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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1章 七尾奏音 色欲編
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楽しい食卓

「ねぇ、寄り道しない?バイトまでまだ時間あるでしょ?」


 十思の腕を引いて近くにある小さな公園に入る。木々についてただろう枯れ葉は地面に落ちていて枝が肌寒そうだった。


 二人は自販機で暖かい飲み物を買う。飲み物を持つと少しだけ冷たくなっている手が暖かい。私たちはベンチに腰掛けた。冬の訪れを感じさせるひんやりとしたベンチだった。寒さが身に沁みるが心はポカポカしている。まるで日向ぼっこをしているような暖かさを感じる。


「十思はさ、夕焼けみたいだよね」


 私は雲を赤く染める夕焼けを見ながら言った。十思は意味が分からないような顔をしている。気にせず、私は話し続けた。


「夕焼けってさ、雲や空自体を朱色で照らすし、海に行けば青色だったはずの水面も綺麗な朱色で染めるじゃん……何が言いたいのかというと私が海や空だとするじゃん、今まで白と青しか知らなかったのに、赤色に染まるんだよ、だから十思は夕焼けみたいに私を知らない色で染めてくれる」


 私は自分でも何が言いたいのか分からなかったが、夕焼けを見たら言いたくなってしまった。私が伝えたいのは十思は私が感じたことがないような感情にさせてくれるということを言いたかった。


「そっか、、でも夕焼けが赤いって分かるのは空や海があるからだよな……」

「え?」

「夕焼けってさ、自分で自分は何色だって分からないと思うんだよ。空や海があって始めて自分の色が分かる。だから、実は逆だったりしてね」


 十思は缶に入ったホットコーヒーを一口飲むと私に優しく微笑みを向けた。










 奏音が遊びに来る土曜日になった。私は朝から部屋の掃除をしていた。もう一時間以上ずっと掃除機をかけている。部屋は六畳ぐらいの部屋なので普段なら五分、かかっても十分ぐらいだと思う。奏音が来ると思うと落ち着かなくて、しょうがなく掃除機をかけている。

 

 『次第に母にいつまでやっているの!』と怒られて、掃除機を止めた。止めると今度は窓の汚れが気になってきた。でも窓を拭いている時間はもうないので諦めることにした。大して汚れているわけでもないしな。と自分の中で言い訳をする。


 携帯が鳴った。着信は奏音からだった。出ると家の前にいるとのことだったので、私は大急ぎで階段を駆け下り玄関を開けた。


「奏音おはよう~待ってたよ!入って入って!」

「おはよう~ありがとう!お邪魔します~」

「いらっしゃい!」

「あ、七尾奏音と言います。今日はお世話になります。これ、つまらないものですが…」


  玄関に居る母親に奏音は丁寧にお辞儀をして手に持っていた紙袋を渡した。


「あら~ありがとうね!気を使わなくて良かったのに~いい子ね!今日の晩御飯は腕を振るわなきゃね!」

「ありがとうございます!楽しみにしてます!」

「お母さんもう部屋行っててもいい?」

「もう~落ち着きがないんだから、いいわよ!奏音ちゃん今日はゆっくりしてってね!」


 奏音は苦笑しながら母親に小さくお辞儀をして私に付いてきた。奏音は部屋の隅っこに荷物を置いて、ソワソワしながら立っていた。私は部屋の中央に折り畳み式のミニテーブルをおいて座布団を敷いて、奏音に手で合図し座らせた。奏音は緊張様子で正座をして座る。


「足崩していいよ、多分だけど友達の家に来て正座する人なんかいないよ」


私は笑いながらそういうと奏音は足を崩し少しだけ顔を紅葉させていた。


「先から思ってたんだけどさ、奏音荷物多くない?」

「やっぱりそう?こういうの初めてで何持っていくのか分からなくてさ、全部入れたらめっちゃ多くなって、来るまでに肩壊れるかと思うぐらい重かった」


 先ほどまでとは打って変わって笑いながら言う奏音を見て、少しだけ安心して私も自然と笑みがこぼれた。奏音とは十思にプレゼントを渡したときの話や最近流行っているものの話をして盛り上がっていた。少ししてお昼時になると一階から母親が私たちを呼びかけてくれた。


「二人ともご飯の準備ができたから降りてきて」


 一階に降りると。テーブルの上にはオムライスが置かれていた。トロっとした卵がケッチャプライスにふわりと乗っていて美味しそうだ。やっぱり、母は料理が頗る上手だなと改めて思う。


 私たちは適当に席につき、洗い物が終わった母が席に着くと皆で手を合わせて食べ始めた。


「凄く美味しいです!久しぶりオムライス食べました」


 奏音は美味しそうに食べながら言うが頬には赤色の米粒がついていてた。


「褒めてくれて凄く嬉しいんだけどね、奏音ちゃん…あの、米粒がついているわよ頬に…」


 母は自分の頬を指しながらジェスチャーして教える。奏音は凄く恥ずかしそう米粒を取る。可愛い。


「あ、そうだ!これ食べ終わったらさ、ゲームやろうよ!もちろんお母さんも一緒にね!」


 私は二人を見て言った。小学生の時に買ってもらったゲームを最近やっていなかったのを思い出した。確かドラゴンカートというドラゴンがゴーカートに乗って競い合うゲームだった気がする。買ってもらったのはいいが、一人っ子の私はやる人が居なくすぐ飽きてしまった。


「せっかくなんだから、二人でやればいいじゃないの」


 気を使って言ってくれたが、私は人数が多い方が楽しいと思ったし奏音も『一緒にやりましょうよ』と言ってくれたおかげで母も参戦することになった。


「でも、舞がゲームやろうなんて珍しいわね、確か最後にやったのって…私たちが誕生日にプレゼントして家族でやったのが最後だった気がするんだけど」

「え、、それって舞一回しかやってないじゃん」

「え~そんなことないよ奏音!その後も一人でやったよ、多分」



 母はいたずらっぽく言う。奏音は母の言葉に反応し私は苦笑しながら答えた。


「それってでも、多分でしょ?」

母はニヤニヤしながら言ってくる私は何も言い返せないでいると奏音が助け舟を出してくれた。


「まぁ、高校生になると結構忙しくなるしね、だから舞もそんな感じだよね?」


 奏音はアイコンタクトで合図してきたので、私はすかさず『そうなんだよ~』と同調したが、演技が噓っぽくなっては母はクスクスと笑った。


 いつの間にか話している間に三人のお皿からオムライスは無くなっていた。

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