能力を得られるけど、所詮プレイヤーは人間だから限界がある。そんな人体の制限を無視した、超人的な動きを可能にするのが特殊動作スキルよ」
「そんなにすごいのか…今までこの刀を使ってきたけど、実感が湧かないくらいの変化だぞ」
「それはヨウカが下手なだけよ」
「言いにくいことをはっきりと…」
「いくら強いスキルでも使いこなせなければ発揮されない。もっとも扱いやすくてもっとも技術を要求するスキル、それが特殊動作スキルよ」
「なるほど…」
特殊動作スキルは竜の名に恥じない強スキルではあるけど、使いこなすには高い技術が必要不可欠。強い能力が備わっているのに、俺のゲームセンスはそれらを100%引き出せないのが惜しまれる。
ゲームの達人にこのレアアバターを託したいよ。
※
休憩を終えた俺たちは森の探索を再開させた。
「…」
俺は自分の動きが“華竜の舞”の影響を受けていると意識して刀を握るようにした。
「よっ」
襲い掛かるプルーントレントの攻撃を躱し、カウンターで竜刀を食らわせる。
流れるように体を動かせるから、攻撃後は刀を静止させるんじゃなく舞うように体を回転させればいいんだ。そうすることで攻撃後の硬直時間を軽減させ次の動作にも移りやすい。豪快な技や派手な動きもない、最小限かつ最低限の動きで身を翻す…なんだか達人になれたみたいで楽しい。
ついでに舞ったことで和装・七花繚乱の色を変えられるというおまけ付き。まぁ色を変えても和装の性能は未だに一つも分かっていないんだけど。
「ねぇヨウくん」
すると俺の戦闘を見ていたアヤに呼ばれた。
「なんだ?」
「前に平原で戦った時より、攻撃力がすごく上がってるよね。装飾品でも変えたの?」
「いや、前のままだけど…」
攻撃力が上がっている?
俺の装備は初めてアヤと冒険した時のままだ。変わっているとしたらレベルと、和装の色くらいか。前は確か…黄色にしてたっけ。
「ヨウカ、余所見は禁物よ」
考えていると背後からワカナの声と、プルーントレントの攻撃がやってきた。
「いてっ…この!」
反撃の斬撃でトレントを討伐した。
ここのモンスターは簡単に倒せるけど、攻撃を受けるとかなりのダメージを負ってしまう。氷山の防御力が高いゴーレムとは正反対のモンスターだ。
「ヨウカ、なんだか防御力が落ちてない?」
すると今度はワカナから指摘を受ける。
防御力が落ちてるだと?
「前はクリスタルゴーレムの攻撃を受けてもへっちゃらだったのに」
「それはゴーレムよりトレントの方が攻撃力が強いからじゃないのか?」
「三十レベル以上のボスの攻撃力が、ここの雑魚より低いわけないでしょ」
「…それもそうか」
確かワカナと冒険をした時、和装の色は氷山の雰囲気に合わせて青にしてたっけ。そして今の和装の色は赤…
…まさか。
試しに俺は和装を青色にして、もう一度同じモンスターからの攻撃を受けてみた。
「…!」
さっき受けた攻撃よりも明らかにダメージは少ない。
「はぁ!」
カウンターでさっきと同じ攻撃をトレントに食らわせてみたが、倒しきれなかった。和装を赤色にしていた時よりも攻撃力が下がっている。
しかもかなり極端に変化していた。
「わぁ」
「なるほどね」
それを見たアヤとワカナも気付いたようだ。
この和装・七花繚乱は赤色にすることで攻撃力が上がり、青色にすると防御力が上がるんだ。すごく分かりやすくて単純で使いやすい能力だな。
少しずつ分かってきたぞ…この竜刀と和装の使い方が。
どうやらセンスがないと悲観するのは早いようだ。まだ俺の成長は止まっていない、他にも工夫できることはきっとある。




