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21話 『いただきます』



 あっという間にお昼の時間になり、僕はお嬢様と共に食堂へ向かった。

 この学校の食堂は、王族や上級貴族などの高位な者から、使用人階級の者まで幅広い身分の者が通っている。

 そんな事もあり、食堂の料理の種類はとても豊富だ。

 僕はいつも通り、お嬢様の分の上級貴族用の日替わりランチと、使用人階級の人用のランチを注文した。

 素早く注文してからお嬢様を空いてる席にエスコートし椅子を引く。そこで丁度時間を合わせたかの様にランチが出来たのを知らせる食券(前世のフードコートでよく見かけるピピピッて鳴る奴)が鳴る。

 混雑してる受け取り口に颯爽と向かいランチを受け取る。

 従者教育で叩き込まれたバランス感覚で人にぶつからない様、尚且つ素早くお嬢様の元へランチを運んだ。

 ちなみに、僕は最初使用人の身分でお嬢様と一緒にお食事など滅相もないと言ったのだが、お嬢様は学園では同級生ですと言って頑として譲らなかったので昼食はご一緒している。


 「お嬢様、お待たせ致しました」

 「ありがとうヴェル」


 そう言うお嬢様は祈りの言葉を捧げ食事を始めた。

 僕は、お嬢様に合わせる様に祈りの言葉を捧げ、前世からのもはや癖となって抜けない『いただきます」をしてから食事を開始しようとカトラリーを手にした。

 小さい頃お嬢様と一緒に食事をした時これをやって随分と不思議がられたが今では慣れたのか何も言われなくなった。

 そんな事を考えながら、本日のランチであるハンバーグを食べようとナイフを入れかけたところで声をかけられ手を止めてしまった。


 「ヴェル、その手を合わせるのは何?」


 そこにいたのは、フィンレー殿下とエイダン様、アシェル様だった。

 

 「え、あぁ、えーっと確か、命を頂き、自らの命にさせて頂きます。と言う意味だったと思いますよ」

 「へぇ、それはヴェルが考えたのか?」

 「いいえ、昔教えてもらったんです」

 「そうなんだ!俺も今度からそれやってみよっかなぁ」

 「アシェル、お前は祈りの言葉をまずはちゃんとやる様にしろ」

 「ハハッ、手厳しいなエイダンは」

 「ふふふ、僕もやらせて貰うよ」

 「私も昔みたいにまたやってみようかしら」

 「アシェル様、殿下それにお嬢様まで!僕の癖みたいなものですから気にしないで下さい!」


 これ以上『いただきます』を追及されると、誰に教わったなど言えない事だらけなのであわあわしていると、殿下達の後ろら声がかかった。


 「あれ、殿下たちじゃないっすか、俺らもご一緒しても?」

 「っちょ、アーサー、勝手に決めるな!クラリス嬢もいるんだ、お邪魔かもしれないだろ!」


 そう声をかけて来たのやはり、アーサー様とメーリン様だった。

 彼らは侯爵子息なのでそれなりに殿下とも交流もある様で是非ご一緒にと誘って来たらしい。


 「それで、僕らが来る前何の話してたんだ?」


 メーリン様が首を傾げて質問して来た。

 その仕草は、其処らの令嬢より遥かに可愛らしかった。お嬢様を除いて!

 横をパッと見ると、一瞬アーサー様が少し目を見開いてる様に見えた。

 今のは、見間違えだったのだろうか?そんな事を考えていると、勝手に話は進んでいて、僕がやってる『いただきます』について話していたとお嬢様が簡潔に説明してくださった。


 「……ですから、私たちもやってみようかしらって話をしたいなの」

 「へぇ、ヴェルくんってめっちゃ真面目なんだね」

 「いえ、ただの癖ですから」


 そんな風に会話をしていると、聞いたことのある声が、あの言い慣れた言葉を唱えた。


 「いただきます!」


 その言葉に反応してパッと後ろを向くと、そこにはアリスが合掌をしながら座っていた。



 

 

 

 

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