目だし帽の男
「急用って……?」
ペンションの外に出て、メリルがロイドに尋ねた。
ガーデンテーブルに置かれたランタンがまだこうこうと灯っており、2人のシルエットを浮かび上がらせる。
「電話で言ってた指輪、まだ着けてる?」
ロイドの質問の意図が読めず、メリルは不審に感じつつ頷いた。
「着けてるけど、それがどうかしたの?」
左手を持ち上げ、薬指にはまっている指輪を見た。
この古ぼけた指輪は、外したくても外れないのだ。
「それは俺が拾った物だ。とっくに忘れてたけど、電話で聞いてどうも気にかかって、聞いた通りにスケッチしてみたんだ。そして思い出した。それは俺が拾った物だ。メリルが失踪したのは、きっとその指輪のせい……いや、俺のせいだ」
「ロイのせいって……どういうこと?」
「説明する。けどとにかく今すぐ、その指輪を外してほしい。それは危険なんだ」
「無理なの。外そうとしても外れないの、この指輪。危険って一体何が?」
ロイドはメリルの左手を取り、指輪に手をかけた。しかしやはり、抜こうとしてもびくともしない。
続いて、指輪の周りの空気が変わった。
ロイドが「能力」を使って、指輪にかかる重力を調整し始めたのだ。
指輪に集中している2人にそっと近づく人影があった。その気配を察知したロイドがばっと背後を振り返った。
足音も立てずに近づいてきた男は、がっちりとした大男で、黒い目だし帽を装着している。
メリルがぎょっとしたのは、その異様な雰囲気だけではなく、男の手に拳銃が構えられているのが目に入ったからだ。
その黒い銃口がメリルに向けられた。
プシュっという音が空を切った。消音銃だ。
放たれた弾丸は空中でピタリと止まり、そこにとどまった。
男は再び引き金に手をかけた。
次の瞬間、ぼんっと爆発音がした。男が持つ銃の先に着いていた黒い筒が破裂し、炎が噴き出ている。男は銃を投げ捨てた。
「空気を操る能力者か。なかなか優秀だな」
「何者だ? 目的は」
ロイドが緊迫した声で尋ねた。
「目的は君と同じ、その指輪だ。指輪が外れるのは持ち主が絶命したときのみ。彼女には死んでもらう必要がある」
「おい、ロイ! なにやって……」
間がいいのか悪いのか、大声を上げながらキースがやって来た。男の視線が一瞬そちらへ逸れ、ロイドが叫んだ。
「メリル、キースのほうへ走れ! キース! メリルを連れて逃げろ! 車で!」




