20話 牽制
少し長めです。
アリスと教室へ向かって歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
あまりにも気配がしなかったので結構本気でびっくりしたが、後ろを見るとそこにはフィンレー殿下がおり、殿下を珍獣を見た様に驚くなんて失礼に当たると思い、驚きをを悟られない様澄まし顔で殿下に話しかけた。
「殿下でしたか。あまりにも気配が無かったで驚きました」
「そうなのか?ヴェル全然驚いてなかったように見えたぞ?結構上手く気配が消せたと思ったんだけどなぁ」
「で、殿下でしたか、びっくりしましたよ!心臓飛び出ちゃったかと思ったぁ」
「悪かったなアリス。そういえば、ヴェルがクラリス嬢以外の女性と一緒にいるの初めて見たかも」
「ああ、それはどうせ同じクラスなので一緒に行きましょうってなっただけですよ!っね、ヴェルくん!」
「ええ、廊下でバッタリ会いましたので。それに、旦那様に学校生活を楽しみなさいと言われましたし、まずはクラスの方々と仲良くなろうかと思いまして」
「へぇ〜、じゃあ僕とも仲良くしてくれるよね?」
「っへ?」
「僕は王族だけど、この学校では身分は関係ない。学校に居る間は僕と君らは友達だ。だから、フィンって呼んでよ」
「え、しかし、」
「っえ、いや、でもぉ、私達不敬になったりしないですか?」
「ならないよ。というか、僕からのお願いだよ。今ぐらいしかこうやって親しく出来ないからね…」
「殿下…。っわ、私呼びます!」
「え、いいの?…ヴェルは?」
「っう、他の生徒がいない時なら、」
「っありがとうヴェル!」
「では、僕はお嬢様の元は向かいますので、これで失礼します。アリス、フィン」
僕は、そう言って一礼した後、殿下のフィン呼びに戸惑って早足になりながら歩いた。
チラッと後ろを向くと、アリスとフィンが楽しそうに何かを話していた。
フィンを幼少の時から見ているから言える事だが、彼はきっと彼女に恋をしている。
フィンの恋が上手くいけばいいと思う反面、彼がお嬢様の婚約者だという事が僕に複雑な気持ちを抱かせた。
僕は、アリスとフィンと別れた後言っていた通りにお嬢様のもとへ行った。お嬢様に何で遅くなったか聞かれたが、上手くごまかしておいたから大丈夫だと思いたい。
そして今、僕たちは学校始まって初めての戦闘魔法の授業を受けている。といっても、僕は魔力のまの字も出てこないほど魔力が無いので体術の練習をしながら、皆んなの模擬試合を観ていた。
「ハッ!」
「うりゃ!」
闘技場の至る所で生徒達がなかなか激しい戦闘を繰り広げている。
その中でも、やはりアーサー様とメーリン様のペアは桁違いな威力の魔法で戦闘をしている。
「ッハァァァ!」
「ヤアッ!」
アーサー様は前世で言うチャラ男って感じのタイプだけど、魔法が得意なようで先程からバンバン魔法を放っている。それに対するメーリン様は、女の子の様に華奢な体型だけど、その体型を利用して素早く動きアーサー様の魔法を避け、器用な事に反撃もしている。
学校が始まった当初、華奢な体型、男にしては低い身長に、可愛らしい容姿をしたメーリン様は、女の子の様な扱いを受けて嫌がっていた。しかし、体術の授業でバンバン技を出し、剣術の授業では華麗な動きに、素速い動き。もはや誰も女の子だと言うものはいない。なんなら山猿だと言われる始末。
授業が終わり、着替えるため更衣室へ向かう。
その途中で、後ろから話しかけられた。
「ヴェル〜!づがれだぁ」
「お疲れ、ヴェル。お前は筋肉が足りて無いんだよ、メーリン」
「お疲れ様です。確か、メーリン様は少し細くていらっしゃいますもんね」
「いや、君も十分細いからね?それに、僕はこれでいーの。これ以上体重増えたら動きが落ちちゃうからね」
「ったく。そんなんだから身長が伸びねーんだよ」
「うるせえっ!お前なんか彼女達にフラれればいいんだ!」
「っえ、彼女達?」
「そうだよヴェル。こいつ三叉くらいしてるんだよ!いつか地獄に落ちるよ」
「失礼な、彼女は4人だよっ」
そう言ってアーサー様はウィンクをした。
いや、イケメンだわぁ。でも、四又は紳士として頂けないな。
「別に彼女達にフラれても、俺と付き合いたいって言ってくれる令嬢は沢山いるから問題無いよ」
「はぁ、何でこんなんになっちゃったかなぁ。昔はメーリン!メーリン!って僕に引っ付いて来て可愛い奴だと思ってたんだけどなぁ」
「ふふふ、そう思ってるのはメーリンだけだよ」
「?どう言う事だよアーサー」
「今は知る時じゃ無いよ」
そう言うと、アーサー様は1人スタスタと更衣室の方へ歩いていってしまった。
「はぁ?意味分かんなっ」
「何か意味深な感じでしたね」
僕らは顔を見合わせた首を傾げた。
ヴェルはクラリスの従者としてそれなりに体術が使えますよ!全てはクラリスの為笑




