白い仔猫
歩く、歩く、歩く
ざわざわと騒がし街を
独りぼっちで 歩く、歩く、歩く
頭の中で 色んな思いがぐるぐる回る
歩いても 歩いても 答えは出ない。
気づけば 昔よく遊んだ公園だった
ブランコに 揺られながら 空を見上げ
ため息を はぁ~っとついて
『もう消えてしまいたい、全てが消えてしまえばいい』とつぶやき一粒の涙を流した。
その時 辺りが真っ暗になって 世界が急に何も見えなくなった。
空間が歪んだような感じで
自分だけが この世界で異質なものとして浮いている気がする。
驚いて辺りを見まわすと 目の前には 白い小さな小さな仔猫が座っていた。
『あっ、子猫』
キラキラした疑いの無い美しい眼で
こちらを見ている。
『どうしたの?お前も一人?』と声をかけると
仔猫は 小首をかしげ じっとこちらを見ている。
『お母さんは?』と話しかけると
また首をかしげ
私を 不思議そうに見つめる。
『お母さんはどこに行ったの?』
答えが返って来ない事は分かっているけれど ニッコリと笑いかけてみる。
伸ばした私の手を仔猫は するりと横に受け流した。
『おかあさん?』と仔猫が話しかけてきた。
驚いて後ずさり、まわりを見回すけれど仔猫しかいなかった。
『えっ、ちょっと待って喋れるの?』と また少し後ずさる。
『ねぇ、おかあさんって なに?』と
仔猫は また繰り返す
でも 不思議と怖さはなくて何故か仔猫が心配になった。
『うーん…お母さんは… 』
そんな事考えたことも無かった
いつも 当然のように側にいて 口煩く
関わってくる。
毎日 家族の世話と仕事をして忙しそうにしている。
私の健康や将来を心配して いつも怒ってる。
つい『ほっといて、何も分からないくせに!』などと反抗してしまう。
仔猫には 何と言えば分かるかな?
うーん、『そうだ 美味しいご飯をくれる人?』
仔猫は 不思議そうに『ごはん?』と首をかしげる。
『ご飯も分からないかぁ~』
うーん、『あっ、おっぱいとか?』
『ほら 白くて甘くて牛乳みたいに美味しいやつよ』仔猫は まだ不思議顔をしている。
『竹輪とか?美味しいのよお魚が入ってるの』
野良猫が竹輪を器用に折り畳んで走っている姿を思い出してそうつぶやいた。
仔猫は また首をかしげて すまなそうにうつ向いた。
『あなた ずっとここに居たの?』
仔猫は 首を横にふって うつ向く、
じっと仔猫を見つめていると
私の頭の中に 段ボール箱が浮かんだ
中には 真っ白な 大人の猫と兄妹の仔猫が数匹丸まっている姿が見えた。
仔猫以外はぴくりとも動かない
ああ、 この子は きっとここに捨てられていたのだろう
まだ 眼も見えない内にお母さんと兄妹と一緒に
『かわいそう…なに?』
『みんな かわいそう いう』
『可哀想か…』
仔猫に お母さんや大好きや楽しいより先に
『かわいそう』を教えたく無いと反射的に そう思った。
『そんな事 まだ知らなくて いいよ』と
少し怒った声で 誰に言うでもなく小さく呟いた。
気がつくと 元の公園に立っていた。
辺りは すっかり夕暮れで
足元には 小さな白い仔猫が座っていた。
手を伸ばし 抱き上げて
『一緒に 帰ろう…』と優しい声で話しかけると
仔猫は 小さな声で『ニャー』と答えた
このお話は 私が初めて『小説家になろう』に投稿したお話です。
まず このお話を読んで下さってありがとうございました。
主人公と仔猫の出逢いの物語
好きになって貰えたら嬉しく思います。