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改革派


サイモンに運転させながら、ペレス元大佐が喋った。


「いいか、私は君たちの仲間だ。指輪を外したら、真っ先に私に渡せ。指輪を手に入れて都に戻ったら、ロイの娘を解放する。君たちは大人しくそれを待て」


ペレス元大佐は、指輪を手に入れたら悪魔に何を願うつもりなのだろう。

前にサイモンとロイドが話していたことをメリルは思い出した。


(ペレス元大佐は、偏った思想の軍国主義だと言ってたわね。軍人を辞めて政党を立ち上げたけれど、民衆の支持を得られず、表舞台から退いたと。でも軍部にはペレス元大佐を崇める信者も残っていると)


メリルははっとした。

もしかしてロイド自身がそうだったの?


ロイドの父親は軍役中に身体を悪くして退役し、治らずに亡くなってしまった。

その父親と同じ軍人を目指し始めたロイドに、メリルは言ったことがあった。


「お父さんを尊敬しているのね。背中を追って、お父さんみたいな軍人になりたいの?」


「親父みたいにはならないよ。同情はしても、尊敬はしていない。俺は軍に入って、出世して、軍人の献身が正しく報われる社会にしたい」


父親への反発のようなものを感じて少し驚き、将来の目標を語る大人びた表情にドキリとした。

いま思い返すと、それは「軍国主義」を支持するという意味だったのだろうか?


メリルはロイドのことがますます分からなくなってきた。

ペレス元大佐は何を願うつもりなのか。

その代償として時間を失うことは覚悟しているのか。

聞きたいことは沢山あるが、勝手な発言は許されていない。


(サイモンは知っていたのかしら。ペレス元大佐がロイの友人として現れたとき、サイモンだけ驚いていなかったわ。まるで予見していたように挨拶をして、手を差し出して)


求めた握手は拒否されたけれど。


(資本主義の飼い犬……サイモンが大金持ちに趣味で雇われていることを、ペレス元大佐は知っているのね)


それもロイドから聞いたのだろうか。

ロイドが毎日必ずかけていた電話口の相手は、妻のナタリーではなくペレス元大佐だったのかもしれない。

メリルたちの動向を報告するために。


(この指輪が無事に外れて、ペレス元大佐に渡して全てが丸く収まるのなら、それで良いの? でも……)


きっとペレス元大佐はこの国の仕組みを変えるために指輪を使う。

選挙で民衆に選ばれた政党の代表者が、議会で政策を話し合い、決定権を持つ議会制ではなく、軍が全ての決定権を持つ仕組みに変えたいのだ。


(そんなこともこの指輪に願えば、可能なのかしら? 代償はどのくらいなのかしら。願いが叶っても、悪魔と取引した契約者は時間を失う。仮に20年だとしたら、願った瞬間にペレス元大佐は失踪して、戻って来たときには20年後なのに)


もしかして指輪は別の誰かに着けさせて、身代わりに願わせるのかもしれない。

自らの20年を捧げても、ペレス元大佐の夢を叶えたいと願う信者に。


(まさかロイじゃないわよね? ロイにはナタリーさんと、生まれたての赤ちゃんがいるもの。愛する妻子を置いて、訳の分からない革命なんかに身を投じるわけないわ)


それにロイドは言った。

メリルに対する責任も取ると。ロイドの出来る範囲で、メリルの希望を叶えるつもりだと。そのための話し合いを後日改めて行うと約束したのだ。

その約束をすっぽかして、説明責任も果たさないまま、いなくなるようなロイドではない。

メリルはそう信じている。


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