第6話 結論
「なら…………こうするのはどうかな?」
「コルド?」
「誰かに教えを請うというのはどうだろうか? プロの冒険者でもカイトほどではないにしろ運の悪い人はいるそうだし……誰かに教えてもらえば少なくとも落ちこぼれからは脱却できるんじゃないのかい?」
「成程。それは名案じゃないかい?」
コハクもコルドの意見に賛成する。
「でも……Dクラスな上、二年生にしてレベルⅠのあたし達の話に取り合ってくれる人、いるかしら?」
「……難しいだろうな」
ミアの言葉に俺が同意した。
リリーディア中央学院ダンジョン攻略科は百六十名程度の人数が毎年集められ、それをAクラスからDクラスまで分けられる。
二年までならそのクラス分けに能力は関係ないが、二年からはAクラスから順に能力差によってそのクラスが分けられる。
そして、Dクラスの能力は最低値、つまりは落第寸前のメンバーで構成されている。
これは差別ではない――――区別だ。
プロの冒険者は誰でもなれるわけではない。毎年行われている厳しい国家試験をパスする事でようやく各ダンジョンへ入る資格を得る事ができる。
さらにそれでようやくプロへの入り口に立つ事ができるだけで、そこから活躍するトッププロになれるのはごく僅か。
つまりはここでAクラスに入っていないものがトッププロになるのは非常に厳しい。
そして――――レベル。これもまた俺達の能力を分ける一つの基準だ。
ダンジョン攻略科では学院での成績、実績などに応じて生徒達全員のレベルが分けられている。
そのレベルはⅠ~Ⅴまで。一年の頃から落ちこぼれだった俺達のレベルはⅠ。Aクラスともなればその平均はⅢ程度まで上がる。
ちなみに俺達の学年でのトップは堂々のレベルⅤ。……まあこいつに関しては化け物の類なので例外中の例外だが。
そして問題なのはこれらのクラス分けやレベル分けで教師による生徒への教育水準に差が生じるという事。
例えばAクラスともなればパーティ毎に直接の講師がついて指導を受ける事ができる。
しかし、Dクラスにおける担任は一人だけ。冒険者を指導できるほどの人員が足りていないからこその処置だが、やはりこの区別は落ちこぼれから脱したい俺達にとっては相当の重荷だ。
「ならそうだね……フィスティア先生に教えを請うというのはどうかい?」
「…………フィスティアか。お前、それ本気で言っているのか?」
コハクにそれを聞き返すと、コハクは笑顔でこう言う。
「もちろん冗談だよ」
「だよなー……」
フィスティアが俺達にまともな指導をするとは到底思えない。
あの脳筋相手だと「一撃ですべてを粉砕しろ」とか「力に全振りだ。ほかの能力の一体何が必要なのか」とか色々意味不明な事を言われそうだ。
……いや、最悪、奴のスパーリングの相手なんてやらされる可能性がある。取り敢えず却下だ。
「つまりはそう簡単に解決できる問題ではない、という事だね」
あっけらかんとした様子でそんながっかりするような結論を出すコハク。いや、それはそうなんだが……。
「待て。お前のそれは簡単に改善できる事だろうが」
脱がないというその一点だけ守れば改善できる。それだけの話だ。
「それはさて置き」
コハクはそう言って話を変える。こいつのこう言う図太さは見習わないといけない点が多くあると思う。
「帰りに気分転換でもどうだい? いい雑貨屋があるんだ」
「雑貨屋? いいのか? 今はそんな場合じゃ――――」
「あの『スケスケ望遠鏡』もその雑貨屋で見つけたのさ。何かと掘り出し物が多くあって楽しいよ」
「付き合おう」
俺はコハクの話を聞いた直後にその雑貨屋まで付き合う事に決めた。
正直言って「落ちこぼれ」云々は今に始まった事じゃない。
打開策を練るのは当然だ。でも、それは今でなくともいい。
今は有用な「掘り出し物」がないかを探し出さないと!
……つうかホークの使ったとか言うあの『スケスケ望遠鏡』はやはりこいつの持ち出し物だったのか。こういう胡散臭い物を持って来させたら無駄に才能を発揮する奴だ。
そんな中、
「ちょっと、カイト。その『スケスケ望遠鏡』ってなんの事? あたしにもなんの事か教えなさいよ」
ミアがその話について尋ねて来る。
……厄介な奴に嗅ぎつけられてしまった。
コハクに目を向けると奴は楽しそうな表情を浮かべていた。
……こうなる事を見越してみんなの前で誘いやがったな。
まあ、いい。こうなれば強行突破だ。
「さあ、コハク、コルド! その雑貨屋って奴に行こうぜ」
俺が二人を連れ立って歩き出すと、当然ながらミアもついて来る。
「ちょっとカイト! また変な事する気でしょ! なんか変な物買おうとしたらあたし、止めるからね! そういうの駄目なんだから!」
『スケスケ望遠鏡』並みに使えそうな掘り出し物があったら絶対手に入れよう。
そう誓いながら俺はコハクの案内で件の雑貨屋に向かうのだった。