買い出し
「なあ、俺らって追われてる身だよな? 4人揃ってぞろぞろと移動してるだけでもなんか目立つしさ、店で食事するより、なるべくホテルにいた方が良くないか?」
それは今日1日外にいて、キースが感じたことだった。
ショッピングモールなど、雑多な場所ではまだ良かったが、人通りがまばらな道を歩いていると何となく悪目立ちして、人目を引いている気がした。
学生でもなく、家族連れでもない、中途半端な年代の大人4人組だ。しかも男3、女1人という組み合わせで、どういう関係なんだろうと勘繰りたくなる。
男3人は見るからに軍人に、凡人ニートに、二次元的なイケメンと、見事に系統が違っている。
何よりサイモンが人目を引きすぎるのだ。まるで芸能人のような雰囲気は、田舎に行くほど目立つだろう。
「大体、お前が目立ちすぎ。もっとこう、地味に変装するとか?」
昔みたいにと口走りそうになったキースは、寸でのところで飲み込んだ。
高校時代のもっさりとして冴えなかったサイモンはあれが素で、変装していたわけではない。
何があってこうなったのか知らないが、きっと変わりたいと強く願って努力して、過去から脱却したに違いない。
その努力を見ていない自分が軽々しく、元の姿に戻れなどと言っては駄目だろう。己のデリカシーの無さに自覚があるキースは、失言寸前で踏みとどまれたことにほっとした。
「キース、じゃあ俺と買い出しに行こう」
すっと助け船を出すようにロイドが言った。
「そのサーモンステーキのお店でテイクアウトして、他にも何か要るものがあれば買って来よう。男2人で出歩けば特に目立たない。メリルとサイモンは部屋で待ってて」
「あっ、じゃあその間に私はシャワー浴びて来るわ。お昼に汗かいて、ベタベタしてるから」
メリルが言った。
シャワーを浴びたいのは半分本当だが、半分は口実だ。
部屋で1人になったタイミングで、したいことがあった。もう一度指輪の悪魔を呼び出して、少し聞きたいことがある。
皆がそばにいてくれた方が安心だが、聞かれていると話しにくい。
「了解。じゃあメリルとサイモンはそれぞれの部屋で自由に待ってて。買い出しから戻ったらサイモンの部屋に集合。買って来て欲しいものあったら、言ってね」
ロイドが言った。
キースと比べると目立たず物静かだが、最終的に意見をまとめたり皆に指示を出すのは、昔からロイドの役目だ。
高校では転校生だったが、半年も経つと学級委員になっていた。
しっかりしている、真面目な優等生という他者からの評価。しかし、いわゆるガリ勉タイプではない。筋肉質ながっちりした体格に、底に秘めた静かな迫力があり、『能力者』であることをひけらかしてはいなかったが、誰もが一目置いていた。
「元大佐のオッサン、ほんとに追って来てるのかな」
ホテルの外に出てロイドと2人、サーモンステーキハウスへ向かいながら、キースが言った。
「山から逃げたときはさ、すげー緊迫感あったけど、あれから何も音沙汰ないしさ。どこまでどう追って来てんのか、全く分かんねーよなあ。オッサン1人で追いかけて来てんのかな? だったら、俺らわりと余裕じゃね? 全国に指名手配されてるとか、軍警察総動員とかだったら、マジですぐ捕まりそうだけどさ。俺らの追っ手って何人くらいだろうな。オッサンの仲間ってどのくらいいるんかな。ロイ、知ってるのか?」
「元大佐の隠れ支持者は結構いるよ。多分、数十人。けどそれは秘かに憧れてる信者って感じで、大佐と直接通じている訳じゃない。大佐と内通している者は、数人だろうな。人数は少ないが、上層部にいるかもしれない。ただ、今回の件は大佐1人で動いている可能性が高いと思う。願いが叶う指輪を一人占めするためにね。下手に他の者に情報共有して、横取りされることを懸念しているだろうから」
「そういや言ってたな、上司も同僚も信頼できないって。元大佐も同じか。仲間はいても信用できない」
キースは喜んでいいのか、落胆していいのか、複雑な気持ちになった。
「お国を守る軍は、疑心暗鬼な人間だらけか。なんだかなぁ……夢なくすわ」
素直な感想を漏らした後、失言に気づいた。
「あっ、ロイのことじゃないぞ? お前は信頼に値するよ。軍人である前に、俺の親友だしな」
「取って付けたようなフォローだな」
ロイドは苦笑した。




