49話 恋煩い
あけましておめでとうございます!
本当は土日の間に出す予定だったのですが、機種変をするにあたって時間がかかってしまったばっかりに出せませんでした。すみません!
今年も『死に損ないの王子様〜僕はただの従者です!〜』をどうぞ宜しくお願いします!
夜会の事件から約1ヶ月が経った。その間にダーシー嬢は断罪され、国外追放されたらしい。僕はと言うと、いつも通りの日常に戻り、お嬢様への奉仕プラスαでメーリン様のフォローしていた。まるで事件がなかったかの様に。
そんな中、先日社交会シーズンが始まり坊ちゃんがついに社交会デビューを果たした。そして、現在坊ちゃんは、週末屋敷に帰ってきたお嬢様と僕の前で項垂れている。
「はぁ…」
今朝屋敷に戻ってきた時からこの調子で、アッシュに聞くと、初めて出席したパーティーの後からずっとこの調子のだと言われた。
「あの…坊ちゃん、先程からため息を溢してどうかなさったのですか?」
5秒に一回ほどため息を溢すため流石に気になって聞いてしまった。横を見ると、お嬢様もアッシュも気になっていたが声をかけずらくて声をかけれなかった様で、2人ともうんうんと頷いた。
「そんなにため息吐いてましたか?」
坊ちゃんは、自分がため息を溢している事を無自覚だった様で、僕の問いに戸惑った様に声を上げた。
「ええ、先程からため息ばかりよ。ノア、貴方らしくないわね?何かありましたの?」
お嬢様が心配そうに聞くと、坊ちゃんは気まずそうにそっぽを向いた。すると、アシェルも気になっていたからなのかお嬢様に同調する様に坊ちゃんに詰め寄った。
「坊ちゃん、初めて出席されたパーティーから様子がおかしいと思っていましたが、本当にどうなさったのです?いつも自信満々に何でもこなしますのに、ため息なんてらしくありませんね?」
アシェルが凄い圧で迫るため、坊ちゃんは頬を引き攣らせながら後ずさった。
「もしかして、恋煩いですか?パーティーでいい女性に出会えたんですか?」
前世でため息を吐いていたら友人に好きな人でも出来たのか?と聞かれた事を思い出し、場を和ませる為に給仕をしながら言った。すると、坊ちゃんはもちろんのこと、お嬢様もアッシュも黙り込んだ様で部屋は静まり返った。
やらかした。こっちの世界では通用しないのかと顔を上げると、そこには顔を頬を赤らめ目を節目がちに僕を見て助けろと目配せする坊ちゃんと、その坊ちゃんの様子を見て目を見開いて驚くお嬢様とアッシュがいた。
「え、まじ?」
思わず出てしまった、はしたない言葉はこの際見逃して欲しい。なんたって、いつも忠犬のようにお嬢様と僕の後ろをついて来て、恥ずかしい様なことがあってもへへへっと笑って誤魔化す様なあの坊ちゃんが頬を赤く染め、黙り込んでしまったのだ。びっくりするなとは無理なお願いである。
「あ、いやっ、そんなことは…」
慌てふためく坊ちゃんは初で可愛らしい。
「まさか、僕なんかがそんな、いや、そんなまさかな…」
急に早口になって、何やらぶつぶつ言っているが聞き取れない。だが、この慌て様絶対に恋だ。
パッとお嬢様とアシェルを見ると、お嬢様は目を輝かせ話を聞きたそうにうずうずしていた。一方、アシェルの方は坊ちゃんに好きな人が出来たなんてと涙していた。
「それで、坊ちゃんどの様な女性なのです?」
お嬢様とアシェルが聞くと後々面倒なことになりかねないので、踏み込みすぎない様、慎重に話を進めるるためいち早く声をかける。
「…アラバスター侯爵のご令嬢です」
坊ちゃんは恥ずかしそうに両手で顔を隠しながらもハッキリとした口調で答えた。
アラバスター侯爵と言えば、旦那様と奥様同様に貴族では珍しい恋愛結婚をされていて、愛妻家であり子供をこよなく愛していると有名な方だ。その令嬢となると、婚約出来たとしても苦労しそうだと密かに思った。
「どんな方ですの?可愛らしい方?それとも、綺麗な方?」
お嬢様が興味津々で問い詰める。
「…とても綺麗な方でした。ですが、可愛らしい方でした」
坊ちゃんは嬉しそうに目を細めた。
確か、アラバスター侯爵には3人の子供がいる。息子2人と、娘1人。長男は現在学園で侯爵を継ぐ為勉強していて、次男はまだ幼く、娘は僕らの一つ年上だったはずだ。僕らからしたら一歳上ということは、坊ちゃんにとっては二つ年上に当たる。これくらいの年齢の男はみんな年上に憧れる。坊ちゃんがアラバスター公爵令嬢に惚れるのは妥当だと思えた。
「アラバスター侯爵家は既に長男が継ぐことが決定していますし、爵位的にも釣り合いが取れ、侯爵様自身恋愛結婚している所を考えると、坊ちゃんの頑張り次第では婚約者可能だと思われますよ」
アシェルがやっと正気に戻った様で、冷静に分析した結果をさらっと話した。
僕も同じ考えだ。坊ちゃんは公爵家嫡男であり、アラバスター侯爵令嬢と身分的に釣り合うし、相手もこちらもお家騒動がない。それに、アラバスター侯爵が恋愛結婚な事を考えると、娘にも好きな人と一緒になって欲しいと考えるだろう。だから、これはそのご令嬢の好みと相性の問題。そして、坊ちゃんの頑張りによると思われる。
密かに応援する事を誓い、坊ちゃんに相談ならいつでも乗りますよと声をかけてる。
まさか、この恋が僕らの運命を大きく変える事を今の僕は知らない。
『【連載版】いつだって残酷なこの世界で〜貴族令息の逆行復讐劇〜』も連載中ですので、是非見てみてください。




