あとがきと補遺(2010年代琉球王国軍概要)
想像していて思ったのは本当に碌でもない世界です。恐らく相当混迷した世界情勢になっているのでしょうし肝心の琉球はボロボロですががまあそうでもしないと琉球は独立しそうにないし独立しても弱体な国家として膨張するチャイナに飲み込まれるのが関の山です。まあだから許して下さいとは言いませんが。
取り敢えず史実との相違点です。
・(最大の相違点)中国国民党に運がなかった。これによって中国の戦争指導がしっちゃかめっちゃかになる。帝国陸軍は大勝利できるけど指導者がいないんだから南京政府なんて作れっこないし占領地統治はもっと恐ろしい事になるので後々泣く。まあちゃんと終わらせるあてもなく戦争を続ける時点で戦術的には勝っていようが戦略的にはボロボロなのは自明ですね!
・これによって連合国内における中国の存在感がますます低下。英米による(というよりアメリカの独善的な)東アジア秩序が形成。
・日本の敗北スケジュールは大陸で勝てたところで変わらない。国民党はボロボロなのでアメリカは史実通り日本と沖縄・台湾を反共の防波堤にするしかない。どの道沖縄がヤバくねって感じになって日本への重視姿勢は史実通り(あるいはそれ以上)になる。朝鮮戦争も起きる。
・沖縄独立の決定による日本・琉球での反米感情の高まり。その後琉球内戦により日本でも社会主義勢力が史実より伸長。また反米感情も高まる。(日米安保改正交渉する)岸信介は泣いていい。
・日本の伸長した社会主義勢力は琉球からの支援によってさらに過激化。最終的には史実通り国民から見放され暴発。その暴発の大規模さによって社会主義勢力自体が大打撃を受け、琉球での動乱から地域的な安全保障環境の必要性が日本でも叫ばれるように。
恐らくこの後EPTO諸国は中国大陸の沿岸部をどうにか抑えることを試みるのではないかというのが見立ですがそこについては多くは触れません。キリがないし琉球王国概論からも外れてしまいます。(一応)経済大国たる日本にも台湾にも琉球にも、対岸が史実世界のソマリアになっているのは悪影響でしかないですからね。
琉球王国の経済については、石垣-尖閣等を拠点とする石油・ガス採掘と全土での観光業(しかし沖縄本島の観光資源は沖縄戦とその後の内戦でどれほど残っている事か……)、あるいは他国から受注を受けたサービス業等で持つ国家となっているでしょう。史実程軍事基地に溢れた国家ではないでしょうがその代り史実より日本からの援助(史実は補助金でしたが)も少なめ、一人当たりGDPも少なめとなるでしょう。大体史実比8割程度なれば御の字ではないでしょうか?人口としては内戦の分で人が減り、国家として多産政策を打ち出すであろうから史実とそう変わらない位(年齢構成は異なるだろうが)の140万人前後ということで。
日本・台湾からの大規模な投資で一気にGDPが爆発的成長を遂げる未来も存在しても良かったのでしょうが、それをやるとやはり2国の実質的な経済植民地ですからこの点をどう処理するかは問題のように思えます。外交的に積極的に発言し近隣友好国を巻き込んでゆく事で自国の利益を確保する等、小国の苦闘が強いられるのは間違いありません。何しろ他が強すぎる。救いなのは周りには平和的な民主主義国家と彼らの共通の敵である無政府地帯しかないことです。
政党政治に関しては余り多くは触れません。保守政党-中道政党の大政党に左派政党が野党として存在する2.5大政党制的なものをとりあえず想定しています。
琉球王国軍概論
1974年独立を果たした琉球王国であるが、王国の安全保障は建国以来一貫してEPTO(東太平洋条約機構)、要するに日米台に依存した体制を採っている。日本と台湾と米国・中国大陸に挟まれた人口150万前後の国家が自分で国を守るということは大凡不可能という割とどうしようもない事実がそこには厳然と存在しているわけであるが、かといって自分で自分をある程度守れない国家は国家ではないというのも事実である。現代ではそれに加えて対テロ戦争に対する協力も加わり、人口と国家予算のどの程度を安全保障に振り分けていくかという課題をシビアにし続けている。
琉球王国軍はもともとアメリカ統治下で独立を果たした琉球共和国軍を非公式の源流としており、内戦期日本や米国に逃れてきた軍人や日本、米国、台湾の軍人が立ち上げに大きな役割を果たしたことは言うまでもない。
琉球共和国時代社会主義国家群への対抗(といっても小規模である以上その役割は限定的だったが)を目指して軍隊が構築されたが、琉球内戦からの革命政権時代の粛清と迷走、日米台による介入による社会主義政権の打破を経て軍は少なからぬ打撃を受けた。再建された王国軍はEPTOの一員として安全保障の一翼を担う事を期待されていたが、それが実際に可能となるまでには20年程度の時間はかかると考えられていた。だがそれまでの間に最大の敵であったソ連は崩壊し、EPTOにとっての脅威は北朝鮮(近年では韓国の独自政策が大きな波紋を生み出している)、限定的には引き続きロシア、そして中国大陸のみとなった。
無論これらの脅威は冷戦期から比べると弱体なものとなり、EPTOは必然的に海外への平和構築を任務に加えなければその生き残りも危うくなった。例えば海上自衛隊は海外派遣と北朝鮮の弾道ミサイル問題が無ければ戦わずして壊滅していたとよく言われる。
だが、琉球王国軍にとって冷戦の終結はあまりにも大きすぎる打撃であった。内戦を経て民衆への弾圧に加担した軍への信頼は文字通り地に墜ちていた。人員を補うために行っていた選抜徴兵制はなんとか維持したが、軍事予算削減の中で何を切り捨てるのか、厳しい選択が続くこととなった。
1990年代から2000年初頭にかけての軍縮に歯止めをかけたのが2001年以後のテロとの戦いと、ロシアや北朝鮮の支援によって大陸内での勢力を固めた満州に代表される大陸問題である。
東太平洋の重要拠点の一つである琉球にもテロの恐れが現実化し始めると軍事予算は久々の増額を勝ち取り、以後現在までGDP2%前後(日本円で640億円前後)の水準を確保している。
現在の王国軍は陸海空・海上警察の3軍+1隊から成り、中国大陸の地方政権軍等による侵攻やテロ、NBC攻撃、災害への対処を主目的としている。予備や国防省の人員を含めて含めて約2.5万人ほどから構成されている。人口の1%を超える(琉球王国は約135万の人口を持つ)軍の規模に対し人口が少ないため、募集で不足する分においては19歳から35歳まで男女を問わず選抜徴兵制を採用している。
また、共和党、共産党統治下での民衆への発砲事件という教訓を生かし、琉球王国警察等と同じく抗命権等の権利が盛り込まれていることや、EPTO下の諸国、特に日本国自衛隊、台湾共和国国防軍などとの連携の深さと組織的生き残りをかけた積極的なPKOへの参加が特徴といえる。
また、積極的に他国軍と連携する一方で沖縄戦や米国統治下での事故・事件、様々な手段での介入といった歴史的要因から琉球王国は他国軍が国内に駐留する事に対し極めて否定的であり、今後もこの傾向は変わらないとされている。
陸軍は島嶼国家故の特性から戦車を保有せず、機動性を重視した軽装備の部隊が中心である。1個旅団を中心に沿岸監視隊や海外派遣を主任務とする部隊等を含め約7500名。有事には予備役2500人が加わる。
海軍は日米台の海軍力に張り合う必要がなく、目立った仮想敵も存在しないため小規模に抑制されておりしばしばその存在意義が問題とされている。対潜哨戒機十数機と3隻の3000t級フリゲート(米海軍から退役したペリー級フリゲートを2000年代前半に購入)と1990年代後半から2000年代にかけて日本で建造された2000t級のフリゲート6隻を主力とし、他に掃海艦や哨戒艇などを揃える。規模は約5000名。
一方で海上警察は巡視船18隻、巡視艇12隻、固定翼機とヘリコプターを8機ずつ保有するが、昨今の中国大陸からの海賊対処事案や台湾・日本・韓国等の漁船の操業問題の増加によってこれらに対する有力な手段として海上警察は重要視されており増強が叫ばれている。規模は約4000名。
空軍は正面戦力としてF-16C戦闘機2個飛行隊とC-130H輸送機数機を備え、広い領海内を警備・救難するために多くのヘリコプターを装備しているが、これに加えて近年陸上部隊の高速展開等の為にCV-22輸送機の購入を決定している。規模は3000名。
以上、お粗末様でした。失踪します。




