4話 二度目の死に損ない
スラムに捨てられてから早4年。
気がつくと僕は4歳になっていた。
「おーいヴェル!レジーと一緒に水汲んできてくれ。はい、バケツ。」
「はーい!ボク頑張るねぇ」
「おお、気をつけて行けよ」
そう言っていつもの様にジュード爺に水汲みを任された。
レジーはソフィの息子で、兄弟同然の存在だ。
ん?喋り方?あぁ、これは見た目子供だし実際羅列が回らないんだよ。いや、まじで。
ってな訳でレジーと一緒に水汲みに行く事になった。
レジーを探し出し、手を繋いで井戸まで向かった。
「ねぇヴェル。ボクもうお腹すいちゃったよ〜。なんでボクらにはお金ないんだろうね?お金がたくさんあればもっとご飯たくさん食べれるのかなぁ」
「そうだね。でも、みんなも同じ気持ちだからボクらだけがわがままなんて言えないよ」
「それもそっか。みんな元気でいれるならいいよね!」
レジーも僕もまだまだ子供なので1日パン一切れは普通に足りない。それでも文句を言えないのはスラムに居るみんなお腹が空いているし、冬なんかより全然マシだと分かっているから。でも、僕は前世で一般家庭だったが、この世界の食事より美味しい食事をしていたからレジーが可哀想になってしまった。
「じゃあ、今度から僕のご飯少し分けてあげるよ。僕小さいから充分足りるからさ」
「え、で、でも」
「いいの、いいの。僕全然お腹減らないから大丈夫だよ!」
「そうなの?」
「うん!」
そんな会話をしていたら、あっという間に井戸に着いていた。
レジーと一緒に井戸から水を汲み、水を渡されたバケツに移し替えた。
バケツを持とうと持ち上げると、僕の力では思いの外持ち上がらなかった。1人がっかりしていると、何も言わずにレジーが僕の反対側からバケツを持ってくれた。
僕は思わずレジーの成長に感動してしまった。
「ありがとう!」
そうレジーに言うと、レジーは少し目を見開いた。
次の瞬間レジーの顔は真っ赤に染まり、レジーは僕から目線を外してしまった。急に熱でも出したのか?
「レジーどうしたの?熱でも出た!?」
「いや、何でもない」
レジーは僕が心配しているのに、頑なに熱じゃないと言い張って来た。
全く聞きいてくれないので、早く休むべく僕達は足早にバケツをジュドー爺の元へ持って行った。
そして、この日から僕はレジーに自分のご飯を少し分ける事になった。
あの日から、僕はレジーにご飯を少し分けている。
あの時レジーに今の食事は僕には少し多いと言ったが、寧ろ足りない。それを分かってて約束したのだが、やはり元から少ない分更に減ると比例したかのように腹も減る。
断食をしているわけでもないのに、断食をしている気分だ。
あ、なんか腹減りすぎて、フラフラしてきた。
アハハ、腹減りすぎて、ハンバーグの幻想が見える。流石に、ご飯減りすぎたかな?栄養失調にでもなったか?
そんな事を回らない頭で考えていると、突然全身の力が抜け、意識がどんどん遠のいていった。
ああ、もう僕は死ぬのか。今世こそは長生きしようと思ってたんだけどな。
目が覚めるとそこは天国ではなく、知らない部屋だった。
触り心地の良いこの布団は絹でできている。
地球でも絹は高価な物なのに、この中世ヨーロッパ風の世界では、さぞ高いことだろう。
そんな風に思いながら自分の身を確認すると、生まれてからずっとスラムで暮らしていた為ろくに体を洗うことすら出来なかった身体は清潔感を帯び、バサバサで汚かった髪は、サラサラになっていた。
こ、これはお貴族様に助けられたのか?
そんな風に思っていると、細かな模様が描かれたドアが開いた。
咄嗟にドアの方を見ると、そこには自分より少し大きい少女が立っていた。