セレブラム

「戸波くん、君も、そろそろウチの仕事になれた頃だろう。
　呼びだした用件だが。これから君には、新しい仕事をやってもらう。
　君には、認知症の治療薬をつくってもらいたい。いまウチで、アルツハイマー病の新薬を開発しているチームの指揮をまかせたいんだ。
　なんだって、できないだって？　自分には専門的な知識や経験が欠けているから？　そんなことを心配しなくてもいいよ。
　開発自体は、チームの優秀な面々がやってくれる。君は、彼らがあげる報告書に目を通して。開発チームが間違った方向にむかわないように、彼らに定期的に指示をだしてもらえばいいんだ。
　今度はなんだね？　指示をあやまって会社に損失をだしてしまったときの責任を負えない、だって？　大丈夫だ。私が君を全面的にバックアップするから。
　このプロジェクトには、製薬会社であるウチの社運がかかっている。
　成功するまで、時間をかけて、人材と資金を投入して、じっくりとやってもらいたい。
　求められている新薬が完成すれば、それはまちがいなく、会社に大きな利益をもたらす、ウチの看板商品になるはずだ。
　君が開発を続けるあいだは、君のその立場は保証される、と思ってもらっていい。
　君には期待しているよ。では。さっそく、とりかかってくれたまえ」