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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1.5章 七尾奏音 色欲復讐編
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動揺

「まだ決行日まで3日はありますが、もう準備は整ったんですか?」


佐伯さんはニヤッと笑う。


「言っただろう。あの日、明日には決行出来ると。それに今の君だったらきっと望む結果になると思うよ。いずれ」


 いずれ……とはどういう事だろうか?


「いずれってどういう意味ですか?」


 俺は首を傾げながら聞くが、佐伯さんは「そのうち分かるよ」としか言ってくれなかった。


 それからDreamplanの主の内容については俺は聞けないみたいだからKに変わって欲しいと言われた。直後Kの声が聞こえてきた。「まだお前には教えられない」と言われ、直後暗闇に落ちる感覚を味わいながら意識が無くなった。


 佐伯斗真

佐藤君の雰囲気が変わった。Kに入れ替わったのだろうか?

 

「やぁ、佐伯、アイツは眠った。全ては整った。仕上げと行こうか」


 間違いない。この喋り方、Kだ。やっと動き出す計画に胸を高鳴らせずにはいられなかった。


「やっと、始まるんだね。長かった。ここまで来るのに5年もかかった。この半年間で日本が大きく変わるだね。楽しみでしょうがないよ。国を巻き込む復讐劇が始まる」


目尻から熱いものが流れてくるのがわかった。Kがコーヒーを飲み一息つく。


「あぁ、やっとだな」


 Kは静かに呟く。感慨深そうに遠くを見つめる。そして僕らは夜まで夢の話をした。


佐藤十思

部屋に広がる蒸し暑さで目が覚める。やっぱり記憶は無い。Kに変わってから約半日は意識を失っていた。


 布団の横に置いてある携帯を取ろうと思い視線を向けると携帯と、Dreamplanが書かれているノートがあった。携帯はいつも置いてある。がノートは置かないで押入れに閉まっていたのはずだ。Kだろうか。きっと、これを見ろと伝えているのだろう。


パラパラとめくる。不思議なことに黒く塗りつぶされていたはずの部分が一部読めるようなっている。書いてあった内容は、七尾奏音が舞を自殺に見せけて殺した理由が書かれている。計画の詳細が書かれている場所はまだ黒塗りのままだ。七尾奏音の復讐の仕方は大まかに書かれている部分は今まで通りに読めている。


「俺は間違えていたのか」


ノートを閉じる。自分の思い、行動を疑ってしまうような感覚が襲い、やるせない気持ちが漂う。


暑さなんて忘れてしまうほどの堕落を味わう。それほどまでに事実は悲劇的だった。悲愴な気持ちに浸かっているとタイミングを見計らったかのように携帯から着信音がなる。ディスプレイには予想したとおりに、佐伯さんの名前が表示されていた。


  電話に出ると妙に興奮したような声で佐伯さんは、廃校に来てくれと言って電話を切った。


 佐伯さんはこの真実を知りながら復讐をしたいと思っているのだろうか。とても人間だとは思えない。それに場所も場所だ。廃校という言葉を聞くと吐き気を催す程の嫌悪感で胸がいっぱいになる。舞と舞の母親、奈美さんを殺した場所。今でも鮮明に覚えている。


 佐伯さんはそこで復讐をしようというのだろうか?事実を知る前の俺であれば、もっとましな気持ちになったのかもしれない。でも今となっては躊躇さえもしてしまいそうだ。


 ここになって気持ちがぶれ始めた。それ程に衝撃的だった。でも、本人から真実を確かめるためにも廃校に行った方がいいのかもしれない。


 蒸し暑さが残る部屋を後にして目的地へと向かう。最寄りまでの駅に向かう時に、舞とユートピアランドに行こうとした朝のことを思い出す。甘く純粋な気持ちを踏みいじられた感覚が蘇る。反吐を吐きたくなる程の悔しが胸をかき巡る。


 幸いなことにあの日はまだ寒かった。だから感覚までは蘇らずに済んだ。もし決行日が秋や冬だったらと考えると今よりも酷い気分になるだろうと容易に想像出来た。より繊細に思い出してしまっただろう。


 垂れる汗を額で拭い。駅まで着くと、改札をくぐり廃校がある場所へと向かう。当時は車で廃校まで向かったんだっけな。だから電車で行くのは初めてだ。


 電車の中でも、鞄からノートを取り出してもう一度読み返す。俺は佐伯さん事務所で七尾奏音と自分の接点があることを知った。いや思い出したの方が意味は合っているだろうか。


 七尾奏音は幼少期の頃に父親から酷い虐待を受けていた。父親を酷く憎んでいた。誰もが彼女の虐待のことを知っていたはずなのに助けなかった。神様でさえも助けることは出来なかった。


 俺はまだこの時、まだ小さな子供で、自分も同じく虐待をされていたので自分のことでいっぱいだった。しょうがないと言えばしょうがないのだろう。


 だから、これを知ってから、七尾奏音が舞を殺した理由も分からなくは無い。俺も七尾奏音と同じ道を今辿ろうとしているのだから。


 舞は直接は関係ないとしてもだ。あの時救ってくれなかった人が楽しそうに過ごしていたら壊したくなる。俺は七尾奏音を殺すことができるだろうか。だからといって許すことも出来ない。舞は、七尾奏音のことを信頼していたし、親友だと思っていたんだ。それなのに、無惨に犯されて、母親も殺され、精神的に死んだ後に、肉体も殺されたのだ。舞は二度殺された。


 許せる訳が無いだろう。

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