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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1章 七尾奏音 色欲編
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夢のチケット

 十思の真っ直ぐな一言に照れてしまって、顔が熱くなった。火照った顔を冷まそうと少しだけ足を早めた。十思も私の速度に合わせて歩いてくれる。


 顔に当たる風が涼しく火照った顔も冷めてきた気がした。ただ、心臓がまだドキドキしている。このドキドキは早歩きしたせいなのか、それとも、、


 隣にいる十思はいつもより速いペースに何にも文句を言わずについてきてくれる。校門を入ると、声をかけられた。


「舞!おはよう!」


声をした方を振り返る。奏音だった。


「あ、おはよう!なんだか今日はいつもより機嫌がよさそうだね!なんかいいことでも、あったの?」


 奏音は頬がはち切れそうなほどニコニコしていた。何かいいことでもあったのだろうか。こっちまで嬉しくなるほどの笑顔だ。


「やっぱり~わかっちゃうか!そうなの、すご~くいいことがあったの!でも、舞には内緒!ほんとは凄く言いたいけど、言わない」


 なんだろうか。凄くいいことって、でも、きっと彼氏さんとの話だろと思った。奏音は内緒だと言ったが、表情は少し聞いて欲しいみたいな顔をしていた。だから私は少し聞いて見ることにした。


「え!なんだろう?彼氏さんとデートとかかな?」


 奏音の顔がニコニコを通りこしてはち切ればかりのニヤニヤに近い。やっぱり彼氏さん関係だと確信した。


「そうなの!デートはデートだけど、でも、ただのデートじゃないんだよ」

「ただのデートじゃないってどういうこと?」


 ただのデートじゃないってどういうことだろうか。私は検討もつかなかった。下駄箱に靴を入れながら聞き返す。


「えっとね、、あ、そう言えばさ、舞に渡すものがあったんだ」


 奏音は思い出すかのように、カバンから二枚のチケットを渡してくれた。


 チケットにはユートピアランドと書かれていて表面にはクリスマスツリーが描かれている。これは、もしかしすると、クリスマスにユートピアランドに行けるってことだろうか。私の頭の中は少しパニックになった。隣にいる十思もパニックになりそうなほど驚いていた。


「じゃあ私、もう行くね」


 そう言い残して、奏音は颯爽(さっそう)と目の前にある階段を登って行った。私たち二人は余りにも急な出来事でその場に立ち尽くして、奏音が言っていた「デート」の話がどこかに行ってしまった。


「あのさ、もしかして、これってさ……あのユートピアランドのチケットだよね…」


 私は目の前の現象が夢ではないかのように確かめながら十思に聞いた。本当に意味が分からないが目の前にユートピアランドのペアチケットがある。しかもクリスマスの…


「多分そうだと思う。もしかしたら、夢かもしれないから俺のほっぺたつねって、代わりに舞のほっぺたもつねるからさ」


お互いに頷き、恐る恐るお互いに頬をつねった。普通に痛い、どうやら夢ではないようだった。


「二人とも朝から何やってるの?」


 菜摘と皐月にお互いにつねり合っているのを見られた。二人は私たちを冷ややかな目線で見ていた。


「えっと、これはね、、夢かと思ってつねりあいしてたんだよね」


 お互いに顔を見て頷く、その風景を皐月と菜摘は首を傾げて見ている。私は奏音から貰ったペアチケットを二人に見せた。奏音から貰った事情も話すと二人もやっと納得してくれたようだ。


「これは、つねりあいするのも納得するわ、最初見た時は新手のプレイかと思ってドン引きしたんだけど、良かったプレイじゃなくて」


 皐月は冗談っぽく笑って言う。嫌だな、私はそこまで変人じゃないと心の中で言い返した。四人で階段を登って教室に向かう。


 長話をし過ぎたせいか、直ぐに朝のチャイムがなり、ホームルームが始まった。机の中をあさって、時間割表が書いてあるプリントを確認していると、ちょうど一時間目に奏音がいる一組と合同で美術を受ける週だった。

 

 その時にチケットをなんでくれたのかを聞けばいいかと考えていた。ホームルームが終わると、いつものように皐月と菜摘と一緒に教科書を持って移動する。移動中の話はチケットの話になった。


「チケットどうしてくれたんだろうね?しかも、クリスマスのペアチケットだし、奏音ちゃんって彼氏いるって言ってたしな…」


 皐月が首を傾げて言う。私も本当にどうしてチケットをくれたのかが気になる、そう言えば、チケットをくれる前に、デートしに行くとか何とか言ってたのを思い出した。でも、流石にユートピアランドのペアチケットがあったらユートピアランドに行くよなと思う。


「う~ん」


 三人でうなりながら美術室に向かう。美術室までの道のりはそこまで長くないので直ぐに着いた。教室の中に入ると、奏音は先にいた。私たち三人は早速奏音のもとに行きどうしてチケットをくれたのか聞いてみた。


「あ、チケットをあげたのは、幸せのお裾分け見たのもんだよ。というか何で、皐月ちゃんと菜摘ちゃんも知っているの?」


 奏音は事情を知らないはずの皐月と菜摘まで知っていることに驚いていた。


「私たちが知ってることなんて、そんなことはどうでもいいんだよ!奏音ちゃんこれが何のチケットか知ってる?夢の国のチケットだよ!それもクリスマスの!」


 毎年クリスマスのユートピアランドのチケットは入手困難でよくニュースでも流れている。それぐらい価値があるものなのだ。


「もちろん知ってるよ、だから最初…あ、やっぱり、何でもない、とりあえず、私たちは使わなくなったから代わりに舞と佐藤君に使って欲しいなって思って渡したの」


 奏音は何かを隠した。それはなんだかわからない。聞こうとしたタイミングでチャイムがなった。なんて間が悪いのだろうか。席に座れと先生に注意されたので仕方なく私たちは自分たちの席に着席した。


 最初の五分ぐらいはモヤモヤしていたが、鉛筆でデッサンをし始めたら、白と黒の世界に入り込みチケットのことは頭の何処か旅立ってしまった。




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