15話 出発
少し短いです。
先日、ペトロニーユさんから受け取った、まだ硬い制服を身に纏い邸を出ると、僕と同じ様にまだ慣れない制服を着たお嬢様と、入学式に参列するために少し粧し込んでいる大旦那様、旦那様と奥様、坊ちゃんがいらした。
ちなみに、旦那様の横にグレイソンさんは立っている。
「…っう、ううっ、お嬢様大きくなられましたね…」
お嬢様の制服姿があまりにも可憐すぎて、思わず口許を覆ってしまった。
「…っ、そうだねヴェル。クラリス、大きくなったな…」
横を見ると、旦那様も僕と同じ様に口許を覆い、薄ら涙目になっていた。
「旦那様、ヴェル…お嬢様が反応に困ってますよ…はぁ…」
「だってグレイソン、こんな小さかったクラリスがこんなにも大きくなって、学校へ通うんだよ!?」
「そうだなぁ、クラリスもヴェルも大きくなったわ」
「はぁ…大旦那様までもか…」
グレイソンは僕ら3人を見て呆れた様にため息を吐いた。
「ふふ、2人とも入学おめでとう。制服もとっても似合ってるわよ」
「お母様、ありがとう」
「奥様、ありがとうございます!」
「お嬢様、ヴェル入学おめでとうございます」
「ありがとう」
「はい!」
奥様とグレイソンさんにお礼を言っていると、僕の制服の袖が後ろから引っ張られた。
「…坊ちゃん?」
見ると、坊ちゃんが僕の袖を握り俯いていた。
その姿はまるで、飼い主に置いて行かれる犬の様。
坊ちゃんの頭に垂れた耳が見えるのは幻覚かっ!?
「ヴェルも義姉も本当に行くのか?」
「坊ちゃん…はい。本日入学式の後、入寮する事になっています」
「…そうか」
坊ちゃんは、今まで毎日一緒にいた僕とお嬢様が居なくなるのが寂しい様だ。
「坊ちゃん、新しく従者を入れると伺っておりますし、週末にまた戻ります!それに、坊ちゃんも来年から学生です。1年の辛抱ですよ!」
「…待ってるから」
「っはい!」
坊ちゃんが可愛い。可愛すぎてなでなでしまくったら怒られた。
坊ちゃんは、この家に引き取られた当初は人見知り全開って感じの子供だったけど、お嬢様と僕が2人で甘やかした結果、犬系紳士に育ちました。
今はちょっと寂しいって言うのがあるのか凄く甘えて来ているけど、いつもは紳士なんですよ!
うちのお嬢様も坊ちゃんも尊い。
1人で悶えていると、もう既に皆んな馬車に乗り込んでいた様で、グレイソンさんに声をかけられ慌てて馬車に乗り込んだ。
繊細な彫刻が施された大きな門。
見えてきた校舎は、前世の記憶を持つ僕からすると学校と言うよりも宮殿と言われた方がしっくりくる。
「あれがブライトホーク魔法魔術学園なのね」
「凄く大きいですね」
「わしが通っていた時から何も変わってないな」
「お祖父様もブライトホークに?」
「ああ、何ならリアンもここの卒業生だぞ」
「そうだよ。ここでミーラに出会ったんだ。まさに思い出の場所だよ」
「お母様とここで…」
そんな会話ををしているうちに式場についていた様で、外を見ると沢山の馬車、正装の貴族。
馬車を降り、人の波に乗って会場の中に入って行った。




