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11話 坊ちゃん



 「新しい家族を紹介する。ノアだ。クラリス、君の義弟(おとうと)だよ」


 旦那様は僕とそう変わらない細身の少年を連れてきて、お嬢様の義弟だと紹介した。

 そう。この子が先日言っていたお嬢様の義弟だ。

 病的な程に痩せており、艶のない亜麻色の髪に紅い目にはハイライトがない様に思える。一体今までどんな生活をしていたんだろうか。

 

 「宜しく、ノア。私が貴方の姉になるクラリスよ」


 お嬢様が声を掛けて、手を出すと坊ちゃんはプイと顔を背けた。

 うわぁ凄い反抗的!そう思いながらあわあわしている横でお嬢様は気にも留めない様子で続けた。


 「早速この家を案内するわ。しっかり付いてきてくださいね」

 「ふん!」

 「ノア行くわよ!」

 「うわっ!」


 お嬢様は坊ちゃんの手を強引に引っ張り笑いながら駆け出した。坊ちゃんは、唖然としながらもお嬢様に渋々ついて行った。

 それを旦那様と奥様が温かい表情で見守ってた。

 僕は温かい気持ちになるのだった。


 慌ててお嬢様と坊ちゃんを追いかけると、2人は温室に入っていった。

 気づかれないよう少し離れたところで待機する。


 「ノア、ここが私の1番のお気に入りの場所なのよ。いつも、ここで綺麗な花を見ながらお茶をするのよ!ヴェルの入れるお茶は絶品なの。今度一緒にお茶しましょうね!」

 「……」

 「ノア?」


 坊ちゃんは俯いて震えていた。

 何か合っては遅い。僕は慌てて2人の元へ駆け出した。


 「お嬢様!坊ちゃん!」


 そう叫ぶと同時にお嬢様が坊ちゃんを抱きしめていた。坊ちゃんは涙を溜めた紅い目を見開きお嬢様を見つめていた。


 「ぼ、僕は、っんぐ」

 「ノア、何も言わなくて良いわ。話したいと思えるようになったら話をしてちょうだい」


 お嬢様が坊ちゃんを抱きしめていた手を解き、坊ちゃんの頭を優しく撫でた。すると、涙腺が崩壊してしまったのかワンワン泣き出してしまった。

 すかさずハンカチを取り出し坊ちゃんに渡すと、ちゃんと受け取ってくれ、それで涙を拭いていた。

 

 「お嬢様、坊ちゃんの目を冷やす為に一旦屋敷に戻りましょう」

 「そうね。ノアいきましょう?」

 

 お嬢様が坊ちゃんにそう聞くと、坊ちゃんは小さく頷きお嬢様に従って屋敷の中へ入っていった。

 

 僕は、お嬢様と坊ちゃんを応接間にお連れし、急いで坊ちゃんの目を温める為のタオルと、お湯、そしてリラックス効果のあるハーブミルクティーの準備をした。

 準備を終え応接間へ向かうと、坊ちゃんは思いっきり泣いてしまったのが恥ずかしかったのか少し顔を赤らめながら大人しくソファに座っていた。お嬢様は、そんな坊ちゃんの様子を微笑ましそうに見ている。

 もうこんなに仲良くなられてヴェルは嬉しゅうございます!そんな風に感動しながらも、坊ちゃんの目を温めたタオルを乗せ、ハーブミルクティーを淹れ始めた。


 お嬢様はいつもの様にスプーンいっぱいに蜂蜜をすくい、ハーブミルクティーに入れる。

 それを坊ちゃんは首を傾げながら見ていた。

 なので、僕は坊ちゃんのハーブミルクティーに蜂蜜を入れながら、蜂蜜を入れると更に美味しくなるんですよ!と伝えた。

 坊ちゃんは、僕からハーブミルクティーを受け取ると、恐る恐る口をつけた。

 ほぉと顔を綻ばせ、たびたびと飲み出した。

 その様子を見て僕とお嬢様は顔を見合わせ笑った。


 「僕、ずっとここにいてもいいの?」


 急にそう言われたものだから僕もお嬢様も驚いてしまったが、おかしくなってしまいに笑ってしまった。


 「な、なんで笑うの!?」


 坊ちゃんが頬を膨らませて怒った。

 うん。坊ちゃん可愛いです。


 「ノア、貴方はもうクインシー家の家族の一員よ。ねぇ、ヴェル?」

 「はい。坊ちゃんは紛れもなくクインシー家の一員でございます」


 そう伝えると、坊ちゃんは少し驚いた表情を見せた後、はにかむ様に微笑んだ。

  

 僕には坊ちゃんが今までどんな生活をしていたか分からないが、今まで辛かった分今からは、幸せいっぱいの人生を送っていただけるよう、お嬢様の従者をしながらサポートして行こうと心に誓うのだった。

 

 うん、まず沢山食べて健康になっていただかなくては!

 僕は、至急坊ちゃんに栄養のある食事を食べていただく為料理人の元へ駆けて行った。

新キャラ登場回でした。


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