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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1.5章 七尾奏音 色欲復讐編
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告白

 破られた箇所の前ページから読み取っていくことにした。時間をかけて読んでいると変に感じたことがあった。

 

序盤、白虎は白色の人魂の姿で八百万の神々と黄泉の国や天界へと冒険をしていたわけなのだが。姿が戻る絵が抱えれているところで、神々は白虎の姿を見て驚いていた。

態度も(うやうや)しいくなっていた。驚くのは分かるが、恭しいくなるのはどうしてだろうかと不思議に感じた。最初に読んだときは綺麗な純白でこうごう(神々)しかったからだと思っていたが、違ったようだ。


 それが分かったのは白虎の姿に戻るのが描かれている絵のページだった。天照大神(アマテラス)が白虎の姿を見て『紅虎(べにとら)』と名前を間違えたのが描かれていた。

 

紅虎の名前も天照大神の赤いオーラと同じ赤色で描かれていたので同化していてぱっと見だと分からない。文章である。


 神々の態度が恭しいくなったのも、白虎の姿をみて驚いたのも分かった気がした。もしかすると以前の白虎は神々を襲っていたのではないだろうか。白の虎だったのが血に染まり赤の虎に代わってしまった。

 

そして、紅虎として恐れられていたのではないのだろうか。そういう風に考えれば辻褄(つじつま)が合う。


 これが隠し部屋へのヒントとなっているだろうか。部屋の外に掛けられているのは白虎は現在の姿。ならば、以前の姿は。


 俺は本棚の部屋を出て、壁に掛けられている白虎の絵をひっくり返した。


「あった、、」


 案の定、紅虎の絵が描かれいた。だが前の白虎の絵と少し違った。森林が生い茂っている中に泉があり、紅虎はそこに入りながらこちらを睨んでいる風景が描かれている。

これも何かのヒントなのだろうか。絵を壁から外してテーブルの上に置き、観察してみた。本のときのように絵の中に文字やヒントが隠されているかもしれない。


 数分かけて見たが文字が隠されている部分などは無い。


 俺は絵を持ち上げて照明に照らしても見たが文字が透けて見えたりもしなかった。だが腕を下ろそうとした時に奥にある青龍の絵に視線が止まる。


 青龍は東を守る神獣。そう言えば最初に俺が言った思った言葉『これじゃあ四神じゃなくて二神』()()()…にしん、何か引っかかるな……にしん……


「そうか、、ニシンだ」


 紅虎の絵をテーブルに置いて青龍の絵に近づく、そして、絵をひっくり返した。だが、そこには何も無かった。


「おかしい。ニシンは(にしん)だから何かあるはずだと思ったんだが。」

 鰊は東の魚、そして水も関係している。俺の考えが外れたの。それか、やはり紅虎の絵にヒントが隠されているのか?


 もう一度紅虎の絵の絵を取り、描かれているものを声に出してみる。


「泉……森林……紅虎…………泉、森林、紅虎、……自然……動物……ダメだ……全然分からない……」

 頭を掻きむしる。どう考えてもヒントが隠されているとは思えない。でも、何かこの絵には隠されているはずだ。でなければ、わざわざ風景なんて書かないだろう。表の絵は風景が描かれていないのだから。


 絶対に何か隠されているはず……直感的にそう思った。


「やぁ、お困りのようだね。そんな君にヒントのヒントをあげようか」

 

 プロジェクターのスピーカーから佐伯さんの声がした。今度は画面は夜景のままだった。


「ヒントのヒント?」

「そう!ヒントのヒント……紅虎の絵はどこに描かれてる?」

「は?そんなの森の中じゃないんですか?一番最初に気づきますよ」

「じゃあ、引き続き頑張ってね!」

 

 佐伯さんはそう言ってスピーカーを切った。


「なんだよ!全然ヒントになってないじゃないか!そんなの一目見ればわかる…………ん?森の中………」

「そうか!だから、ひっくり返しても無かったのか!」


 ()にあるんだ……


 もう一度青龍の絵を手に取り、ゆっくりと額縁を外した。そこには行ったことがある風景と少女と少年が楽しげに遊んでいる風景が描かれていた。


「ここは……恵沢神社の……舞と行った広場だ……」

 

 懐かしい思い出にポロポロと涙が流れ、涙と共に激しい頭痛に襲われる。心と頭の痛みで俺は絵を持ったまま倒れた。


 痛みの中で俺は二つの思いが交差していた。後悔と幸福感、相容れない二つが(さざなみ)のように押し寄せてくる。


脳が勝手に舞と楽しかった思い出をフラッシュバックする。夏祭りで一緒に食べた綿菓子、花のように美しかった浴衣姿。そして、もう聞くことは無い舞の優しい声


「舞……まい……会いたいよ……もう一度逢いたい」

 

 もう舞と会えないという悲しさ、救えなかった後悔で涙が止まらない。床に水溜りを作る。


「救えなくて……ごめん……」

 

 胸が張り裂けそうなほどに苦しい。心が悲鳴を上げている。もう耐えれそうにない。耐え難い苦痛に俺の意識が混濁(こんだく)していく。


「ジッシ君!こっちこっち!速く行こう!」


俺は少女に手を引かれながら、森の中を走っている。森を抜けると(ひら)けた場所に出た。タンポポが広場を覆っている。風が吹き、綿毛が空高く舞い上がる。まるで、龍が天高く舞い上がっているかのようで感動的な光景だ。隣にいる少女は俺の頬にキスをする。


そして、耳元で囁いた。


「大好き……」

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