表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/43

Lv22 竜人の育て方




 俺は現実の世界に戻っても、頭の中はゲームのことでいっぱいだった。


 こんなネカマの俺が仲間を作れて本当によかった。


 多分だけど年下のアヤは、物腰柔らかでフレンドリー。右も左も分からない俺を親切にサポートしてくれた。姉であるハンナリさん共々、今後ともお世話になりそうだ。

 そして年上のワカナさんは、自由界攻略にも参加したことがあるベテラン。冒険の時でも頼りになる存在だ。ネカマの件で一悶着あったけど、きっと仲良くなれるはずだ。


 頼もしい仲間を作れて、オークションという山場を乗り越えて、ようやく心に余裕ができたぞ。


 ………


 心に余裕ができたからこそ、今更になって思う。


 この竜人のレアアバターとは何なんだ?


 優れたステータスに固有のスキル、そして世間をあれだけ騒がせる竜刀を生み出し、自分専用のワールドまで所有している。いくら希少な存在だからって、ここまで優遇させる必要があるのだろうか。

 ゲーム経験の長いハンナリさんやワカナさんも、そのことについて不可解に思っていた。一人のプレイヤーを特別待遇させてしまうのはバランスの崩壊に繋がり、運営にとっても不利益なはずだって。


 運営はどんな意図があって俺にレアアバターを渡したのか…


 …と、あれこれ考えても憶測にしかならないんだよな。

 

 竜人に何らかの役割があるなら、その時が来るまでやりたいようにゲームを楽しめばいい。それ以上のことは考えないようにしよう。





 オークションが終わった次の日。

 俺は早朝にログインした。


 この連日ずっとゲームばかりしているけど、引きこもりじゃないぞ?俺は高校一年生の学生で、今は夏休み中なんだ。友達からこのファンタジー・オーダー・オンラインはやった方がいいと勧められたから、俺は全財産をはたいてFOOを遊ぶ環境を整えた。元を取るためにと、今は全力でゲームをプレイしている。


「二人はまだ来てないな…」


 竜の里の拠点にはまだ誰も来ていない。

 ならアヤとワカナさんが来る前に、自分のステータスでも確認しよう。


――――――――――――――――――――

名前  [ヨウカ]

性別  女

種族  竜人

職業  鍛冶【竜刀】Lv.2

    調合【竜薬】Lv.2

    

【ステータス】

Lv    29

体力   1000

魔力   50

筋力   150

持久力  10

速度   5

運    5

ステータスポイント(105)


【スキル】

・竜化 Lv0

・竜の瞳 Lv1

・竜鱗生成 LvMax


【装備】

武器  竜刀・陽華

防具  和装・七花繚乱

装飾  なし

――――――――――――――――――――


 これが今のステータスだ。

 ワカナさんとの冒険でレベルが上がったし、ちょっとステータスポイントを振ってみよう。


 氷山の戦いで俺もレベル以外に得るものがあった。冒険の中で何が足りなくて何が必要なのか、俺なりの回答は出している。


「もう少し速度が欲しいよな」


 あの鈍重そうなクリスタルゴーレムに後れをとって、ワカナさんの魔法の妨げになってしまった。それにアヤほどじゃなくても、もっと素早くキビキビ動きたい。


 この前、ハンナリさんからステ振りについての助言をもらった。


“装飾品は考慮しないで、自由にステータスを振っていいよ。ただ必要のないステータスにポイントを振るのはオススメしないな。竜刀を駆使した近接タイプのヨウカさんにとって、魔力と運は不用ね”


 前衛として次に上げるべきステータスは体力、持久力、速度だな。


 魔法も使ってみたい気持ちはあるけど今は保留だ。まずは竜刀を使いこなし、アヤとワカナさんの足を引っ張らないことを目標にしよう。





 よし、ステ振りはこんな感じだな。

 細かい数値は戦闘の中で微調整するとして、次は竜人アバターが持つスキルに注目してみよう。


――――――――――

【スキル】

・竜化 Lv0

 [使用すると竜に変身する]

・竜の瞳 Lv1

 [全てを見通す可能性を秘めた瞳]

・竜鱗生成 LvMax

 [一日一枚“竜の鱗”を生成する]

――――――――――


 まず竜鱗生成については考えなくてもいい。

 一日一枚“竜の鱗”という素材を生み出し、それが竜刀や竜薬の素材になってくれる。他にも用途はあるかもしれないけど、今は深く考えなくていいだろう。


 次は竜化についてだ。

 試しに発動してみたけど、何も起きなかった。多分だけどレベルがゼロだからだと思う。どうやってレベルを上げればいいのか条件は不明だから、これも考えるのは保留だ。


 そして竜の瞳だけど…これならゼロじゃないから、発動できるかもしれない。


“竜の瞳”


 発動できたかな?

 えっと…瞳だから、視界に何らかの変化があるはず。まずは周囲を見回してみよう。


「…」


 変化が分からない。

 うーん…相変わらず分からないことだらけだ。全てを見通す可能性とかふわふわした説明じゃなくて、何が見えるのか明確に書いてほしいな。


「おはよう、ヨウくん」


「来たぞー」


 首をひねっているとアヤとワカナさんがやって来た。


「あれ?ヨウくんの目、いつもと違うよ」


「…ほんとだ、なにそれ?」


 二人は俺の目の変化に気付いたようだ。

 変化があるってことは、スキルは間違いなく発動しているんだな。


「竜人のスキルの一つ“竜の瞳”を試しに使ってみたんだ」


「ふーん…」


 何故かワカナさんは訝しむような視線を俺に向ける。


「じゃあアヤの下着の色を当ててみてよ」


「……いや、そんな透視能力じゃないぞ」


「そう、よかった」


「…」


 ネカマだと知ってから、ワカナさんに警戒されてる気がする。


「正解は上下とも白でした」


 そしてアヤが答える必要のない回答を教えてくれる。


「アヤ…そこは女性として慎みなさい」


 そう言ってアヤの頬を優しくつねるワカナさん。

 下着の話を振ったのはワカナさんだろ……なんて、口に出しては言わないけど。


「それより今後の話し合いをしましょう」


 適当に話を切り上げ、ワカナさんは拠点の和室に向かった。


「ん?」


 今、ワカナさんの姿がぶれて見えたような気がする。

 なんだこの視界のぼやけは。


「…なに見てんの。実は本当に透視能力があるの?」


 ワカナさんは足を止めて俺を怪しむ。

 今はぶれて見えない…気のせいか?


「ち、違うって!」


 ひとまず竜の瞳を解除しよう。

 さっき見えたものが少し気がかりだけど、結論を焦ることはない。これから適度に使用していけば分かってくるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ