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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1章 七尾奏音 色欲編
25/76

決着

 奏音はあっという間に私の後ろまで迫っていた。あと少しでアイテムボックスなので最悪越されてしまってもどうにかはなるが出来れば越されたくはない。もし越されてしまったらアイテム次第になってしまう。その時凄く使えないアイテムだった場合はもう勝ち目はないかもしれない。


 気付くと母もコースをショットカットして距離を縮めていた。奏音のすぐ後ろぐらいにいる。私は良いアイテムが出ることを祈ってアイテムボックスを取る。結果ブースターを取ってしまった。ブースターは速度を一時的に速度を上昇させるアイテムだが、効果が切れると速度が一瞬遅くなるデメリットもある。だから個人的にはいまいち使えないと思っている。確かにゴール前で競るような場面だったら使えるかもしれないが、今はそこまで距離が縮まっている感じはない。


 母はボムが出たらしくて奏音に当ててタイムロスをさせていた。奏音のアイテムはまだわからないが母がどんどん距離を詰めて二位になり、そして私との距離を詰めてくる。何とか距離を離すためにいつもよりインコースで走る。


 このタイミングで奏音はアイテムを使用した。持っていたアイテムは龍だった。龍を使って一気に私の少し前に出る。ゴールが見えてきた。ここで母も距離を縮めて、私のすぐ真後ろに迫って来る。そしてゴール目前で私達は三つ巴の場面になった。私は運がいい。この距離ならブースターを使ってデメリット無しで充分ゴールできる。ブースターが切れる距離さえ間違えなければ。


 母は私を追い越し奏音と並ぶ。ゴールまで数メートル。私は、思い切ってブースターを使った。手元にあるリモコンにも力が入る。私の心臓は音を立てて速く鳴る。多分隣の二人もそうだろう。私は、アクセルのボタンを力いっぱいに押す。


 やってしまった。カートの速度が急激に遅くなった。ゴールまであとちょっと、ほんの少しでゴールだったのにブースターが切れてしまった。その間に二人は私と並ぶ。三台ほぼ同時にゴールした。


画面が真っ暗になり、結果発表の場面に移る。画面に表彰台が現れた。結果は母が一位、奏音が二位で、三位が私だった。


「やった~!私ビリだったのに一位!!」

「凄く面白いですね!もう一回やりましょう!」


 母のその姿は少し大人げないと思ってしまう。今は尚更、でも私はは母の子供っぽいところも大好きだ。でも、今は辞めて欲しい。奏音が来ている今は恥ずかしい。私は母から目をそらし奏音の方を見る。奏音も母のように子供みたいな無邪気な顔をしている。恥ずかしがっている自分が馬鹿のように思えて、私も一緒になってはしゃぐ。


 気付くと空がぼんやりと暗くなるまでやった。私は結局一勝もできずに終わってしまった。この中で一番の経験者のはずなのにおかしい。私はゲームが下手くそなのだろうかと疑ってしまうほどにボロボロに負けた。でも二人はゲームを楽しんでくれたようなので、よしとしよう。


母が時計を見ると「そろそろ夕食の準備をしないとね」と言って立ち上がり、台所に向かった。


冷蔵庫の前に立つと母は奏音の方を振り向いて聞いた。

「奏音ちゃんは何食べたい?今日はおばさんが腕を奮ってごちそうしてあげるから何でも言って!」

「おばさんの得意料理が食べてみたいです!」


「よし!」

と言いながら、冷蔵庫を思いっきり開ける。だが何故か母は一瞬で閉めた。


「ごめん。食材買ってくるの忘れちゃった……だから、今日は出前にしようか。私の得意料理今から注文するから、、、ってダメかな?」


 苦笑しながらそう言った母は何とも情けない…けど、おかしくて私たちは声を出して笑った。母は二枚のチラシを持って来る。


「どれも美味しそうね~二人は何食べたい?」


 母は寿司とピザのチラシを私達に見せながら言う。でも私はそこまでお腹が空いているわけでもないので美味しそうにはあまり見えなかった。だから適当にさっぱりとした寿司の四人前を適当に指さした。


 奏音は私とは逆にガッツリしたピザを食べたいと言う。


「じゃあ、両方頼みましょうか!」と言ってくれた。私には両方頼むという発想は無くて、母の太っ腹な発想に感心した。


 母が寿司とピザを電話で注文する。注文が終わると私たちはゲームの片付けをしたり、テレビを見たりして寿司とピザを待っていた。そして、しばらくすると父が帰ってきた。


 奏音は先までリラックスさせていた体を硬くさせて緊張したおもむきと驚愕した表情を覗かせた。父はそんな姿の奏音を見るや否や、ニコッと微笑んだ。


「今日はゆっくりして行ってね!舞は一人っ子だから何かとわがままで、面倒を見るのが大変かと思うけど」

「私我儘じゃないし、っていうか私が奏音の面倒見てるんだから!そうでしょう奏音?」

「え?、、、違うよ」


 父が冗談を言い、私がツッコミを入れる。でもそれもボケだったらしくて更に奏音がツッコミを入れると皆で一斉に吹き出した。


 父はひと笑いを起こすとそのまま風呂場の方へ向かって行った。風呂場に向かう父の後ろ姿を見ながら私は流石父だなと思った。


 父がシャワーを浴びて出てくる頃には、頼んだ寿司とピザが来ていた。父がお風呂から出てジャージ姿でテーブルに着き、私たちも席に着く。




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