責任の取り方
メリルと2人きりになったキースは、タイミングを見計らって切り出した。
「あのさ、俺が口出すことじゃねーんだろーけど。ロイが責任を取るって言った件、しっかり考えろよ。うやむやにしたり、情に流されないようにな。5年を犠牲にしたっていったら、結構でかいぞ。結婚の約束が破られたわけだし、慰謝料的なやつ取れると思うぞ」
メリルは少し考えて、曖昧に頷いた。
やはり現実的な手段としては、お金で解決ということになるのだろうか。
「慰謝料……」
「ああ。一方的に婚約破棄されたときの、一般的な慰謝料の相場くらいは貰っていいんじゃね?」
キースはそう言うが、一般的ではない特殊な理由で破談となった場合、普通の相場に当てはめて良いものだろうか?
メリルは迷った。
『俺の出来る範囲で、メリルの望みを叶える。メリルは俺にどうしてほしいか、よく考えて』
ロイドははっきりとそう言った。
(ロイの出来る範囲……どこまで本気なのかしら。もし私が、奥さんと別れて結婚してほしいと願ったら? それは『出来ない範囲』だと言うのかしら。それとも責任を取って、本当に離婚してくれるのかしら?)
ロイド夫妻に子供がいなければ、メリルは本気でロイド奪還を夢見たかもしれない。
しかし今はそれを望まない。生まれたばかりの子供から父親を奪う気はない。
ロイドの妻への対抗心は下手すると沸き上がるが、子供には何の落ち度もない。ただ愛し合う夫婦のもとに生まれてきた天使だ。
だけど、とメリルはほの暗い気持ちで思った。
(本気で離婚してほしいとは思わないけれど、もし私が離婚して一緒になってほしいと言ったら、ロイはどう言うのかしら)
意地の悪い考えが浮かぶ。
ロイドを困らせたい。困りながらも「それは出来ない」とハッキリ言われるに違いない。
そうしたらロイドへの未練をキッパリと断ち切れるだろうか。
「よく考えてみるわ」
メリルはキースへそう答えた。
ロイドとサイモンが席へ戻って来て、今後のことを話し合った。
まずサイモンからの報告で、祖母へ電話をしたところ、家へ押しかける許可を得たとのことだった。
「で、悪魔ワガナオが封じられている指輪について聞いてみたら、ばあちゃん知ってたよ」
逃げるようにいなくなったサイモンだったが、帰って来たときは落ち着きを取り戻していた。今まで通り、飄々と饒舌に喋る。
変わった点といえば、メリルにも均等に話しかけ、視線を寄越すようなった。しかし目が合うと、少し目が泳ぐ。
苦手を克服しようと努力しているようだ。
サイモンの変化に気付き、メリルはひそかに感激していた。
(取っ付きにくくて話しづらいと思ってたけど、なんか可愛い……)
キースの言う通り、あれは反則だった。
(可愛い女の子と話すのが苦手なんだ、なんて。ほんとあのリップサービスは反則よね。『女の子』なんて久しく言われてないし、まして『可愛い』なんて全然言われないし……)
メリルはふと思った。
(あのトレードマークだった分厚い眼鏡を外しているってことは……もしかしてサイモン、目がよく見えてないのかしら)
それで女性が全員可愛く見えているのだとしたら納得だ。
「ばあちゃん、指輪について知ってたって? 外しかたも?」
キースがサイモンに尋ねた。
「うん、何かね、4使徒の力が必要らしい。気、火、水、土の使徒が集まって、4つの能力を掛け合わせたら、指輪外せるらしい」
「マジで!? すごいじゃん! 外せるって!?」
キースが興奮して身を乗り出した。
ロイドの顔つきも変わった。
「能力を掛け合わせるって、具体的には?」
ロイドの質問にサイモンは
「さあ、詳しいことはばあちゃんも知らないそうだ。今から古い文献を調べたり、知ってそうな人に聞いてみるって言ってた。僕たちが来るまでに調べておくってさ。具体的なやり方は不明だけど、とりあえず4使徒が必要ってのが分かって前進だ。もう3使徒は揃ってるしね」
「サイモンが水の使徒で、ロイが気の使徒ね」とメリルが言った。「あと2人は?」
「ばあちゃんが火の使徒だ。ばあちゃんの弟子も火と水だからなあ。あとは土の使徒がいれば、4人揃う」
サイモンはロイドのほうを見て言った。
「まあ、残る1人も心当たりはあるよ」
ベースにしている元の話があると言え、まるっと書き直ししているので、一気に投稿できませんが、一度完結まで書いたという強みで(ゴールが見えているため)書きやすいです。
完結までお付き合いいただけると嬉しいです!
ヒーローの魅力不足は毎度の課題なのですが、ロイド、キース、サイモンなら誰が人気なのでしょうか。(3人とも人気ナシという可能性もあり)
最終的に消去法で選ばれそうですな。




