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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1.5章 七尾奏音 色欲復讐編
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かくれんぼ

 夕焼けで照らされた東宿ビルディングの中に入る、使用禁止と貼り紙が貼ってあるエレベーターに乗り込んだ。以前に貰った名刺に暗号が書いてあるので、書いてある通りに入力する。番号を打ち終わるとエレベーターが大きく揺れ動き出す。


 揺れるエレベーターの中で思い悩んでいた。俺は佐伯さんを信用仕切ることはできるのだろうか。昨日の光景がフラッシュバックする。


 地面に這いつくばって叫ぶ佐伯さんは復讐に飢える餓鬼さながらだった。あれだけの復讐心がある人ならば、簡単に俺のことを裏切るかもしれない。俺は本当に佐伯斗真を信じていいのだろうか


 決心がつかないままエレベーターは開いてしまった。だが、佐伯さんの姿は見えない。エレベーターと部屋は繋がっている。だからリビングにいるならば、直ぐに分かるはずなのだがいない。昨日となんら変わらない夜景が見える高級レストランさながらの部屋の中央に置いてある真っ赤なテーブルクロスが引かれたテーブルに手を(おもむろ)に置き部屋全体を見る。やはり佐伯さんの姿は見えない。どこにいるのだろうか、彼は命を狙われているというのに外出しているのだろうか。


「じゃん!僕はここで~す!」


 驚いて振り返ると夜景が映っていたプロジェクターには佐伯さんの顔が映し出されている。何だか巨人に食われる人間みたいだ。


「何やってるんですか?」


 俺は狂人もとい巨人に尋ねた。


「何って――かくれんぼだよ。君も幼稚園生の時に恵希公園で希くんとやってたじゃないか。ほら、懐かしいだろ。今度は佐藤君が鬼だ。僕を探してごらん」


 プロジェクターの画面が夜景に切り替わる。俺は啞然とした。何で佐伯さんが俺も知らない過去のことも知っているのだろうか。それともはったり、いや、あの時の夢でみた少女が高橋さんであるならば事実かもしれない。


「もういいよ~」


 プロジェクターのスピーカーから声がした。とりあえず考えるのは本人を見つけてからにした。そうしないといつまでも謎のままで終わりそうだと思った。


 とりあえず、屈んでテーブルクロスをめくり覗いてみる。案の定佐伯さんは居ない。大の大人がこんなところに隠れるわけないかと諦めて腰をあげようとした。一瞬視界の端に何か見えた。気になり、もう一度屈んで目を凝らしてみる。


 ちょうどテーブルの真下ぐらいに何かが落ちている。身体をテーブルの下に入れ、拾う。落ちていたのは画用紙だった。裏返してみると絵のようなものが描いてあった。狭いテーブルの下を抜け出し改めて明るい所で見てみると、夕暮れの公園の風景で二人の人物が描かれている。一人はタンクトップ姿の少年が、膝に顔を埋めながら茂み隠れている。もう一人は白いワイシャツを着ている男性の背中姿が描かれている。誰かを探しているようだ。でも男性の片手には血が付いているバットがある。


「どうしてこんな絵が……」


 なぜだろうか。この絵を見ると、とても嫌な気持ちになる。どうしてだろうか。この絵は絵でしかないのに、何があると言うのだろうか。脳が今すぐに破り捨てろと警告を出していた。でも身体が固まり、視線が釘付けになってしまい破れない。


 不思議と冷や汗が噴き出て、次第に鼓動が速くなり息苦しくなった。視界が平衡を保てなくなり激しく混ざる。


 俺は立っていることが出来ずにその場に座り込んだ。頭が割れそうなほどに痛い。割れないように両手でしっかりと抑える。痛みは消えない。それどころか強まるばかりだ。痛みに耐えかねて悲痛な叫び声を上げた。


 痛い、痛過ぎる。それと同時に不快感を押し詰めていたあった壺が空いたような、恐ろしいほどの恐怖と不快感が襲ってくる。


 速く、この恐怖と不快感から抜け出したいが、激しい頭痛で動けそうにない。強くなる頭痛に俺は遂に右腕を噛んだ。そうしなければ痛み耐え切れずに舌をかみちぎってしまうと思ったからだ。いくら痛いと言っても復讐を果たせないまま死ぬのは嫌だった。


 次第に口の中いっぱいに鉄の味が広がり、頭痛よりも腕の痛みの方が勝り始めた。腕から口を話すと、超音波のような音が聞こえた。


「やっと治まったようだね。僕の予想通りに動いてくれたね嬉しいよ」


 先ほど同様にプロジェクターに佐伯さんが映し出された。頭を抑えながら尋ねた。


「あ、あの絵は何ですか」

「君の過去だよ」


 俺の過去、意味が分からない。佐伯さんは何を言っているのだろうか。絵に描かれていることが俺の過去というのだろうか。でももし実際に俺の過去だとしたら一番、嫌な展開だ。


「そう言えば言い忘れていたけど、君にはかくれんぼをしながら五枚の絵を見て貰う。今、一枚見てもらったから残り四枚。まぁ、見つけるたびに先ほどのようになってしまうけどねDream plan(ドリームプラン)を遂行するためにも必要不可欠だから我慢してね」


 まるで演技をしているかのように表情を変えながら話す佐伯さんは道化師のようだった。


「な、何で、Dream planのことを」

「そんなに驚くなよ、最初に言ったでしょ。ここに来た理由は知ってるって。っていうことで早速かくれんぼを再開しようか」


 俺は怖くなった。高校時代の俺を知っているのは教えて貰ったが、なぜそれ以降の幼少期も知っているのだろうか、自分自身でさえも記憶が無いというのに、まさか、過去に佐伯さんと知り合っていたということ何のだろうか、いや、昨日の話ぶりだとそんな仕草はなかった。そして、何故誰にも言っていない俺だけのDream plan(ドリームプラン)を知っているのだろうか。


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