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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世界は救われた。1人の男を犠牲に。

作者: 510

「死ねいっ!血河鎌ブラッディサイズ!」




「…っ、旋風刃ヘルブラスト!」





王国歴720年、王龍の月18日。



数々の冒険を繰り広げ、遂に魔王城に辿り着いた俺たち勇者パーティは、魔王と対峙し、激戦を繰り広げていた。



魔王の放つ呪文は、一つ一つが国を滅ぼしかねないレベルのもの。

勇者パーティの魔術師として名を馳せた俺にも相殺するのがやっとである。



物理攻撃は盾役タンクのゴードンが、魔法攻撃は賢者シャリアことこの俺が受け止め、傷ついた分は聖女でありアルティア王国王女のフラメアが回復する。そうやってなんとか被害を最小限に抑えていた。




正直、ジリ貧である。



しかし、こうやって奴の攻撃を止め、隙を生むことができれば…




「…好機!」



俺たちのリーダー、勇者アインがその隙を見逃すことはない。



聖剣を振り抜き、魔王の胸部の魔石に亀裂が入る。



「グ…こ、この儂が…魔王たる者がたかが人間に敗れるなど…!」



「そうやって俺達を舐めたのが貴様の敗因だ、魔王よ。」



アインはそう言い捨てると共に再び聖剣を構え、魔石を真っ二つに両断した。



「グハァッ!き、貴様だけは許さんぞ…勇者ァ…せめて地獄へ道連れにしてくれようッ!」



その時、確実にアインは油断していた。

心臓部に当たる魔石を両断された魔王に出来る事など無いと高を括っていたのだ。



当然、パーティの皆も同じだっただろう。



だが、俺は違う。



勇者の仲間になる条件として俺は、王国からあらゆる魔術の研究をすることが許されていた。そのため、命を代償に使う、所謂禁呪と呼ばれる類のものについても相応の知識を持っていた。




だから、死に際に魔王が何かしてくることくらいは察知していたのだ。

そしてその"何か"がどういうものかも、大体当たりをつけていた。


疾風迅雷ヘルメス!」



アインの元へ風魔法で加速して近づき、そのままの勢いで突き飛ばす。



「…!?シャリア、何を…!」


魔王の指先から放たれた魔弾は確実にアインを捉えており…しかし急に方向転換することは無く、先程までアインがいた場所…


要するに、俺に向かって一直線に飛来した。



「…ッ!!!!」



身体中に焼けるような激痛が起こる。


風魔法の勢いのままに石床に倒れこみ、情けなくも大声で叫びながら頭を抱え、のたうちまわる。



「シャリアっ!一体何が…」


「姫、お待ち下さい!シャリアはどうやら魔王の最後の魔術を受けたようです。下手に近づけば命に関わります!」


「…っ、でも、私は姫である前に一人の癒し手よ!ゴードン、そこを退いて…!?」



魔王が最後に使う魔術は、恐らく魂の完全な消滅をもたらす禁呪、【滅殺エクスキューション】だと俺は予想していた。



だが…ああ、予想は残念ながら外れたようだ。この術式には覚えがある。



魔王軍四番隊指揮官、呪怨のクラリッサが、囚われていた各国の姫に使っていたもの、それの上位互換だ。



確かにこれは勇者であるアインが食らってしまえば死ぬよりも面倒なことになるだろう。それに、あの時と違って解呪も見込めそうにない。



ただ、まあ。



これなら俺が死ぬだけでなんとかなるか。



使われた術式の名は【変貌エクスチェンジ】。



その時、俺の人としての生は終わり、









代わりに新たなる魔王が誕生した。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







「…!シャリア、その姿は…?」



艶やかな黒髪は透き通るような白髪に。

纏っていたローブは血管のような管が通り、時折不気味に脈打っている。



…どうやら自我は保たれているようで何より。


俺はもう人では無い。魔王の権能を持つ立派な魔族だ。



精神に強い負荷がかかるのが分かる。魔王の残留思念が俺を操ろうとしているのだ。



しかし、禁呪の研究、行使が功を奏したのか、思ったよりも抵抗できている。



今のうちに…



死ななくては。



今は抵抗できていても所詮は人の魂。

魔王の干渉に長い間耐えられる筈もない。



今、俺が俺であるうちに、殺してくれ。



アイン、頼む。



「クク…勇者の体でないのは残念だが、これほどの力があれば十分だ。さあ、第2ラウンドと行こうか…!」



「!?シャリア、まさかお前…」



「シャリアさん、どうしたというのですか、その姿は!まるで、まるで魔族のような…」



「姫。恐らくもう、シャリアは…」



「ーーーー!」



フラメアが目を見開く。


「ふむ。この者の名はシャリアというのか。残念だったな。この者の自我は既に魔王たる我が捻り潰した。今ここにあるのは只の骸よ。」



「…魔王、貴様アァーーーーッ!」



我ながらクサい芝居をした者だと思う。


だが、こうでもしなければアインも、ゴードンとフラメアも俺を殺してはくれない。



全く、いい仲間を持ったものだ。



「さあ、かかってくるがいい!この骸の事を思うのであれば、せめて殺してやるがいい…出来るものならなァ!」



四つの魔法を同時に展開し、アインに集中放火を浴びせる。人だった頃は到底出来なかったことだ。魔法使いの俺がいない今、この身に宿る魔王の力に身を委ねれば、アインの剣も、フラメアの聖魔術も、ゴードンの盾もすべて無に帰す事が出来る。



でも、俺はそこまでして生きたくはない。





ゴードンは、気難しいけど優しいヤツだった。よく捨て猫を拾ってきては、泣く泣く野生に帰していたものだ。



フラメアは、お淑やかに見えるけど、そんな事ない。魔法を使うのが面倒で、よく素手で戦っていた。正直、聖女なんて向いてないと思う。



そして、アインは俺の幼馴染だ。



昔からあいつは完璧な人間で、俺はいつも後ろをついて行っていた。

勇者に選ばれた時も、驚かなかった。むしろ、そりゃあそうだろうと思った。


アインと一緒に旅をするために、俺は魔術に傾倒していった。俺の向かいの家に住んでいた元宮廷魔術師のベルンさんに教わって、勇者の神託から2年、旅が始まるまでになんとか間に合わせたんだ。




みんな、俺より強い。俺より必要とされている。何より、



俺が、みんなに生きて欲しいと思ってる。



拮抗した勝負の中、アインが渾身の一撃とばかりに大ぶりな攻撃を繰り出してきた。



普段ならこんな隙だらけなことはしない。



俺が敵になって、動揺してくれてるんだろうか。




そうだったら…いいな。



剣が振り下ろされ、俺は一切抵抗せずに切り裂かれた。


「…!?」


アインも、今の攻撃が当たるとは思っていなかったらしい。困惑が顔に出ている。



大振りなだけあって、しっかりと致命傷になってくれた。流石はアインだ。その場に崩れ落ちるように倒れると、アインが俺を受け止めた。



「ふふ…流石は勇者だな…」


「…シャリア、どういう事だッ!」


「…いやあ、バレたか。」


「あんな攻撃、お前ならすぐに躱せただろう!なんで、なんで避けてくれなかった…!」



どうもこいつ、途中から俺だとわかっていたらしい。大方、峰打ちでもしようとしていたんだろう。全く、真剣に芝居をしてたこっちがバカみたいじゃないか。



「…聖魔術が、効きません…何をしても、治らないなんて…!」



そりゃあ、魔族に聖なる魔法なんて逆効果だろうよ。



「…俺は、魔王の最後の魔法で、新しい魔王になった。俺の精神はまもなく魔王に乗っ取られる。そうなる前に止めるには、こうするしかなかったんだ。」



「だからといって…お前が犠牲になる必要なんて!」



ついにアインが泣き出した。らしくないな。



「おいおい、泣くなよ。お前にひっついてた金魚のフンが一つ減っただけだろ?姫も生きてる。お前も生きてる。故郷のみんなも全員無事だ。この上ないハッピーエンドじゃないか。」



「本気で…本気でそう言っているのか!お前は…俺の…!」



しかし 、完璧なヤツが泣きじゃくるのは見てて面白いもんだな。




「あー、ヤバい。意識が飛びそうだ。アイン。俺の墓はあの木の下に建ててくれよ。よく一緒に遊んだだろ?覚えてるか?」



「…覚えてるさ。でもそんな事してやるもんか。絶対に死なせないからな…!」



「…無駄だよ。心臓部の魔石が完全に砕けてる。生物として、俺はもう成立してない。今喋れてるのは…延命用に仕込んどいた魔法のおかげだ。それももう切れる。」






ゴードン、フラメア、…アイン。




今まで本当に楽しかった。




でも…







「平和になった世界…お前達と一緒に見たかったよ…」









魔石が、完全に砕け散った。




















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜










さて。状況把握に移りたいと思う。






気づけば俺はベットに横になっていて、アインが覆いかぶさるようにして抱きついてきている。



ベッドの横には、渋い顔をしたゴードンと、目を覆い、指の隙間からこちらを見ているフラメアがいる。



…どうしてこうなった?



「…おい、アイン。」



「なんだ、シャリア?」



「俺、死ななかったっけ?」



「死んだな。」



「今、生きてるよな。」



「そうだな。」



「……なんで?」



「…俺の寿命、半分お前にやった。」






は?





「…それ、禁呪だよな?なんで使えんの?」


「お前が持ってる本に書いてあったから。見よう見まねだけど、成功した。お前の魂は今俺の寿命でできてるから、魔王の力も残ってない。」


「…これだから天才は…」


色々と聞きたいことがあるが、それは置いておいて。


「…で、なんで抱きつかれてんだ?俺。」


そう。先程から俺に覆い被さっているこいつをどうしたものか。



というか本当に何があった。



あのクールで完璧なアインが緩みきった顔で頬を擦り付けてきている。正直言って、変わりすぎて気持ち悪い。

いや、イケメンだからそんなところも絵になるのだが、それはそれとして。



「ああ、それは俺から説明させてもらう。」



ゴードンが心底嫌そうな顔で話し出した。



「お前には言っていなかったが…魔王討伐をアインに引き受けてもらうにあたり、二つの条件を提示されたんだ。」



「条件…?一体どんな…」



「一つは、お前を同行させること。これに関しては、もともとお前が勇者パーティの最有力候補だったから、特に困ることはなかった。…俺も、お前がいてくれてよかったと思っている。」



…少し驚いたが、それほど不思議ではない。仲間を選考する段階で、既に俺は王都でも有名になっていたからな。どっちかというとゴードンがデレたことの方が驚きだ。



「そしてもう一つが…その、なんというか。かなり言いづらいのだがな。」



「…気になるだろ。早く言えよ。」






「えー、二つ目は、お前との…結婚だ。」





はい?







…え?



「そういうことだ。俺の気持ち、分かってくれたか、シャリア?」



「け、結婚って、お前、俺は男だぞ!女みたいって言われるけど、ちゃんとアレもついてる!」



「知ってるよ。小さい頃一緒に風呂入っただろ。全く、興奮を抑えるのも大変だったんだぞ?」



「………」



ええ…俺こんな奴知らない…



「えっと、マジで?いや、本当に。嘘…だよな?」



「な訳ないだろ。それなのにお前、自己犠牲なんて馬鹿なことしやがって。お前がいなきゃ世界を救った意味なんて無いだろ。」



「あ…それは、すまん…。」



「で、もう婚約は済ませてあるんだ。ヤル事は一つだよな?」



………え?



「えっと、あの…同性婚って認められてないし…ヤルって、まさか?え?」



なんか太腿のあたりに固い感触が。



「大丈夫、特例だ。そんでもって、お前の予想通りの事をするつもりだ。」



「あー、うん。ごゆるりと。」



真っ赤な顔と荒い息でこちらを凝視するフラメアをゴードンが若干雑にドアの外へ連れ出し、扉を閉めると、部屋の中には俺とアインの二人きりになった。



「さ、二人きりになった事だし……





ヤろうか!シャリア!」





その日、俺の◻︎◻︎◻︎◻︎(放送規制)は儚く散ることとなった。



めでたしめでた…し?


まあ、ソッチの犠牲ってことです。はい。

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