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プロローグ その②

 俺達八班は現在、学院の地下にある学院公認ダンジョン『蛇の間』に潜って与えられた課題をこなしている最中だった。

 課題の内容は地下十Fまで踏破する事。


 この課題はそう難しい内容ではない。現に俺達以外の班はみんなこの課題をすでにクリアしてしまっている。


 しかし、俺達はこんな簡単な課題にすら苦戦してしまっていた。



 『蛇の間』は学院の地下に続く階段から降りる洞窟型のダンジョンだ。薄暗くジメジメとした嫌な雰囲気漂うダンジョンで、所々に設定してある燭台に火がともされている以外には光源もない。


 だが、このダンジョンはかなり初心者向けのダンジョンだ。出て来るモンスターも低級のものばかり。正直俺達の一つ下の学年である一年であっても問題なくこなせるかも知れない。それくらいの難易度。


 そんなダンジョンで俺はもう四回も死んでしまっているのだ。


 だが、それで落ち込んでいてはそれこそ剣の冴えが鈍ってしまう。


 前衛である俺が死ねば、それだけでパーティーは瓦解する。



 だからこそ俺がしっかりしなければ……そう思っていた。



 そんな矢先の事だった。



「あれは……スライム?」

 大きくぶよぶよとした透明色の物体が俺達の前に這って現れた。



 スライムと言えば前衛の物理攻撃が効かないものの、それ以外はそこまでの脅威でないモンスターだ。それにあの大きさくらいなら取り込まれた挙句に全身を酸で溶かされるような心配もない。



 遠距離魔法の遣えるコルドにお願いして遠くから焼いてもらえればそれで済む。至って対処のし易いモンスター。


 それをコルドに頼もうとすると、俺はコルドの様子がおかしい事に気づいた。


 よく見ればコルドの目の色が変わっていた。まるで財宝でも見つけたかのようにキラキラと光り輝いている。



「おい、どうした?」

 俺の言葉にハッと我に返ったコルドは、スライムに目を向けたまま俺に耳打ちして来る。



「カイト……あのスライムを知っているかい?」

「スライム? いや、ほかのスライムとなんか違うのか?」


「なら君にいい事を教えてあげるよ。あれはトランススライムと呼ばれる希少種なんだ」

「トランススライム?」

 俺がその言葉を繰り返すや否や、コルドは俺の口を急いで塞いだ。



「馬鹿ッ! 不用意に声を出すんじゃない」

「……んむ、むっ、……わ、分かった」

 コルドの尋常ではない様子を察した俺は囁き声になる。



「……で、どういう事だ?」

「まず前提としてあっちの二人には聞かせたくない」

「なぜ?」

「エロい事だからだよ」

「心得た」

 俺は即座に状況を理解して、彼の言葉に全神経を傾ける。


 コルドは基本ムッツリだが、だからこそこうしてわざわざエロい話を持ち掛ける場合においては誰よりも信頼できる。



「それで?」

「うん。あのトランススライムと言うのはね、ほかのスライムとは違ってある特性を持っているんだ。それは見たものの形を真似るという特性だ。敵に擬態してその場を穏便に済ませたり、それを利用して敵を襲ったりする……いわゆるそんな特性だ。形、色、艶、感触までそれはもう見事に変身してみせるそうだ」

「ほうほう」

「それをだよ。例えば女湯に放り込んだら…………どうなると思う?」

「オッケー、すべて察した」


 このトランススライムを女湯に放り込んだら……それはもう素晴らしい事になる事請け合いだ。



「僕もあれは文献でしか見た事がなかったけれど……、もしも見掛けた時は絶対に見間違えないようにしようと思い、その特徴をすべて脳髄に叩き込んでいたんだ。だからこそ絶対に間違えない。すべての特徴があれがトランススライムだと告げている」

「さすがだ。じゃあ……あれをどう捕獲する?」

 当然とばかりに俺は捕獲する話をコルドに持ち掛ける。



「当然だけど魔物を捕獲し、あまつさえ持ち帰るのはご法度だ。しかし、それだけの価値があのスライムにはある」

「もちろんだ」

「だけど、それならばあっちの二人にバレる訳にはいかない。そうだろう?」

「分かった。俺が時間を稼ぎつつ、あっちの二人の気を逸らす。お前はそのあいだにあのトランススライムを捕まえてくれ」

「了解」



 頷くコルドとともに俺は即座に行動に移す。


【後書き】

本日は夜にも再度更新すると思いますので、良ければ読んでやってください!


------------------------- 第2部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

ポンコツ冒険者パーティー その②


【本文】

 まず俺はトランススライムとミア、コハクとのあいだを分かつようにして立つ。


「どうしたのよ? あのスライム、早く倒さないとまずいんじゃないの?」

 ミアがそんな風に眉根を寄せる。


 しかし、俺は静かに首を振った。



「なぁ……争いって、虚しくはならないか?」

「どうしたのよ、急に」

「俺はあいつの……あのスライムの清らかな態度を見てすべてを察した――――あいつは決して悪いスライムじゃないと!」

「…………は?」

 ミアは明らかに俺を異常者扱いしていた。


 しかし、そんな事は些細な事だ。



「分からないか!? お前も見ろ、あいつの姿を! あの清らかな透明感! あんなモンスターとなら友達になれると思うだろう!?」

「いや、あのスライム……すっごい獰猛そうに見えるんだけれど。今にもあんたの背後から襲い掛かって来そうだけれど」


「それはミア。お前の心が清らかではないからだ。もっとあいつと友達になりたい……そんな目であいつを見てやってはくれないのか?」

「なんだったらもうあんた、今この時もあいつに襲われているわよ? 強酸を背中に吐かれて嫌な臭いと音がしているわよ?」


「いや、気の所為だ。この肉が焼けて爛れるような痛みは単なる気のせいだ」

 実際には背中の肉が溶けて来て死にそうだった。


 いや、ちょっと待って痛過ぎない? ちょっと死ぬんだけど!? スライムと友達になろうとしたらその友達(予定)に殺され掛けているんだけど!?


 しかし、背中に強酸をぶっ掛けられたくらいで悲鳴を上げてなんかいられない。何せこのトランススライムと友達になればおれは世の美女達全員とイチャイチャできるのと同義。そう言っても過言ではない。


 トランススライムに美女(裸)に変身してもらえればそれだけで……そう考えるだけで背中が溶ける痛みくらい簡単に我慢してみせるさ!!!

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