吉澤智代(ヨシザワ トモヨ) 女 27歳
吉澤智代 女 27歳
おっとりしたお姉さん
家事が得意ではないお隣さんが熱で倒れて……
①月曜日
あの～～もしもーし……？良かったあ、目が覚めたんだね？……あ、驚かせてしまってごめんなさい。私201号室に住んでる、吉澤智代っていいます。
急に大きな物音がしたからびっくりしちゃって。どうしたのかな～？と思って様子を見に来たら私の玄関先であなたが倒れてたの。そのまま放っておくことも出来なくって、一旦私の家の中に入ってもらったんだけど。……202号室のお隣さんだよね？
やっぱり！いつも朝早く外出して、夜遅くに帰って来るからあまり会わなかったけれど、かっこいいんだね。
ところで、スーツ姿ということはお仕事に行ってたの？お疲れ様。ちょっと苦しそうだったから首元をすこおしだけ緩めました。あと…とっても熱かったので勝手だけどお熱を計らせてもらったの。…39度4分。この熱は、お仕事に行っちゃいけない高さだと思うんだけど～…
ああ、お節介だったかな、ごめんなさい。でももし、彼女さんがいらっしゃるなら看病して貰ったほうがいいよ？倒れちゃうくらいだから一人であまり動かない方が良いと思うし……。あ、そうなの？じゃあ一人で住んでるなら私とお揃いだね。じゃあお節介ついでにお願いなんだけど、お粥を作ってみたから食べてみない？もちろん無理にとは言わないけど……。あ……美味しい？…ふふよかったあ。じゃあ私、こっちの部屋にいるからなにかあったら呼んでね。
②火曜日
こんばんわあ。吉澤です。今日煮物をたくさん作りすぎちゃったから、もしよかったら～と思って……。わあ、本当？ありがとう。それで、あの、もしよかったらなんだけど夜ご飯一緒に食べない？あのお風邪の一件があってからちょっと心配してたんだけど、やっぱりちゃんとご飯食べられてないんじゃないかなって思って。
……嬉しい、じゃあ来て？…え？格好なんて気にしなくていいよ、私だってほらこれ、完全に部屋着だし！
どうぞどうぞ～、すっごく綺麗っていうわけじゃないんだけど、お掃除は毎日してるから安心してね。えっとじゃあそこに座ってて？……お茶碗と、あとコップはコレでいいかな……。
え？……あ、お部屋？…そうだね、よくふわふわしたものとかピンクのものが好きなんでしょ？って聞かれるんだけど、私自身はそういうわけでもないの。もちろん嫌いでもないんだけどね～。
はい、どうぞ～。おかわりはいくらでもあるから気を使わずに食べてね！いただきます！
……ん、美味しい！…ふふ、それなら良かったあ。…私も毎日食べてる自分の料理なのになんだかいつもより美味しく感じる。
③水曜日
…自炊はもう7年、かなあ、大学生のときに一人暮らしを始めて……。私田舎育ちで、食べることが昔から好きだったの。それで栄養士の資格を取りたくて上京してきたんだけど、やっぱり慣れるのに時間かかっちゃった。
こうやって誰かとご飯を食べられる日がくるなんて思ってもいなかったなあ。ほんと、君が私の家の前に倒れてなかったらこうやって話すこともなかったかもねえ。
いまじゃほぼ毎日一緒に食べてるし…これって、なんだか恋人みたいじゃない？
ふふ、顔真っ赤にしちゃって可愛い。……え？これなに？……っ、ショートケーキ！私だいすき…！でもどうして……
お礼だなんて、私がいつも食べてもらいたいから食べてもらってるだけなのに。でも嬉しい……。他にお願いごと？…そうだなあ…
あ、じゃあ今度は君のお家にも行ってみたいかも。…え？だめ？どうして？……そんなに焦るほど汚いなんて、逆に気になるなあ。お願いごと聞いてくれるんじゃなかったの～？
④木曜日
あ～楽しかった！！ねえどうしてそんなに申し訳なさそうにしてるの～？……確かに思ってたよりも掃除に時間かかっちゃったかな、あれじゃ風邪を引いちゃうのも無理ないねえ。
ずうっと思ってたんだけど、君って家事全然できないよね？食事はコンビニとか外食で済ませて、洗濯はおやすみにコインランドリーでまとめてやっちゃうんでしょう？
ね、私が家事手伝ってあげようか。悪いだなんて、私達もうそんな関係じゃないでしょう？……ふふ、私、君のその困った顔大好きだなあ。
私は私のご飯を食べてもらえて幸せだし、むしろこっちがお礼したいな～って思ってたくらいなんだよ？掃除も大得意だし、ね？丁度いいと思わない？
もう～じゃあ他に何だったら受け取ってくれるの？一緒にお風呂はいって背中流してあげようか……？ふふふっ冗談だよ、じゃ、大人しく私に手伝わせること。や・く・そ・く・ね？
⑤金曜日
ねえみてみて！おネギがこんなに安いよ！…あ、白菜もおっきい～！え？あっごめんね！いつも近くのスーパーにしか行ったことがなかったからこんなに安いところがあるなんて知らなくて…！
まさか君が車を運転できるなんて知らなかったな～。折角のお休みだったのに私のお買い物に付き合ってくれるなんて優しいねえ。でも本当に良かったの？
……ふふ、任せて？美味しいお鍋作ってあげる。あ、見てみて！私このアイス好きなの！……小さいときこれよく食べたなあ。え～？夏も美味しいけど冬のアイスもいいんだよ？
…実家にはコタツがあって、そこで暖まりながらアイスを食べるの。お鍋もアイスも私にとっては美味しくてあったかい思い出。……え？コタツ？ううん、今の家には置いてないの。いつも使ってるあのテーブルだけ。悩んだけどね……一人で暮らすならお布団にくるまっちゃえばいいっか～って思って、結局買わなかったの。それに実家に帰ればあるしな～って……実際はなかなか帰れなくてコタツもご無沙汰なんだけどね～。え？君の家に？あ、もしかしてあのとき、押入れの奥の方にあったダンボールってコタツだったの？……本当に？出してくれる？……嬉しい……ここでまたあの好きな時間を過ごせるんだ。……ふふ、君って、私がして欲しいこと、何でも叶えてくれるね。
⑥土曜日
(咳込む)……はあ、…ふふ。……え～？なに笑ってるかって？……家事が苦手な君が、私のために一生懸命頑張ってくれてるのが嬉しくて、ね。
でも大丈夫……？無理しなくていいからね……？お出汁は……そっちじゃなくて下の一番右の引き出しだよ。そう。小分けにしてあるからすぐに分かると思う。……ありがとう、本当は私が美味しいご飯作ってあげたかったのに……。……役に立ちたいだなんて……ほんとに優しいね。ううん、私は横になってるから凄く楽だよ。君が薬も買ってくれたし、ご飯食べたらちゃんと飲むね。
久しぶりに風邪引いちゃったな……、私一人じゃ心細かったと思う……君が居てくれてよかったあって心から思うよ。……あの日と逆？……ふふ、ほんとだ。あの日の君ほど熱はないけど……覚えてないの？39度4分だよ？あの頃の君は見てられなかったな…お仕事で毎日忙しくて、ご飯も食べられてないし、顔色も悪くって……ついお節介しちゃうくらい。ううん、そんなことないよ。…頑張り過ぎちゃうところは今も変わらないけど、でも……そういうとこ……わた、し……(寝息)
⑦日曜日
完全復活…っ！君のおかげだね！ありがとう～。ほら、なんでもして欲しいこと言ってみて？今度は私がぜーんぶ叶えてあげる！
へ？ぎゅう？……ふふ、もちろん～！ぎゅう～～！今日は甘えんぼさんですね～？どうしたのかな？今日からまた、世話焼きしてあげるからね？覚悟するんだよ～？ってなんだかお母さんみたいだね……えへへ。んー？……お母さんっていうより？…なあに？あ、もしかしてお姉さんって言ってくれるの～？さすが女心を分かってるねえ。じゃあお姉さんが手取り足取り……な、なに、どうしたの？そんな真剣な顔して……。え……こ、恋人……あ、ああそ、そうだよね！前にも一緒にご飯食べるなんて恋人みたいだね～って話してたもんね？……じゃあ改めて、今日からまた恋人みたいに………。ほ、ほんとう……？私を本当に彼女にしてくれるの……？恋人みたいだねって言わなくていいの……？ね、私のお願いも、きいてくれる……？……私にも恋人として、ぎゅうってして……？
