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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1章 七尾奏音 色欲編
29/76

和解

 気づくと私はどうやら寝てしまっていたようで時間が2時間ぐらいたっていた。気分は先ほどよりは幾分かましだったので奏音に電話をかけることにした。


「もしもし、奏音、先は電話に出られなくてごめんね」

「全然平気だよ!それよりもさ、菜摘さんと皐月さんとゲームセンターに行ったんだけど、そこで、舞が凄く喜びそうなのとれたから、月曜日に渡すね!」


 奏音の元気そうな声を聞いて胸の痛みが少し和らいだ気がした。でも電話から聞こえる奏音の声は、今の私とは裏腹に元気そうで羨ましいと思ってしまった。


「あ、そうなんだ…ありがとう」

「あれ?なんか舞元気ないね、どうしたの?」


「あ~実はさ、今日ね、久しぶりに十思とデートだったんだけど、私がちょっと台無しにしちゃってさ、それでちょっと落ち込んでるんだよね」


私は苦笑いをしながら、簡単に話した。奏音はちゃんと聞いてくれていた。きっと、菜摘と皐月なら、彼氏が可哀想とかなんとか言ってきたかもしれない。いや、流石にそこまでのことは言わない無いか。私はダメだな。ずっと一緒だった友達にもこんなふうに思ってしまうなんて。


「そっか、、、で、台無しってどういうこと?」


奏音の声は想像していたよりも凄く優しい声で私は自然と口から思っていたことを吐き出していた。


「えっと、、今日あの映画を見に行ってさ、それで、十思と同じ気持ちになりたかったんだけど、感想が違ってさ、違って当たり前なことなのに、私は十思と同じ気持ちであることが既に当たり前になっていて、それが違って、悲しいというかショックでそのまま十思を置いて1人帰ってきちゃったって感じ」


「それは、佐藤君が可哀想だな。人ってそれぞ違う考えかたを持っているからね。でも、私は舞の気持ちもわかるよ。私も感動したものとかは舞と同じ気持ちになると思う。だから、、舞も佐藤君もどっちも悪くないと思う!!これじゃあダメかな?」


私は凄く嬉しかった。誰にも分かってもらえないかもしれないと思っていたし、奏音から攻められるかもとも思っていた。それに自分自身でも理解していた。悪いのは自分だって。


心に暖かいものが通って目尻から頬にかけて涙が伝った。


「よかった、私だけじゃなかったんだね。奏音に話してよかった!大分スッキリした!ありがとう」


私は心の底から感謝をする。


「これぐらい感謝してもらえるなら、いつでも話し聞くよ!」


優しく微笑んでるような声だった。私の心をじんわりと暖かさが包み込んでいた。奏音のおかげで気持ちが少し前向きになった。


「本当にありがとう!私、ちょっと謝ってくるね!」


私は電話を切って、外に出た。外はすっかり日が暮れている。もう秋が終わりを告げようとしているんだなと感じた。私は走って十思の家と向かう。顔に当たる風が冷たいくて痛い。


自宅から十思の家は徒歩で10分ぐらいしか離れていない。走れば直ぐにつくはず、はずなのに、待ち遠しい気持ちだけが先走っていつもよりも遠く感じる。

 

やっとの思いで十思が住んでいるアパートに着くと、十思からの部屋から光が漏れていた。心臓がバクバクと鳴り。身体を揺らすような緊張が走る。私はゆっくりと深呼吸してからインターホンを押した。


中から足音が聞こえて、扉が開く。光が開かれた扉から漏れる。


 扉を開いた十思は私の顔を見ると、最初は驚いた表情を浮かべ、次第に曇った表情に変わった。私は変わる様を見て胸が傷んだ。目を逸らしそうになる。だが、首を横に振って私は十思の瞳を覗き込むように見てから言った。


「十思、ごめんなさい!私、私ね、あの時十思と同じ気持ちだと思って一人で勝手にまいあがってたの、でも、十思は私が何で、勇気をもらえたのか全然分かってなかったから、なんか急に裏切られたみたいに感じちゃって、それであんな酷い態度をとってしまったの…ごめんなさい」


 私は自分の中にある気持ちを無理やり繋げて言葉にする。謝りながら深く深く頭を下げる。自分でも行動や言葉が支離滅裂だと思うし何言われているのか理解出来ないと思うけど、でもどうにか伝わって欲しいと思った。


「俺の方こそごめん…」


 想像もしていなかったことを言われて、私は下げていた頭を上げて十思をみる。十思は何とも言えない悲しそうな顔をしている。


「俺さ、鈍感で馬鹿だからさ、何で舞を怒らせてしまったのか全然わからなくてさ、家に帰って来てからも考えたんだけど、わからくて、このまま舞に嫌われちゃうのかなとか思ったりして、不安でたまらくなったんだよ。でも、それで気づいた気がしたんだ、舞が勇気をもらえたって言ってた理由がさ」


 十思も私と同じで辛くて不安だったんだと思って、涙が止まらなくなった。


「舞はきっと、俺たちみたいだって思って、それで、映画みたいにこれからどんどん幸せになっていく未来が想像できて、勇気がもらえたって言ったんだろう?」


心の中にあった霧が晴れた気がした。


「ずっと不安だったの、加藤たちに襲われて……もし加藤が少年院から出てきたら、また同じ目に合うかもしれないとか、宇土が学校に戻ってきたら、今度は殺されてしまうかもしれないとか、色々考えて、不安だったんだけど、あの映画みたら、私たちも二人なら、あの映画のような幸せを遅れるかもしれないとか、思って勇気をもらえたの」


まだ、感情も顔もぐちゃぐちゃで伝えたいことが伝えられてない気がするけど、何より、十思が私の気持ちを理解していくれたことが何よりもうれしい。

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