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第2話 クラスメイト

「やあやあ、先程ぶり。さっきは失礼したね」

 快活そうな印象を受ける黒髪ショートカットの「美少女」がそんな事を言いながら笑みを見せる。もしも俺がこいつの事を知らなかったら制服のスカートから伸びる綺麗な足を見ただけで惚れていただろう。そんな事すら思わせるほどの外見を持つ「美少女」。


 さらにスカートは下着が見えてしまうのではないかとこちらが慌ててしまうほどに短い。さらにちらりと覗かせる鎖骨や右手を挙げた時に見える腋などから一々色気が漂って来る。




「何やら面白そうな話をしているね? ボクも混ぜてくれないかい?」

「断る」

「どうして!? うぅ……カイト君がボクを除け者にするよぉ……」

「どうせ『スケスケ望遠鏡』だとかそんな話してるから寄って来たんだろう? 前にも言ったが見た目美少女の癖に実は男のお前と猥談する気は一切ないからな」

 俺は憮然とした態度を示しながらそんな事を言う。



 そう。この見た目こそ美少女に見える奴――コハク=ナルミアは実はこれでいて正真正銘の男だ。



 さらにそれでいて猥談などには積極的に絡んで来ようとするし、さらには自分のエッチな身体を自覚しつつ、それでからかって来るのだから性質が悪過ぎる。



 こんな奴と猥談して変な気分になった挙句、何かの迷いで変な事になりでもしたら…………ああ、想像しただけで怖い。怖過ぎる。



 コハクはがっかりしたような顔を見せていたかと思うと、一転して何かを企んでいるかのような笑みを浮かべる。




「ふふ……相変わらずカイト君は根が真面目だねぇ……いいじゃないか、ちょっとくらい。ボクはこれでも猥談は大得意なんだよ? なんならパンツくらいならいつだって見せても構わないさ。今日はちょっと自慢の勝負下着だからねぇ、ほらほらぁ」

 コハクは短いスカートの端をちょこんと持ち上げるとちょっとだけ持ち上げる。それにより健康的なこれ以上なく太腿が露わになる。



「やめろ……そんなもんを見せるな」

「カイト君、手で目を隠しているつもりだろうけれど、その隙間からこっちを覗いているのが丸わかりだよ?」

「くッ!」

 これだ。どう見ても見た目は美少女なのだ。だからこそこいつがからかって来たら思春期真っ盛りの純情少年である俺達に抗う術はない。



 隣のコルドなんて最早体育座りでもしようかという程、股間の膨らみを気にし始めている。



 自分に言い聞かせるんだ! こいつは男……こいつは男……。




「カイト! あんた、またエッチな事をしているんじゃないでしょうね!?」

 そんな中、もう一人が俺達の会話に加わって来る。



「もしも不純な事をしているようだったら……このあたしが幼なじみとして容赦しないわよ!!」

 見た目には勝気な少女に見えるこいつの名前はミア=トールスタック。クラスメイト兼同じパーティーを組んでいる仲間兼幼なじみというそれなりに深い関係性になっている少女だ。



 赤髪のポニーテールで、目はその暴力的な性格を反映したかのようなツリ目。そして、特徴的なのはそのスレンダーな体格だ。と言うか男であるはずのコハクよりも胸がないように思えるのが不思議だ。それくらいの極薄貧乳女。



 ちなみにこいつに貧乳と言うとそれはもう烈火のごとく怒る。殺されては生き返させられて、また殺されるを繰り返される事請け合いだ。



 とは言えこいつの特徴的な部分はそれだけではない。




「お前、手の指どうしたんだ? なんか包帯でぐるぐる巻きになっているみたいだけど」

「これ? …………えっと、ほらさっきあんたの目を潰してやったでしょう? その時にちょっとケガしたのよ。爪剥がれて、骨折れてね」

「それはちょっとケガしたってレベルじゃない」

「私にとってはちょっとケガしたってレベルなのよ」

 そんな事を平気な顔で言うミア。


 実はこの女は勝気な性格の癖にちょっと信じられないほどの虚弱体質だ。


 歩いて転んでその拍子に骨を折ったなんて言うのは日常茶飯事で、寝返りを打った拍子にすら骨を折った事のあるという前代未聞の記録を持っているのはもうお笑い草でしかない。



「と言うか早く回復魔法を使えよ」

 俺はミアにそう言う。こいつのダンジョンでの職業は『僧侶』。その理由は当然日常生活での実用性重視だ。そもそもこいつが前衛なんてした暁には剣を振っただけで脱臼しかねない。



「魔力が回復したらすぐに魔法使うわよ。さっきあんたに回復魔法使ってあげたからこっちの回復遅れてんのよ。それぐらい分かりなさいよ」

 そう言えば保健室に行く前に軽い応急処置とか言って回復魔法掛けられたっけか。



「そうだったな。……いや、それより先に自分回復すべきだったんじゃねぇの?」

 「冒険者」としての鉄則として回復役は何よりも自分を優先すべきだ。何せそいつが死んだら誰も回復してくれる奴がいないんだからな。

 すると、それを聞いたミアの顔が見る見る内に赤くなっていく。



「そ、そんなの分かっていたわよ! けれどまあ……あ、あれよ! あの時はあたしの回復まで魔力が持つと思っていたのよ! 本当それだけよ、それだけ!」

 ミアは手をぶんぶんと振りながらそんな言い訳を重ねる。



「いや、まあ今度から自分優先にしてくれよ」

「うん……ありがと。その……えと、心配して、くれて」

「いや、じゃないとまた課題失敗しそうだし」

「…………カイト。あんたはホント、一言多いわよ」

 ミアはそう言ってため息を吐く。



「ふふふふ……カイト君はいちいちフラグを立てては圧し折っていくね。そういうところ、ボク好きだなぁ」

「なんの話だ、なんの」

 コハクのツッコミにいまいち意味が分からずそれを問う。



 しかし、

「分からなければいいのさ。その方が楽しいからね」

 コハクはそう言っていつものにやけ顔を浮かべていた。



 よく分からん。こいつは一体何を言っているんだ。



 そんな風に俺達四人はいつものように何気ない雑談をしていた。そんな時の事、



「貴方達! ちょっと宜しいかしら?」



 俺達四人の前に一人の少女が仁王立ちをしながら躍り出る。

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