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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1章 七尾奏音 色欲編
36/76

ボウリング

 翌朝、いつも通りに十思の家に迎えに行く。自分の家から十思の家までの間に昨日十思が言ったことの意味を考えていた。だけれども全くもって意味が分からない。結局答えが見つからないままアパートまで着いてしまった。しょうがないので、チャイムを鳴らす。


 部屋の中からドタバタと聞こえ、ドアが開く。お互いに「おはよう」と言い私は見つからなかった答えを聞くために質問した。


「あのさ昨日の帰りに十思が言ったことなんだけど、あれってどういうこと?意味わからなかったんだったけど、なんでボウリングに行くの」

「あ~俺さ、考えたんだよ。それでさ分かったんだよ。奏音さんのこと全然知らないなって。だから知らないのに奏音さんはこういう事思ってるんじゃないかなとか舞に言えないなって」


 昨日の沈黙は十思なりに考えていた証拠だったようだ。私は安心した。もしかして十思のことを困らせてしまったからだんまりになってしまったんだと思っていたから。


「でも、ボウリングじゃなくてもよくない」

「まぁね、でもボウリング行ってみたいと思ったんだよね。行ったことないから。だから舞が嫌なら違う場所でもいいよ」


少しはにかんだような笑い方をしながら子供っぽく言った彼は何とも愛らしかった。


「なんだ、てっきりなんか考えがあるのかと思ったんだけど違うんだ」


昨日の夜考えてモヤモヤしていたことが思うよりもしょうもなくて、思わず笑いが漏れ出してしまった。


「何で笑うんだよ、いいだろ?ボウリング行ってみたかっただけなんだから」


十思は少し頬を膨らませて言う。私は少し不機嫌にさせてしまった彼になだめるように言った。


「じゃあ、ボウリングにしようか」


彼は目をキラキラさせて頷いた。







 週末、高校の近くにあるボウリング場にきていた。高校の近くということもあって高校生が多く、大分賑やかだった。このボウリング場はお母さんが生まれる前からあるらしいから、少なくとも四十年以上経っているので未だに若者に人気があるのは凄いと思う。


 当初は奏音と私、十思の三人の予定だった。だけれども奏音を誘っているときに、皐月と菜摘が来たいと言い出して聞かなかったので五人になってしまった。内心、女子ばかりになってしまい十思の肩身が狭くなりそうだと思ったが、杞憂だったらしい。受付をしている時に仲良く話している姿を見て安心した。


 一番最初は私が投げることになった。一年ぶりぐらいに投げるので緊張してボールが中央から直ぐに横にずれてガターになった。


 後ろから皐月が馬鹿にしてくる。そして後ろを振り返ると菜摘と奏音が「ドンマイ」と慰めてくれた。気を取り直して、二投目を投げる今度は少しでも上手く投げるために隣のレーンでストライクをとっている男子高校生の真似をしてみながら投げてみる。


 先は、棒立ちで腕だけしか使わないで投げていたけれど、隣の人みたいに足や重心とかに注意してやってみようと思い、真似をしてみるとこれが案外やってみると難しかった。


 上手く投げられずに項垂れながら席に戻ろうとしていると、席の皆が目を見開いてレーンを見ていた。私はなんだろうかと思い振り返るとボールがそのまま中央のピンにあたる。そしてスクリーンにはストライクという音声と言葉が表示された。


「噓でしょ!ストライク!舞凄すぎ!」


 私も驚いた。そして滲みでる嬉しさにぴょんぴょんと跳ねれ皆とハイタッチをする。昨日感じていた奏音に対する気持ちを忘れて喜びを分かち合った。


「舞やったね!」

「次は私か!舞には負けられないな~」


 皐月は自分ボウリング玉を真剣な眼差しで拭きながら言う。まるで、プロみたいだと思った。だか、その思いは直ぐに裏切られた。何故なら皐月は自信満々に投げて直ぐにガターに落ちた。彼女は舌を出してやっちゃったと言わんばかりの顔をしていた。


 二投目もガターよりにボールが進んだが、ギリギリのところでピンを一本倒せていた。


「あれ?皐月、私のこと馬鹿にしてたのに、たった一本しか倒せてないよ」


と笑いながら少し煽ると「次は絶対ストライクとるから」と私を指さしながら言ってきた。何とも皐月らしい。


次は奏音の番だった。女の子らしい可愛い投げ方で、一投目、二投目共にガターだった。菜摘は一人でボウリングに行っているだけあって、メンバーの中では一番の高スコアをたたき出した。


 一巡目最後、十思の番になった。十思は初めてのボウリングなので、私たちの投げ方を見よう見まねで投げていた。だが上手く行かなかったみたいで、ガターに直行だった。しかも、力が強すぎるせいかガターを飛び越えて隣のレーンまで行きそうでハラハラした。隣のレーンでは、いかにもやんちゃしてそうだなって感じの人で怖い、出来れば関わりたくない人種の人だからハラハラは二倍だったと思う。


「十思は力強すぎるから、もうちょい力抜いて投げてごらん」


下手くそな私がアドバイスすると素直に聞いてくれた。十思は本当に優しいと思う。二頭目は一投目の半分ぐらいの力で投げてくれたみたいで、ハラハラは無くなったが、やはりガターだった。

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