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ツインベッド

ショッピングモールでの買い物と食事を終えた4人は、また電車に乗って移動した。

サイモンの祖母が住むヘリオーズ地方までは、ここから電車とバスを乗り継いで、約4日で到着できる予定だ。


「まあ最終的に徒歩で2時間、車で15分かかるよ。田舎の中でも特に田舎で、最寄りのバス停が遠いんだ。隣近所も遠くて、ぽつんと一軒家な感じ」


サイモンがそう説明した。


「徒歩で2時間はちょっときついな~。最終的には車でお迎え来てくれんの? ばあちゃんかお弟子さんが」


「多分ね。基本、身内には厳しいけど、お客さんには優しいから」


サイモンの言葉にキースはほっとした。

僻地に住む『田舎の使徒を牛耳る長老』と聞いて、サイモンの祖母に恐ろしいイメージを抱いていた。



「次の停車駅で下りて、泊まるところを探さないか?」


ロイドが提案した。


「あまり遅くなって、宿が見つからないと困る」


「そうだね、ここらで探そう」とサイモンが言い、キースとメリルも同意した。

平日だが、学生は夏休みの時期だ。予約無しで当日宿泊できるホテルを探すのは、簡単ではないかもしれない。


4人の地元ドノイに比べれば田舎だが、この辺りでは繁華街と言えそうな場所にある、小さなビジネスホテルの部屋が取れた。

空いていたのはツインルームが二部屋で、一室はメリルに譲り、もう一室で男3人が寝ようと話し合っていると、メリルが言った。


「せっかくベッドが空いてるのに、誰かがソファーで寝なくちゃいけないなんて。キース、こっちで寝ない?」


メリルの気軽な声かけに、男たちは一瞬固まった。


「えっ、俺!? そっ、それはヤバいだろ」


指名を受けたキースは大いに焦ったが、メリルにしてみれば、キース以外の選択肢はなかった。

元婚約者で、今は他人の夫であるロイドを誘うわけにはいかない。まだ未練があるため、なお気まずい。

サイモンに至っては、『たかが元クラスメイト』から少し毛が生えた程度の関係だ。親しくない分、異性であることを意識してしまう。

その点、キースとは気の置けない関係だ。


「大丈夫よ、キースと私よ? 今さらそういう目で見れる対象じゃないって、キースも言ってたじゃない。安心安全よ。えっ、まさか2人きりになったら襲って来る!?」


「んなわけっ、この状況下でそんなこと出来るかよ」


メリルの茶化した口調に、キースはむっとしてぶっきらぼうに言った。


「じゃあ決まりね。ベッドでゆったり寝た方が絶対いいわ」


屈託なく笑うメリルを、この鈍感女めと恨めしく思いながら、キースの心臓は急激にどくどくし始めた。

異性として全く意識しないと宣告された上で、ベッドのある部屋で2人きり……これは生殺しだ。

眠れるかよと胸中でつっこんだ。


反対の声を上げてくれればと他の2人を見たが、メリルの元婚約者である親友は薄く微笑み、サイモンに至ってはホテルの周辺マップを開いて、何やらブツブツ言っている。


「ねえ、荷物置いたらこのお店へ行ってみない? サーモンステーキが大人気らしいよ。食べたいな」


くるりと皆の方にマップを見せて、サイモンはオススメの店を指差した。

呑気かよとキースはズッコケそうになったが、サイモンがマイペースなことはこの2日間で理解していた。


(まあ昔から、マイペースっちゃあマイペースだったよな。悪い意味で。もう少し気を付けてりゃ、あんなにクラスで浮くこともなかったのにな)


「サーモンステーキ? 美味しそう」


サイモンの提案に食い付いたメリルを見て、キースは思い出した。


(そういや、あの頃サイモンを馬鹿にせず、フラットに接してたのって、女子ではメリルくらいだったな)


当時サイモンを見下して気持ち悪がっていた女子たちは昨夜の同窓会で、変貌を遂げたサイモンに目の色を変え、媚び媚びで群がっていた。

対してメリルは、超絶イケメンになったサイモンにも昔と変わりないフラットな態度だった。


(ああ、メリルのそういうところが、やっぱいいんだよなぁ……)


キースはしみじみ思った。

しかし相手は自分のことを完全に安全牌だと信じ切っている。


(まあ今は安心安全の安全牌でいいよ……)


ペレス元大佐からメリルを守り、悪魔の指輪をどうにかすることが先決だ。


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