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5話 出会いと涙




 部屋に入ってきた少女は僕が寝ていると思っていたのか驚愕と言うような顔をしている。

 顔はとても綺麗な造りをして、大きな紫色の瞳、艶やかな白銀の髪。それなのに、何というかアホ面という様な顔をしていてせっかくの美人が台無しだ。

 そんな風に思いながら彼女をガン見していると、僕の視線に気づいたのか恥ずかしそうに頬を染めながら俯いてしまった。

 しばし沈黙が続き、彼女が僕に話しかけようとしてくれているのは分かるのだが迷いあぐねていたので全く話しかけられない。とうとう居心地が悪くなった僕は仕方なく話しかけてみる事にした。


 「あ、あの君が僕を助けてくれたの?」

 

 彼女は声をかけられるとは思っていなかったらしく肩を飛び上がらせた。

 

 「そうよ。倒れていたけど体は大丈夫?」

 「うん。大丈夫だよ。えっと、君は?」

 「私は、クラリスよ。あなたの名前は?」

 「僕はヴェル」

 「そう、ヴェル。よろしくね!」

 「よろしく」


 そう言いながら手を出すと、彼女は嬉しそうに手を握り返してきた。その笑顔は花が咲いたようにとても可愛らしかった。

 

 彼女のことをよく見てみると、服装からしても上級貴族と思われた。

 何故こんな高位な貴族の令嬢が僕なんかを助けてくれたんだ?ふと、そんな疑問が生まれてきた。

 この状況も知りたいので、正直に聞くことにした。


 「何で君みたいなお嬢様が僕みたいなのを助けてくれたの?」


 僕がそう尋ねると、彼女は少し考えるように首を傾けながら事の発端を話し出した。

 

 「お爺さまが貧しい方の為に毎月あそこにご飯を持って行くの。それで、ちょうど私が行く予定だった場所がお爺さまと同じだったから一緒に行くことになったの。その日がちょうどお爺さまがあそこにご飯を持っていく日だったから私もついて行って、馬車の中でお爺さまを待っていたらあなたが倒れるのが見えたからお屋敷に連れてきたの」

 

 ……なんて、良い子なんだ!!!

 僕が感嘆していると扉が再び開いた。

 そこには、きっと若い頃はさぞモテただろうと思われるダンディなおじ様と、燕尾服を着こなした壮年執事であろう男性が立っていた。

 ダンディなおじ様は僕が寝かされているベッドの横にある椅子に座り、彼女を自分の膝の上に乗せた。

 執事さんはテキパキと僕の体を調べて、異常がないか確認すると、異常ありませんと一言言った。

 その言葉を聞いたダンディなおじ様は穏やかな笑みを浮かべながら僕に話しかけてきた。


 「…もう大丈夫だよ」


 たった一言だった。

 でも、その一言が何故か僕の心に刺さってきた。

 気がつくと僕は、ポロポロと涙を流していた。

 僕が突然泣き出してしまったからクラリス様はオロオロしていた。

 次の瞬間、

 

 ___ガバッ


 僕はクラリス様に抱きつかれていた。

 クラリス様はいつも親にやられるのだろうか、僕の背中をトントンしてくれた。

 それがまた前世の家族を思い出させて涙腺が崩壊させ、涙が溢れてきた。

 そうか、僕はこの世界に転生してからずっと気を張っていたんだ。

 スラムでは頼れる大人はいたけど、みんな生きるのに必死で、支え合って生きてきたけど、やっぱり頼ってはいけない気がしていたんだ。この人達の負担になってしまうって無意識のうちにそう思ってたのかもしれない。 

 前世があるから自分が大人だと思い込んで、レジーにご飯を譲ったりしてたけど、僕はまだ、子供だった。まだ、4歳の子供だと改めて思い出させられた。

 

 僕はクラリス様に抱きつきながら声を荒げて泣いてしまった。泣いたまま疲れて寝てしまったようで、気がつくと最初の様にベッドに寝かされていた。

 

 

 

 

ヴェルくんの前世は高校生のつもり…

おじ様はクラリス様のお爺さまです!


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