7話-side クラリス
クラリスのお話です。
今回今までの中で一番長いです。
私は今日もスラムから連れ帰った男の子の寝ている部屋の前に立っている。
彼は先日王都のスラム付近で倒れているところ私とお爺様が連れ帰ってからずっと寝続けている。
私が見つけたときは衰弱し切っていて、今にも死にそうだと子供の私でも理解できた。
慌ててお爺様に伝え、家に運んでもらった。
最初見たときは全身汚れていて、髪の毛の色が判別できないほどだったが、今では綺麗に洗われ、綺麗なな黄金色の髪が光を反射させている。
この子の瞳の色はどんな色なのかしら?
私はずっとこの子が起きるのを待っているの。
寝ている間に死んでしまうなんてしない様に、いつの間にか居なくなってない様に毎日お見舞いに行くの。
そう思いながら私は部屋の戸を開けたのだった。
今日も彼は寝ていた。
始めこの家に来たときは魘されるようにして寝ていたのに、今では穏やかな表情をしている。
君はどんな名前なのかな?君のことを早く知りたい。
そう思いながら私は彼の寝ているベッドの横にあるサイドテーブルの上にある花瓶の花を新しいものと交換した。
あれからまた時間が経ち、あの子がこの家に来てから一ヶ月経った時の事だった。
その日は雲一つない晴天で、私はいつもの様に鼻歌を歌いながら彼の部屋に飾る花を何にしようか選んだ。
今日は花瓶も新しい可愛い物にしようと思い、元ある花瓶を片付けてから新しいのを飾るべく前の花瓶を取りながらの部屋に向かった。
いつも物音一つしない部屋なのに何故か布が擦れる音が聞こえ、慌てて扉を開けた。
彼が起きていたのだ。
彼は寝ている時よりずっと綺麗で、光を反射する黄金色の髪は物語に出てくる金の糸の様で、大きな瞳は翡翠かと思わせるほどに美しい。
あまりにも美しいものだから驚いて口が開いてしまっていた。
やだ!私今すごく馬鹿みたいなかおをしていたはずよ。それに、ジッと見られているわ恥ずかしい。
私は恥ずかしくなって俯いてしまった。
気まずくなり少し経ってから、話を聞かないとと思い話しかけようとしたが、何を聞いたら良いのかわからず、口を閉じてしまった。
でも、何を話したら良いのかしら?
そう何を話したらいいのかと迷っていると、彼の方から話しかけてきた。
「あ、あの君が僕を助けてくれたの?」
私は彼の透き通る様に美しく、それでもって芯のある声にびっくりして肩を飛び上がらせてしまった。
「そうよ。倒れていたけど体は大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。えっと、君は?」
「私は、クラリスよ。あなたの名前は?」
「僕はヴェル」
「そう、ヴェル。よろしくね!」
「よろしく」
ヴェルは穏やかな笑みを浮かべながら手を出してきた。それがたまらなくて嬉しくて私は彼の手を取った。
私が喜んでいるとヴェルが話しかけてきた。
「何で君みたいなお嬢様が僕みたいなのを助けてくれたの?」
私は1ヶ月も前のことだから曖昧なところがあるので少し考えてからその時の話を話し出した。
「お爺さまが貧しい方の為に毎月あそこにご飯を持って行くの。それで、ちょうど私が行く予定だった場所がお爺さまと同じだったから一緒に行くことになったの。その日がちょうどお爺さまがあそこにご飯を持っていく日だったから私もついて行って、馬車の中でお爺さまを待っていたらあなたが倒れるのが見えたからお屋敷に連れてきたの」
そう私が話すとヴェルは少し驚いた様な顔をしていた。
すごい驚いてるなぁと思いながらヴェルを見ていると、扉が開く音がした。
扉の方を向くと、お爺様とグレイソンがいた。
お爺様は私たちがいるところまで来ると、ベッドのすぐ横にある椅子に座り私を膝に乗せた。
その間にグレイソンはヴェルの体を念入りに調べ、一言異常ありませんと言った。
それを聞いたお爺様はグレイソンに頷き、ヴェルに話しかけた。
「…もう大丈夫だよ」
そのたった一言を聞いたヴェルは少し俯き、ポロポロ涙を流し始めた。
私はどう慰めていいか分からずオロオロしてしまった。
迷いに迷った私は、いつも私が泣いている時にお母様ぎやってくれることをする事にした。
___ガバッ
私は勢いよくヴェルに抱きついた。お母様がいつもやってくれる様に背中をトントン叩いてあげるとヴェルは声をしゃくり上げながら泣き出してしまった。
私はヴェルが泣き止むまでトントンし続けた。
気がつくとヴェルは寝ていたので、ベッドに寝かせるのだった。
あれからヴェルはクインシー公爵家で雇う事になった。でも、まだ元気と言える状態じゃないので体調が万全になってから働いてもらう事になった。
今はまだベッドの上で勉強をしている。
最近私も勉強をしている。先生には賢いって言ってもらえるけどヴェルには敵わない。
ここ数日であっという間に敬語を話せるようになってしまった。
今日もまたヴェルの部屋にお見舞いに来ているけど、あっという間に敬語が使えるようになったヴェルにいじけて少し冷たい態度をとってしまった。
「ヴェルは私より賢いのね。私、これでも先生に賢いって言われてるのにヴェルには敵わないわ」
するとヴェルは大人な対応で私を褒めてきた。
「そんなこと有りませんよ。お嬢様は僕より賢いです。僕なんて毎日マナーがなってません!ってグレイソンさんに怒られてばっかりですよ。でも、お嬢様はマナーも作法も完璧です。まさに、ご令嬢の鏡ですよ!」
「でも、私は前からやってたから出来るだけよ!ヴェルは直ぐに敬語を使えるようになったじゃない」
ヴェルの方が出来るのにとても褒めてくるものだから反発的な態度をとってしまった。
でも、ヴェルは怒らず本心だと言うばかりの笑顔で私に語りかけた。
「お嬢様。お嬢様は気付いて無いかもしれませんが、ご令嬢はいえ4歳でマナーも作法も完璧な子なんて殆どいませんよ。正直僕も見習わなくちゃって思ってます!」
その言葉に嘘偽りないのはヴェルの笑顔が物語っていた。
私はいつも公爵令嬢だから好かれていた方がいいと思っている人に理由もなく褒められるものだから褒められると嘘の様に感じてしまう。だけど、ヴェルの言葉は本当だと思えた。
だからだろうか、私は気づいてしまったんだ。
私はヴェルが好き。
自覚と共に自分の頬が熱くなるのを感じた。すると、ヴェルが急にクスクス笑い出した。
「ちょっと!何笑っているのよ!ヴェルのせいなのに!」
「僕はただお嬢様を褒めただけですよ」
「っんもう!」
私は今日もヴェルと笑い合った。
クラリス一応5歳設定なんですけどちょっとませ過ぎですかね?まぁ、私も幼稚園の時好きな子いたので普通なはず笑
ヴェルは鈍感なので気付いてませんよ!