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50話-side アーサー

土日に投稿するとか言って土日じゃなくてすみません笑

来週はテストがあるのでお休みです。


 『頼まれたからだけでは普通やりませんよ。アーサー様、自覚していますよね?彼女の事好きなんですよね?』


 先程ヴェルに言われた言葉が俺の頭でぐるぐると何度も繰り返し再生される。

 思い出すだけで、顔が火照って仕方ない。何で()()()()をしてしまったんだ?そう思いながらも俺は早歩きで廊下を駆けた。


 俺には幼馴染がいる。そいつの名前はメーリン・ミッドフォード。俺と同じ侯爵子息で、同い年の奴。最初はそれくらいの認識だったと思う。

 『メーリンくんは侯爵子息でお前と身分が釣り合うから遊んでいいよ』と親に言われて、会わされただけだったからメーリンとはそこまで仲良くするつもりはなかった。だけど、そいつはよく笑って、泣いて、いつも無視する俺に構う変わった奴だった。そんなんだから俺は何度も会う内に絆されていった。

 そんな(メーリン)は元気で感情の起伏が激しくて楽しい奴だったけど、身体は弱かった。今ではそんなに寝込む事はないが、小さい時なんかは季節の変わり目は必ずと言っていいほど毎回寝込んでいた。

 それを見ていたからだと思ってた。俺があいつ(メーリン)を気にかけているのは、あいつが体調を崩したりしないか気にかけているだけだと。

 まさか、ヴェルの言葉で気付かされるなんて思ってもいなかった。

 でも、よく考えれば普通の幼馴染以上の感情をあいつに持っていたかも知れない。それこそ、俺がチャラ男と言われる所以は、あいつが弱いからすぐ弱小貴族の餌食になると、あいつに近づく女どもを食い散らかして始めたからだ。そう思ってやっていたけど、実は無自覚な俺が心の意のまま独占欲剥き出しに動いていたからなのだろうか。

 俺はいつからあいつを意識し出したのだろうか?そんな疑問がふと頭の中に浮上してきた。しかし、すぐに否定する自分がいる。

 そもそも、自覚したのも今さっきヴェルの言葉でなのに知るわけない。そう、否定したのに、そうではないと否定するもう1人の自分がいる。

 多分、俺があいつを意識し始めたのはあいつが女と知った時だったのかも知れない。


 渡り廊下に差し掛かると、強い風が吹き、中庭の林檎が落ちた。

 俺はその光景を見て、今でも鮮明に記憶している遥か昔の記憶を思い出した。





 あれは確か13歳の陽気な暖かい日が続いた春の日。

 いい天気だから馬で遠乗りでもしないかと、俺はいつも通りメーリンの家へ馬車で出向いた。しかし、その日は何故か、俺が来たと知らせがあるとすぐに飛んでくるメーリンが全然応接室にやって来なかった。30分待っても来なくて、痺れを切らした俺は勝手にメーリンの部屋に向かった。

 メーリンの部屋に行くと、中には誰おらず、まだ忍耐力が無かった当時の俺はこれ以上待つのが嫌で、メーリンをかくれんぼの如く探そうと屋敷を捜索し始めた。しかし、どの部屋にもメーリンはおらず、どんどん奥へ入っていった。

 だいぶ奥に進んだ時、明らかに書斎ですと言わんばかりに頑丈そうな格好いい扉が姿を現した。その格好いい扉に誘われ近寄ると、人の声が聞こえてきて、悪いことだと分かっているけど聞き耳を立ててしまった。


 「お父様、お母様、僕はもう男の子のフリをしたくありません!そろそろ限界です」


 衝撃的な言葉を吐いたその声には聞き覚えしか無かった。俺はこの話は決して知られてはいけない話だと直ぐに理解し、絶対に見つからないように息を潜め、自分の属性である風魔法を行使して遠くから話を盗み聞きした。


 「アーサーと遊んでて思うんです。体力が全然追いつかないって。大きくなったらもっと力の差は歴然となってしまいます。だから、僕はもう男の子のフリは出来ません!」


 メーリンの声は悲痛そうだった。


 「メーリンごめんなさい。私が男の子を産んであげられていないから!メーリン、貴方には酷な話だと言う事は分かっているわ。だけど、貴方が男の子のフリを辞めてしまったら、貴方もお母様も侯爵家から追い出されてしまうわ」


 まさか、そんな事情がこの家にあったのか。その時、俺は唖然とする事しか出来なかったのを今でも覚えている。


 「メーリン、あと少しでいいんだ。あと少し時間をくれないか?お祖母様が社交界から居なくなるまで、それまで男の子のフリをしていてくれないか?それまでにお父様がどうにかするから。もう少し耐えてくれ。家族が家族で居れる為に必要なんだ」


 ミッドフォード侯爵は何か耐えるような声で、力無く言った。


 「分かりました。お祖母様が社交界から居なくなるまでですよからね」


 そう言うとメーリンは書斎から出てきた。

 その後、俺はメーリンに見つからないように忍足で応接室へ向かった。

 それから俺は出来るだけあいつにも出来る遊びを提案した。ボードゲームやカードゲーム、それから女の子が好きそうなピクニック。あいつに気づかれないように、あいつの負担を減らそうと側にいることにした。


 



 中庭の落ちた林檎は転がり視界から消えた。この陽だまりは幼い俺がメーリンを守ると誓ったあの陽だまりに似ている。そう思いながら俺は再び廊下を歩き出した。

 校舎は入るといつものように女が寄ってくる。


 「アーサー様、今夜ご一緒しません?」


 「もちろん、いいよ?」 


 今日も俺はあいつ(メーリン)にバレないように弱小貴族を潰しにかかる。


 

補足:アーサーは女食い散らかしていると言っていますが、薬で相手を眠らせてたりします。

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