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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1章 七尾奏音 色欲編
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裏路地

 記者会見が終わった次の日に健介は自分の事務所に息子、宇土正真(うどしょうま)と加藤を呼び出していた。


「お前たちには半年間、学校を休んでもらう。もう学校にも連絡してある」

重苦しい声で健介は宇土と加藤啓介(かとうけいすけ)に言った。昨日の会見とは違う迫力があった。


「なんでだよ!親父なら揉み消せるだろ!マスコミとかに圧力かければ済む話じゃねぇかよ」


 加藤は黙っていたが、宇土は激昂した。普段の健介なら正真の言う通り圧力をかけてもみ消していただろう。だが既に燃え広がった火は消すことができない。鎮火するまで待つしかない。それまでは火の粉が飛んでこないように対策を取らないといけない。


「録音データが世の中に漏洩したことで、揉み消すことは無理になった。あそこまで証拠があるのに、揉み消してしまえば。民衆は真実だと言っているみたいもんだと騒ぎ立てる。だから、記者会見でも言った通り犯人を仕立てあて、いじめ撲滅政策をとる羽目になった」

「は?いじめ撲滅政策ってなんだよ!犯人を仕立てる必要なんてないじゃないかよ。録音データを流したあいつを逮捕しすればいいじゃないかよ!」

「はぁ……ちょっとは自分で考えろ」


 思ったことをそのまま口に出す息子に呆れて溜息をついて、仕事へと戻っていった。


「ちょ、親父!どこ行くんだよ!クソ、意味わかんねえよ!」

「待てよ!正真!」

正真は事務所のドアを乱雑に閉めて出ていった。加藤はそんな正真を追いかける。


「なぁ!啓介……お前は納得できんの?」

「俺も……納得行かねえけどよ、怖ぇんだよ、お前の父さん」

「はァ?あんなクソジジイのどこが怖いんだよ」

ビビッている啓介を正真は鼻で笑った。


「だってよ、外では誰にでも親切なのに、あんなに態度が冷たくなるんだぜ…何考えてるのか全然分からない」

「何考えてるのか分からないのは俺も同じだけどよ、あんな老いぼれだせ、恐れるもんなんて何にもないだろう」


 加藤は黙った。正真の意見に賛同したからじゃない。逆らえないから黙った。小学生の時からの付き合いだけど正真には逆らえなかった。いつも隣に居るけど、正真には親父さんと同じものを感じ取ったから。もし逆らって今の立ち位置がなくなってしまうのが怖かった。今もビクビクしながら怒らせないように接していた。


 正真は反対に苛立ちを感じていた。親父は確かに怖い。でも啓介みたいにビビるほどではない。だっていつも俺の言う通りにいじめだって揉み消してくれたし、結局自分の子が一番だと思っているはずだから、何があっても親父は俺の味方をしてくれる。でも今は親父が言うことを聞いてくれないから、他の策を考える必要がある。一人でゆっくりと考えたい。


「俺ちょっと寄りたいところあるから」


 正真は啓介と別れ一人で考えながら目的も無く歩いていた。ふと視線を動かすと路地裏で男二人組と女子高生が揉めていた。


「離せよ!触んな!キモイ!」

「いいじゃん減るもんじゃないし、俺たちと一緒に遊ぼうぜ!」

男たちは女子高生の腕を強く握って人に見つからないところに連れていこうとしていた。宇土は放って置こうかと思ったが、考え事をしている今、耳障りでしょうがなかった。だから、しょうがなく助けることにした。男たちの方に向かっていった。正真は男一人の肩を叩き、振り向いた瞬間に頬に1発いれ、もう一人の腹に蹴りを入れてノックアウトさせた。こういう奴には力の上下関係を教えてやることが一番の解決方法だ。頬を殴ったやつは顔を抑えながら、殴りかかりに来たが、正真は軽く躱し、カウンターを入れて終わらした。


「チッ、もう終わりかよ……つまんな」

「あ……りがとう」

「何が?」

「助けてくれたんじゃないの?」

「俺が助けた?ちげぇよ!ちょうどむしゃくしゃしてたから殴っただけだよ。勘違いすんな」


正真はそういうと路地裏から出ようとしたが、女は正真の前に出た。


「あ、あの、名前教えてくれる?お礼がしたいから…」

「知らねぇ奴に教える訳ねぇだろ」

「じゃあ、これは返さなくていいの?」

そういうと正真の顔の前で携帯を見せた。


「あ……俺のスマホ。返せ、ってかいつの間に?」

「名前教えてくれるまで返さない…」

「は?うざ……宇土、宇土正真だよ。これで満足?」

正真は頭を乱暴に掻いて答えた。正面にいる女を助けなければ良かったと後悔した。


「宇土正真ね、わかった!覚えた!」

「ほら、スマホ早く返せよ!」


正真は、女からスマホを取ろうとしたけど返して貰えなかった。


「まだ、ダメ!お礼したいから、連絡先教えて」

「はぁ?ってか、今、お前が携帯持ってんじゃん!」

「あ、そうじゃん!私ってアホだね」

女は笑いながら正真の携帯に自分の連絡先を入力して、宇土に携帯を返した。


「あ、私のLightsの名前七尾奏音(ななおかのん)にしてあるから。連絡してね!」

「なんで、連絡なんかしなきゃ行けねぇんだよ」

「それはね!まだ正真君に携帯以外で返してないものがあるからだよ」


そういうと七尾ニヤッと笑って裏路地から去った。


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