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業火な御馳走  作者: 赤八汐 恵愛
第1章 七尾奏音 色欲編
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始めての友達

 起きた頃には放課後になっていて、誰もいない教室には微かに吹奏楽部の楽器の音と運動部の掛け声が聞こえてくる。静寂の中に流れる音。たまにはこうやって一人で教室にいるのも悪くないなと思う。明日はとりあえず、舞さんに噓ついたことを謝ろう。







 火曜日の二時間目は四組と合同で体育で体操着に着替えて体育館へと向かう。体育館ではボールをバウンドさせている音を響かせながら男子達が授業が始まるまでバスケをしていた。


 私は、それを離れてみていたつもりだったが男子の一人が手を滑らせる。ボールが私の顔面へと一直線に向かって来ている。ボールがスローモーションに見えるが全く動けない。そのまま鼻に直撃し私は後ろに派手に倒れた。クラクラする頭、鈍い痛みが走る鼻とその周辺を手で抑えながら感じる。体育館に居る皆が私に注目した気がする。心配する声が聞こえる。すごく恥ずかしい。


  ジンジンと痛む鼻を抑えている手から生暖かい液体の感触を感じる。急いで片手をズボンの中に入れてポケットティッシュを出そうとしたが、いくら触っても何もなかった。今日に限って忘れるとはツイてないと溜息を溢す。


 体育の先生が駆けつけて声をかけてきたが、私は顔を背けて大丈夫ですと返事をして急いで洗面所の方へ向かった。個室に入ってトイレットペーパーで鼻を抑えていると一人の女子生徒が声をかけてきた。


「大丈夫ですか?あ、大丈夫じゃないか…」


 私は、正真意外の人、ましては知らない人が結構嫌いだったので、鼻声で大丈夫です。と言う。でも頑なに保健室に連れて行こうとして来る。


「頭に当たったわけなんですから、一人で保健室行っている間に倒れてしまうかもしれませんし、危ないので私が連れていきます。先生にも頼まれてますし」


 鼻血も少し収まってきたので個室から出たかったがきっと彼女は私がここから出たら無理矢理でも保険室に連れて行こうとするだろうと思い心の中で深い溜息をつく。


 もう地味に汚いトイレにじっといるわけも行かないと思い渋々と個室のドアを開ける。外にいた女子生徒は昨日、舞と言われていた人だった。私は鼻をトイレットペーパーで抑えながら驚いて目を白黒させた。今日はやっぱりツイてるかもしれない。これがきっかけというのは複雑だけど仲良くなれたらいいなと思った。


「じゃあ、保健室行きますよ」


 そう言って、舞さんは私を気遣いながらゆっくりと保健室へと連れていってくれた。保健室には、白衣を着た女性がいた。


「あ、先生…七尾さんの鼻にバスケットボールが当たっちゃって…」

私がしゃべりだす前に舞さんは全部先生に伝えてくれた。


「あらら、痛そうね…ちょっと見てもいいかな?」


 私の鼻を触って折れていないかなどを確かめた後に、氷水で冷やしてくれた。


「連れてきてくれてありがとうね」


 保健室の先生がそういうと舞さんは軽く会釈して体育へと戻る。私は頭にボールが当たったていうこともあって次の授業まで保健室で休むことになった。保健室のベットの上で舞さんと会ったら言いそびれたお礼を言わないと、などを思いながら横になっていた。


 二時間目の終わりを告げる鐘が鳴り、痛みも引いて先生から授業に戻ってもいいよと言われたので私は保健室から出て教室に向かっていると、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。後ろを振り返ると舞さんだった。


「もう大丈夫なんですか?」

「はい、もう大丈夫です…先は保健室まで連れてってくれてありがとうございました。とっても助かりました」


 緊張して声が少しだけ震える。中学時代に同性からいじめられていたことがトラウマになっているから同性としゃべるといつも緊張してしまう。


「それならよかったです!無理はしないように」


 舞さんは自分ごとのように安心して微笑んでくれた。本当にいい子なんだと実感する。


「また具合わるくなったら、いつでも言って下さい。クラス違うけど、私、保健委員なので、それじゃあ授業始るんで私は行きますね」

 舞さんは微笑んで手を振り四組の教室に戻ろうとしていた。だが私は無意識に腕を掴んだ。


 「ま、待って、あ、あのLights交換しませんか?ちゃんとお礼したいので……」


 舞さんは身体をビクッとさせた。


「あ、え?…あ、いいですよ…」


 急に腕を掴まれたことで私が言った事がちゃんと理解できていない様子だった。でも私はこの機会を逃したら、もう連絡先を交換する機会は訪れないと思って掴んでしまった。


 






 早速、学校から家に帰ってくると自室のベットに寝っ転がりながら、舞さんにLightsしてみた。そうするとすぐに返信が来てとっても嬉しくなり足をばたつかせた。


 私は昔からLightsするよう友達がいなかったからかこうやってLightsすることが少し憧れだった。それが出来た事が凄く嬉しかった。


 話が盛り上がり気付くと外が真っ暗になるまでLightsで電話をしていた。そしてお礼の代わりに私は週末に舞の彼氏にあげるプレゼントを一緒に選ぶことになった。


 舞と遊ぶことを考えながら風呂に入る。同性の友達と出かけることは私にとって初めての出来事だし、友達とタピオカのストーリーを一緒に撮るのもやってみたいとずっと思ってた。それがもしかしたら叶うかもしれないと思うと胸がワクワクしてきた。


 上機嫌で風呂から出て髪を乾かす。私は今までタピオカで楽しそうにしている女子高生たちを眺めては羨ましいと思っていた。その羨ましいと思っていたことができると思うとどんどん舞とやりたいことや行きたいところが沢山浮かんできた。布団の中に入る頃になっても興奮が収まりそうにない。


 でも、舞さんにも彼氏がいるんだからずっと私と遊んでいるのは難しいかもしれない。そんなことを思うと少し悲しかったが気持ちは落ち着いて来た。段々と眠くなり、意識が無くなる。

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