Lv21 今後の活動方針
こうしてオークションは幕を閉じた。
結果は端数を除いて、こんな感じだ。
竜刀・日炎
20000000G
減の竜薬×2
1000000G
合計で二千二百万もの大金が手に入ってしまったぞ。これほどの大金があれば、竜の里の素材屋で売っているアイテムを買いつくしても釣りがくる。
「さあヨウカ!」
するとワカナさんが勢いよく手の平を突き出してきた。
「さっきのペナルティよ。有り金を全部渡しなさい」
「セリフが悪役だな」
「罪を犯したのはそっちでしょ」
そう言われると言い返せない…今後もしばらく、ワカナさんには逆らえないな。
「じゃあどうぞ」
「あら、素直ね」
「あの指輪もあるし、この大金はワカナさんが持ってた方がいいと思ってたから」
ハンナリさんから渡された金満の指輪。
それは所持金があればあるほど魔法の威力が強くなる装備だ。その指輪をはめたワカナさんが大金を所持したら、ただでさえ強力な豪炎華がどれだけ強化されるのか見てみたい。
「それに許されないことをしたのは事実だし、こんなゲーム通貨じゃ許してもらえないだろうけど…」
こうして事故を起こして再認識した。
やっぱりネカマって悪いことなんだなって。
「いや…そんな思い詰めなくても」
俺の様子を見たワカナさんはやりづらそうに頬を掻く。
「取りあえずお金は預かるけど、買いたいものがあったら遠慮せず言ってね。奢るから」
「お、おう…ありがとう」
やっぱりワカナさん、根はいい人なんだよな。
※
「ふぁ~」
アヤが大きなあくびをする。
「ふぁ…そろそろ解散するか」
あくびが移ってしまった。
もう深夜零時を過ぎてるし、今日はここまでだな。
「あ、ちょっと待って」
ログアウトしようとしたら、ワカナさんに引き留められた。
「解散する前に聞きたいんだけど、今後の予定ってあるの?」
今後の予定…
目先の目標としてまず思い浮かぶのは、あれだ。
「ワカナさんとハンナリさんの和解」
「そ、それは私の問題でしょ!」
机をバンバンと叩いて怒るワカナさん。
うーん…あんまり急かすのは逆効果みたいだな。
「私が聞きたいのはこの集まりの活動方針よ!いくらエンジョイ勢であっても、目的なき日々なんて不毛なものよ」
「活動方針か…」
当初の俺は最新のゲームを適当に楽しむつもりでこのゲームを始めた。そしたら竜人のレアアバターという稀有な存在になってしまい、自分の身の振り方が分からなくなってしまった。
…今の俺の考えを二人に相談してみようかな。
「俺ってさ、やっぱり自由界の攻略に参加するべきかな?」
自由界の攻略が難航しているのに、レアアバターである俺が攻略に貢献しないのはどうなんだろう。せめて支援組に加わって攻略の助けになるべきじゃないかな。
「…いくらレアアバターだからって、ド素人のヨウカが参戦したところで攻略組は扱いに困るだけよ」
「うぐっ」
「このゲームは技量が重要だって、さっきも言ったでしょう」
ワカナさんから容赦のない意見を貰う。
氷山のダンジョンに挑んだ時、ワカナさんの足を引っ張ってばかりだったからな。
「そもそも珍しい物を手に入れたからって、それで責任感に駆られる必要なんてないわよ。そのアバターはもうヨウカのものなんだから、自分のものをどう使おうが自由でしょ」
…確かにその通りかもしれないけど。
「ヨウくんはゲーム初心者なんだから、自分のやりたいこと優先で遊べばいいと思うよ」
次にアヤが眠そうに目をこすりながら続ける。
「それにオークションを通じて竜刀を攻略組に渡してるんだから、ヨウくんは攻略の力になれてるよ」
「…そっか、そう捉えられるか」
下手に参戦しないで、作った竜刀や竜薬を攻略組にばらまくだけで十分なのかもしれない。それならプレイスタイルくらい、自由に決めても許されるんじゃないか?
「なら、この竜の里を隅々まで探索するなんてどうだ?」
竜人である俺の課題は山積みだけど、中でも三人で取り組めるものといったらこれだ。
「いいね!この隠しワールドにどんなものがあるか、わくわくするよ!」
アヤは嬉しそうに賛成してくれた。
「ここの探索ね、いいじゃない。他のプレイヤーがいないから気が楽だわ」
レッドネームであるワカナさんにとっても、三人しかいない竜の里は居心地のいい環境だ。
「じゃあ明日もここに集まって、この竜の里を探索しよう」
「わかった!」
「了解」
こうして俺たちの活動方針は固まった。
最初の目標は、この竜の里を徹底的に探索することだ。
他のことは成り行きに任せてのんびり遊べばいい。
気が向いたらワールド外へ遊びに行ったり、武器を制作してオークションに出品したり、攻略組の活躍を観戦したり、開催されるイベントに参加したり、ハンナリさんのギルドに顔を出したり…
俺のゲームライフは、こんな感じでいいんじゃないか?




