草原でのやり取り
何かいきなり始まりました。タイトルがかなり投げ槍ですが、これでいいのです。真剣に見る小説ではないですし。少し、皆様の暇を潰せれば、ただ純粋に面白いと思って読んで頂ければ、もう何もいりません。
パカパカと馬の足音と共に、荷台の音も静かな田舎道に響く。辺りは山に囲まれ、だが地面には綺麗な草原の景色が広がっている。空は白い雲がちらつく晴天、清々しいくらいに綺麗な空気は少年の心を潤した。
田舎道で馬車を引いているのは、二十代前半といったくらいの青年。整えられた黒髪、意思の強そうな瞳と、緩んだ口元から見て外見、優しそうな青年だ。
そして、馬車の荷台にはもう一人、少年が空を見上げながら座っている。銀髪を無造作に跳ねさせ、そのボーッとした目とお世辞には整った服装ではない事から、少年が生活感が無いと分かる。腰には装飾の無い剣が二本。
少年は空を見上げながら馬を操る青年に向けて口を開いた。
「なーアイル、ズミナリスにはまだ着かないのかい?」
アイルと呼ばれた青年は苦笑しながら問いに答える。
「まだだって。周りを見てごらん、一面植物ばかりだ。ズミナリスはもっと都会だよ。君はそんなに早くズミナリスに行きたいのかい、シンク?」
シンクと呼ばれた少年もまた、苦笑しながら視線はそのままにして答えた。
「いんやー、ただちょっとばかしこの風景に飽きた。最初は目を輝かせる程に魅力があったけど、やっぱり何事も慣れる。慣れは飽きを呼ぶってね」
アイルは頷きながら、笑みを浮かべる。
「そうだね。同じ景色を見て四日、流石に僕も飽きたよ。でもまだ二日はこの景色を眺める事になりそうだ。まあ、近くにちょっとした村があるって同業が言ってたから、そこに立ち寄ろう」
その言葉にシンクはげんなりした表情を浮かべ、ため息をつく。彼は心底、この景色に飽きたのだ。
「それは難儀だー。しかし、あの行商の話も胡散臭い。こんな辺境に村を作るなら、ズミナリスみたいな都市に移り住んだ方がよっぽど良いんじゃない?」
「いや、行商は損得勘定で動く生き物。嘘をつくメリットが無いから、あの状況では嘘をつかないよ。それにねシンク、人っていうのは土地に愛着があるもんだよ。まあ君はそんなもの、欠片も無いだろうね」
肩をすくめながらアイルが言うと、シンクは彼の個性であるダルそうな表情を、アイルに向ける。
「そんなもの、アイルにも無いでしょ。旅を続ける行商人、それがアイルなんだから」
「うんそうだね。だけど、僕もいずれは土地に居着くつもりだよ? 店を開くって立派な夢があるんだから」
「けど、その夢はとてつもなく果てない。だろ?」
「うん。土地選びも重要だし、旅癖を直さなければいけない。それに、店を開くにはかなりのお金が必要だ。まあかなり先になるだろうね」
「いい加減気づいたらー? 土地に居着いて商人になっても、そこに待つのは退屈と、旅に対する焦がれだ。デメリットはあれど、メリットは無いよ」
「けど、人は夢を追いかけたい生き物。憧れに近づき、なりたいって思うんだ。シンク、君は夢って無いのかい?」
「あるよ」
「それは良い事だ。よければ聞かせてくれるかな?」
アイルの問いに、シンクは目を輝かせながら、少し身をアイルに向けて言う。
「俺は、この世界の全てを見たい! 異なる文化、宗教、価値観、個性、国を回って色んなものを見たい!」
「うん、それは立派な夢だね。生粋の旅人、それが君だ」
シンクを見やり、アイルは微笑ましい気持ちで優しい笑みを浮かべる。シンクの表面はだらしがなく、やる気も無いように見えるが、奥底には確固たる目的を達成しようとする強い意思が存在するのだ。
シンクは空を見上げ、まだ見ぬ新たな国へと思いを馳せる。